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指定病院そして補助金
補助ないと潰れる病院残酷物語
災害など、いつどのように患者が発生するか分からない分野に政策的要請として備えてほしいような時、医療機関の日々の診療収入からお金を割きなさいと求めるのは酷です。だから、指定と援助の関係に一定の理があります。
しかし、がんなど日常的に患者が発生していて、ある程度需要も読めるという分野にも、指定が数多く存在します。医療機関の日常最大の収入源である診療報酬に、補助が上乗せされていることになります。診療報酬は実際に仕事をして地域に貢献した対価として発生するものですが、補助の場合は対象が「看板」です。上乗せを診療報酬の加算一本にした方がシンプルです。
この方法を採らない厚生労働省の理屈としては、診療報酬には厳しい枠が決まっていて簡単に増やせないということと、診療報酬だけで調整しようとすると患者の自己負担も上がってしまうということがあります。しかし、医療機関側でそれを額面通りに受け取る人はいません。次項で再度考えます。
さて、指定医療機関を設定することが必要な分野かどうか、そして医療機関がその役割を果たすのに必要な要件は何か、補助をいくら出すかといったことが何を基準に決まっているかご存じですか。
法律? そうですね。法律なら、国民の代表である国会議員が審議して決めたことですから、公費支出があるのも当然です。でも必ずしもそれだけと限りません。厚労省(旧厚生省も含む)からの通知だけで設定されているものも数多くあるのです。
厚労省の官僚が「この分野は需要があるけど、成り行きに任せていると担い手の質と量が担保されないかもしれない」との理屈のもとに、「なんとか拠点病院」などと銘打って、指定医療機関の種類をどんどん増やしているわけです。メディアも多くの場合は好意的に報じます。
しかし、よく考えてみると、需要はあるのに援助しなければ担い手が足りなくなるというのは不自然な話です。
たしかに分野ごと、負う責務(責任や労働量)に対する報酬の割合で大きい小さいがあります。そして、相対的に報酬の大きい方へ人も施設も流れて行くために、報酬の小さい分野の担い手は徐々に減っていきます。
市場メカニズムが働けば、担い手の数と報酬の額とはそれぞれ上下して、どこかで釣り合いが取れるはずです。しかし診療報酬は公定価格なので、需給に応じて上下したりしません。人為的にバランスを取る仕組みとして補助金が使われています。
冒頭に書いたように、ある程度の規模の病院なら、必ずと言っていいほどいくつもの指定を受けています。表向きは地域への貢献を考えてと説明するでしょうが、本音として背に腹の変えられない事情があります。指定の見返りの補助金をもらわず診療報酬だけで一般病院を維持しようとすると、必ず赤字になって潰れてしまうのです。潰れたくなければ、指定要件を満たして補助をもらうしかありません。それも、いくつもいくつも、です。
この構造が、どんどん医療体制をおかしくしています。