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健康診断で健康になれるの?

法律で義務づける意味はいったい何?

 さて健診・検診を法律で義務づけるのはお節介でないか、本当に意味があるのか、という問題を考えてみましょう。
 現在の健診義務づけには、本人の健康維持以外に公的にも二つの意義があると考えられています。・労働力・生産力の維持・医療費の抑制、です。本当に実現されるなら、お節介とは言えませんね。
 多くの人を悩ませている高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病やあるいは、がん・脳卒中・心臓病などは、ある程度まで進んでしまうと完全に治るということは少なくて、病気と折り合いをつけながら治療を続ける必要があります。病状が進めば進むほど生活が制限されますし、加速度的に医療費もかさんでいきます。
 ですので、治療が必要になる前のリスク段階か、発症したとしても軽いうちに気づいて対応を始めることが、生産力維持と医療費抑制の両方に役立つことになります。
しかしながら現段階では、健診で狙ったとおりの素晴らしい成果が出ているとは、とても言えません。少なくとも課題が二つあります。
 まず、年齢・性別・環境・人生観など一人ひとり事情が異なるのに、健診項目と基準はほぼ一律なことです。しかも、その項目は、栄養不良と感染症が健康を損なう大きな原因だった時代からほとんど変化していません。実情にそぐわない点も多く、健診を受けない人が出る大きな原因となっていますし、そしてまた、その人たちに健診を受けさせる有効な策もありません。
 さらに加えるなら、個人の体質や体調による一度きりのわずかな変動まで時として大げさに扱われてしまうことも問題として挙げられます。正常値や基準値はあくまでも平均的なもので、病気でなくても基準値を超えてしまう人もいます。心配しなくて良い程度なのか、本当に病気なのかは、一人ひとり過去のデータと突き合わせて流れを見なければ判断できませんし、治療の必要があるかどうかも本人の環境や人生観に照らして判断されるべきものです。
 これらの課題を解決するには、健診項目や基準を実情に合わせることが大切で、そうした取り組みも始まっています。健診の意義を本人が理解すること、本人にとって意味のある異常値を見つけることが大切です。
 一人ひとりについて健康な頃からのデータが継続蓄積されていれば、健診実施機関ごとの差はあるにせよ、本当に異常が出たのか医師も本人も分かりやすくなるので大変役に立つはずです。
 しかし、現行の健診がいくつもの法律のツギハギで行われていること、健診結果の保存や受け渡し方法が施設ごとバラバラなこと、さらには最近の個人情報への急速な意識の高まりもあって、本人が保管していない限り、データがどこかの段階で失われてしまうのが一般的です。
 これらの解決策として出てきたのが、08年度から導入される「高齢者医療確保法」に基づく健診(コラム参照)であり、健診データの形式統一化案です。

08年度から、メタボに力点が置かれます。  医療費抑制の観点から、厚生労働省が目をつけたのがメタボリックシンドローム(06年12月号参照)です。 痛くもかゆくもありませんが、放っておくと動脈硬化をはじめ高血圧・高脂血症・糖尿病などすべての生活習慣病に至る一方で、生活習慣を改善すれば進行を防げます。 たとえば生活習慣病が悪化して人工透析になると1人年600万円かかります。国全体では既に1兆円です。こうした医療費が増えるのを抑制しようというのが高齢者医療確保法に基づく健診の発想です。

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