息が苦しい「喫煙肺病」COPD
さて、いよいよ本題に入ります。COPDという耳慣れない言葉が出てきました。日本語では『慢性閉塞性肺疾患』となります。大ざっぱに言うと、気管支や肺胞に炎症が起きて、外呼吸の際の空気の通りが慢性的に悪くなった状態を指します。
言葉になじみがないので珍しい病気かと思ったかもしれませんが、そんなことはありません。日本にも500万人以上の患者さんがいると推定されています。一般的な疾患名を用いると、慢性気管支炎や肺気腫、あるいはそれらが混ざったものと表現することができます。
慢性気管支炎は、長時間にわたる気管支の炎症により気管支粘膜が分厚くなって、空気の通り道が狭くなった状態です。また過剰に分泌された痰で気管支がつまってしまうこともあります。
肺気腫は、長年の喫煙などにより、肺胞が壊れ、数が減るとともに壊れた肺胞が大きく膨らんで弾力性や収縮性を失うために、息をはく時に肺胞の出口の気管支がつぶれてしまう状態です。
さて、前項の呼吸の仕組みを思い出してください。呼吸筋のほとんどは息を吸う時に働き、吐く時は肺そのものが膨らんだ風船のしぼむように縮んで空気を押し出します。しかしCOPDの人の肺は、ふにゃふにゃの風船のように押し出す力が弱く、さらに空気の出口もへしゃげて狭くなっています。このため空気の通りが悪くなり、うまく息を吐けずに苦しいという現象が起きます。肺活量が少なくなって息苦しくなるのではありません。
息をきちんと吐けなければ、新鮮な空気が十分に入ってこないということは想像がつくと思います。
実際の日常生活では、階段や坂道の上り下りなど体を動かした時、酸素を多めに必要とするのに酸素が足りなくなり、まずは息切れとして自覚されます。酸素不足だと筋肉も十分に力を発揮できませんので、同年代の人と一緒に歩いていて、歩くペースが遅れてしまう、といったことも見られます。
しつこく続く慢性の咳と痰、あるいは風邪をひいたり運動したりすると呼吸の度にゼーゼー・ヒューヒューと音がする(喘鳴と言います)のも、よく見られる症状です。
さらに進行してくると、狭くなった気道に無理やり空気を通すことから、外呼吸に大きな力を必要とするようになり、胸に不快感を覚えたり、疲れやすさを覚えたりします。また呼吸困難に対する心理的不安もあります。
長い時間かけて少しずつ進行することから、加齢によって衰えたと勘違いすることも多いのですが、自然な衰えとは明確に異なります。もしCOPDであればすぐ治療を開始することが大切です。