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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

安心と安全はあるか これがビジョンだ

こんな内容です。

 では、ビジョンの中にどんなことが書かれているのか、見てみましょう。詳しくは現物をご参照ください。大項目が3つあります。ただし、「国民も連携・協働することが重要」とか「『治す医療』から『治し支える医療』へ」といった、理念的なことにかなりの紙幅を割いており、また数値目標がほとんど出てこないので、読んでパっと具体像が浮かぶかは微妙なところです。
 最大のポイントは、医師不足・スタッフ不足への対応策として、医師養成数増、コメディカル(医師以外の医療従事者)雇用増をうたったこと。同様にフルタイムでは働けない有資格者でも働けるような勤務環境整備、さらに交代勤務制の導入促進も書き込まれました。実現すれば勤務医の労働環境が改善され、患者の安全性も向上しそうです。
 ほか患者に身近なものとしては、地域地域での救急医療と在宅医療の体制整備なども書き込まれています。

ビジョンの骨格

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医療従事者等の数と役割
(1)医師数の増加
・医師養成数の増加
閣議決定「医学部定員の削減に取り組む」を見直し、医師養成数を増加させる。
・コメディカル雇用数の増加
看護師をはじめとしたコメディカルの雇用数を増加させる。
・総合的な診療能力を持つ医師の養成
総合的に患者を診る能力を有する医師の養成を支援する。
・臨床研修制度の見直し
医師不足がより深刻な診療科や地域医療への貢献を行う臨床研修病院等を積極的に評価する。臨床研修病院等における、研修医受入数の適正化を図る。
・歯科医師の養成
適正な需給について検討し、文部科学省との連携を下に必要な対策を講じる。併せて、将来の歯科医師の活用策について検討する。

(2)医師の勤務環境の改善
・女性医師の離職防止・復職支援
「短時間正社員制度」を始めとした出産・育児等に配慮した勤務環境の導入・普及や、キャリア形成における出産・育児への配慮、院内保育所の整備や充実、復職研修の充実などを進める。
・医師の多様な勤務形態
交代勤務制の導入促進。医療リスクに対する支援体制の整備(産科医療補償制度の早期実現、医療事故における死亡の原因究明・再発防止を図る仕組みの構築など)。
公務員である医師を含め、例えば週のうち数日は地方の医療機関で勤務するなど非常勤医師の活用。

(3)診療科のバランスの改善等
医師の職業選択の自由に配慮しつつ、産科・小児科・救急科・外来等について現場・地域の意見を重視し、増員のための方策を自治体とともに検討する。
国が標榜資格を定め許可している「麻酔科」は、専門医制度の整備状況を踏まえ、規制緩和を行う。
必要医師数の算定方式の見直しを含め、医療法標準を見直す。

(4)職種間の協働・チーム医療の充実
・医師と看護職との役割分担と協働の充実
現場の看護師が専門看護師、認定看護師の取得を促進する施策を講じ、その普及・拡大に努める。看護基礎教育の内容及び就労後の研修を充実する。
院内助産所・助産師外来の普及等を図る。助産師業務に従事する助産師の数を増やすとともに、資質向上策の充実も図る。
・医師と歯科医師・薬剤師等との協働の充実
薬剤師の資質向上策の充実を図る。
・医師とコメディカルとの協働の充実
・医師・看護職と看護補助者・メディカルクラーク等との協働の充実
メディカルクラーク(医師事務作業補助者、医療秘書など)については、書類記載、オーダリングシステムへの入力などの役割分担を推進するとともに、資質向上の方策について検討する。
また、医師等と患者側のコミュニケーションの仲立ちをし、十分な話し合いの機会を確保するといった業務を担う人材の育成が必要である。

地域で支える医療の推進
(1)救急医療の改善策の推進
・救急医療の充実
地域全体でトリアージ(重症度、緊急性等による患者の区分)を行い、各医療機関へ効率的に振り分ける体制を整備する(管制塔機能を担う医療機関の整備・人材の育成)。
各医療機関においては、交代勤務制を整備する。
急性期を脱した患者を受け入れる病床を確保する。
夜間・休日等における開業医の外来診療の推進。
救急医療情報システムにおける情報更新の随時化、救急患者受け入れコーディネーターの配置。
・夜間救急利用の適正化
小児科における小児救急電話相談事業(#8000)を高齢者を含む成人へ広げるなど、救急電話相談事業の拡充。家庭への緊急時のマニュアル等の普及を図る。

(2)「地域完結型医療」の推進
行政は、地域住民のニーズを調査・把握し、各医療機関が地域のニーズに応じた役割を果たすことができるよう、医療機関に対する情報提供を行う。十分な情報開示を行うことによって、地域住民がネットワークを踏まえて行動するよう普及啓発を進める。

(3)在宅医療の推進
訪問看護ステーションの規模の拡大等を図る。
医薬品等の供給体制や、医薬品の安全かつ確実な使用を確保するための適切な服薬支援を行う体制の確保・充実に取り組む。
在宅歯科診療を推進していくための人材育成や体制整備を進める。

(4)地域医療の充実・遠隔医療の推進
医師等が地域医療に自ら進んで従事するための方策の検討を進めるとともに、へき地医療機関への支援等を一層充実する。
遠隔医療について、情報通信機器の整備等により今後一層の推進を図る。

医療従事者と患者・家族の協働の推進
(1)相互理解の必要性
医療機関は、患者・家族の不安等を傾聴し、課題に導いていくような相談機能を有するようにする。

(2)医療の公共性に関する認識
地域の医療機関等の協力や種々の市民活動を通じて受診行動等についての積極的な普及・啓発を行うとともに、特に産科においては、母子保健活動の充実等により、妊婦健診の適切な受診、分娩に伴うリスクに関する正しい認識、周産期母子医療センターと緊急時のアクセス方法等に関する普及を行う。

(3)患者や家族の医療に関する理解の支援
学校教育においても医療に関する教育を行い、幼少期からの、その年齢に応じた医療に関する理解を普及する。


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