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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

小児科の「現在」

5-2-1.JPG最近、小児科医が足りないという話が全国から聞こえてきます。
子は国の宝。本当なら由々しきことです。
本当に足りないのでしょうか。なぜ足りないのでしょうか。
そして、どうしたらよいのでしょうか。

監修/五十嵐隆 東京大学教授
    宮坂勝之 国立成育医療センター手術・集中治療部部長
    松下竹次 国立国際医療センター小児科医長

5-2.1.JPG まずは、上のグラフをご覧ください。この30年で医師の総数は倍に増え、内科医が1.5倍、外科医も1.3倍、皮膚科医も1.4倍、眼科医にいたっては倍増しているのにもかかわらず、小児科医はわずかに減っています。
 30年で少子化が進みましたので、全体に占める小児科医の割合が縮小するのは仕方ないことかもしれません。また、どういう状態なら「足りている」のか基準がハッキリしないところもあります。
 ただし現場に目を向けると、少なくとも現状のまま放置しない方が良さそうです。
 厚生労働省研究班の調査で、大学卒業後3~6年、30歳以下の若手小児科医を対象にアンケート調査したら、2人に1人が「小児科医を辞めたい」と思ったことがあり、3割が「後輩に小児科を勧めない」と答えたそうです。
 経験3年を超えた頃というのは、仕事にも慣れて面白くなり始めるのが普通ですから深刻です。
 何が不満なのでしょうか。医師たちの意見を総合すると、以下が理由のようです。・キツいのに・儲からない、です。説明します。
 キツい理由として真っ先に挙がるのが、夜間当直が過酷ということです。「何だかおかしいぞ」と自分で考えて対処できる大人と違って、子どもは本当に具合が悪くなるまで受診しません。必然的に夜に救急患者として来る患者さんが多くなります。
 現在の当直体制というのは、一日の勤務を終えてから次の日の勤務に入るまでの時間を、仮眠しながら過ごすという建前で、翌日の勤務がない夜勤とは違います。夜間ずっと患者さんが来たら、眠らずに連続30時間以上の勤務になってしまいます。
 しかも診療各科で持ち回りできる大人対象の夜間当直と違って、小児科当直は小児科の陣容だけで回すしかありません。一月に一度も休みがないという医師も珍しくありません。そんな状態で週に何度も当直があったら、体や心を壊すのが当たり前です。そうなれば小児科医を続けられませんので、ただでさえ少ないのがさらに減るわけです。
 次に「儲からない」ですが、手間や時間のかかる割に処置や検査、投薬の少ない小児科は、他の診療科に比べて儲かりません。現在の診療報酬体系は、「手間」「時間」にお金が払われず、「処置」「検査」にお金が払われる仕組みだからです。
 ただし「金の亡者たちめ」などと勘違いしてはいけないのは、病院勤務医の場合、「儲からない」のは病院であって、医師ではありません。儲からないから医師の給与を上げられないということもありますし、人手を増やせず1人あたりの仕事量が多くなる。こういう関係にもあります。夜の勤務が夜勤でなく当直になる原因も、元をたどれば、これに突き当たります。
 人気がない理由は、なんとなく理解していただけたでしょうか。とはいえ、社会的に必要とされない存在なら人数が減るのは仕方ないことです。次は、小児科医が必要なのかを考えていきましょう。

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