今こそ本当の「漢方」が知りたい
1、どんな症状に向いてるの?
漢方治療の効果を期待できる代表的なものとして、西洋医学では病気としてとらえにくい不定愁訴(はっきりしないつらさや痛み)や、虚弱体質の体質改善があります。冷え性、しびれ、腰痛、風邪をひきやすい、よく下痢をする......等々、当てはまる症状は非常に幅広いのです。また、更年期障害や生理不順といった女性特有の機能性障害や、今の時期ならウイルス性の風邪の治療や予防にも漢方は適しています。
とはいえ、漢方は当然ながら万能ではありません。相性もあります。自分も試してみたいと思ったり、詳しく知りたいことがあるなら、まずは漢方の専門医や漢方を通じた薬剤師に相談してみることをおすすめします。
2、漢方エキス製剤と煎じ薬、いったいどこが違う?
漢方エキス製剤は、処方ごとに調合された生薬を煎じて、その抽出液を乾燥させ、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などに仕立てたものです。お湯に溶かして飲めばいいので、手間がかかりません。
それに対して煎じ薬は、証にぴったり合った生薬を文字通りさじ加減で調合し、煎じて飲む"完全オーダーメイド"の薬です。
一般的には、煎じ薬の方が患者さん一人ひとりの証にぴったり合った調合ができることもあり、治療効果はやや高いと言われています。ただ、エキス製剤も決して薬効が不足しているわけではありませんし、常に品質が一定しているという良さもあります。
3、長く飲み続けないと効かないの?
いいえ、そんなことはありません。確かに、漢方薬全体としてマイルドに効く薬が多いという傾向はありますが、すべてがそうではなく、速効性があるものも多いのです。また、患者さんの思い込みで、漢方の速効性が「なかった」ことにされている場合も。例えば、のどに異物感があるという患者さんが麦門冬湯を処方され、翌日に症状が消えたものの、本人は「漢方薬はすぐ効かないから自然に良くなったはずだ」と思い込んでいた、なんていうケースもあったりします。
4、西洋薬と一緒に飲んでもいいの?
抗がん剤の副作用を軽くする十全大補湯などのように、西洋薬との併用が治療効果を高めるケースもあります。ですが、当然ながらその逆もあります。
漢方薬は多数の成分を含むので、一般薬との相互作用を予測することが難しい場合が多いのです。相互作用が問題となる生薬は麻黄、甘草、柴胡など一部に限られていますが、小柴胡湯とインターフェロン製剤(α、β)という禁忌(絶対やってはいけない組み合わせ)もあります。いずれにしても、今何の西洋薬と漢方薬を飲んでいるかという情報は、西洋医または漢方医にかかる際にすべて伝えた方がいいでしょう。
5、副作用はないの?
薬ですから、当然副作用はあります。漢方薬は長年にわたって使用され、安全性の高いものだけが残ってきたという歴史がありますが、患者さんの体質によっては、発疹やじんましん、胃腸障害の可能性があります。また、頻度は少ないものの、肝機能障害や間質性肺炎の可能性もあります。甘草を多く含む漢方薬では、高血圧・脱力・むくみなどがあらわれることがあり、注意が必要です。服用を始めてから何か強い異常を感じたら、ひとまず服用をやめて、主治医に相談しましょう。