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過去の病ではない! HIV/AIDS
検査をしてみたら陽性だったという場合、大変な衝撃ですから、結果を受け止めきれずに独りで悶々としてしまうかもしれません。でも、まだエイズを発症していない段階で見つかったのは、不幸中の幸いです。病院へ行けば何とかなる可能性があることを思い出してください。エイズの診療拠点病院が必ず地域にあります。
病院へ行けば、適切な時期に治療を開始してもらえますし、何より、不安を自分独りで抱え込まなくて済みます。何も対処しないままでいるのは、あなたも周囲の人も誰も得をしません。
病院で行われる治療は、「HAART(ハート)」といって、いくつかの強い抗ウイルス薬を組み合わせて毎日飲むものです。飲み始めると2~3カ月後に、血液中からHIVが検出されなくなります。
ただし、HIVが完全に消えたわけではなく、薬を中断するとすぐ元の量に戻ります。
また薬を使う以上、当然副作用があります。薬疹や下痢の他、コレステロール値が上がってしまったり、肝臓が悪くなったり、手足がしびれたりと出てくる症状は様々ですが、健康な時とまったく同じというわけにはいきません。
ここに落とし穴があること、お気づきでしょうか。エイズを発症する前の場合、HIV感染による自覚症状はないのに、薬を飲むと副作用が出るわけです。毎日、絶対に飲み続けられると自信のある人はそうはいないはずです。
こう書くのは、毎日きちんと服薬を続けることが非常に大切になるからです。最近では、副作用が少なく1日1回飲めばよい薬が認可されて治療に用いられていますので、以前と比べれば服薬を続けやすくなっています。飲み忘れが続くと、体に残っているHIVが薬の効かないHIVに変化する危険があります(ウイルスが耐性を持つ、といいます)。
耐性ウイルスが増えると、自分はもちろん、そのウイルスに感染した人の治療法を狭めてしまいますので大変やっかいです。飲むからには、きちんと飲むことが大切です。
また見逃せないのが、HAARTに使われる薬は高価で、検査代も入れると月に20万円程度の医療費がかかるということです。もちろん健康保険が使えますし、HIV感染者は身体障害者の認定を受けることができるので、「更生医療」という制度を使って公費補助を受ければ、かなり負担は減ります。健康保険を使うと会社にバレる、と心配かもしれませんが、健康保険組合には罰則付きの守秘義務があります。
繰り返しになりますが、長期に服薬を続けると、副作用や耐性ウイルスの心配、経済的負担といったマイナス面があります。
このように様々なことを考慮して、最近の治療は、感染が分かっても即座にHAARTを始めるというのではなく、CD4の数がこれ以上減ったら危険水域というところまで待って投薬を始めるようになっています。その開始時期を見誤らないために、定期的に通院して血液検査を受けることになります。
いまや日本は性感染症大国です。 性感染症にかかると、粘膜のバリアが弱くなりますので、HIVの感染も起こりやすくなります。 日本で性感染症は57年に売春防止法が施行され、またよく効く薬も出たことにより長く患者が減る傾向にありました。しかし、90年代半ばから再び増加傾向に転じ、厚生労働省には年に約7万件の症例が報告されています。 この背景には、近年の性体験年齢低下があるものとみられ、厚労省では今年度から電話相談窓口の設置など、本格的な若年層向け対策を始めています。