「何百万円で動く私でない」 土屋がんセンター院長、自ら退く
国立がんセンター中央病院の土屋了介院長が24日、自ら主催した勉強会の席で、定年まで1年を残して4月1日付で辞職し、癌研究会顧問になることを明らかにした。厚生労働省の役人から辞めさせられる(勧奨退職)のではなく、自ら退く(依願退職)という形にしたために、退職金を数百万円失うという。勉強会には、やはり15日に官職を辞したばかりの村重直子氏とスマイリーの片木美穂代表も登壇。会場も交えて熱い討論を繰り広げた。(川口恭)
なお、以下は前の記事と一言一句同じなので、あらかじめご承知おきいただきたい。
冒頭の講演部分では、片木氏が卵巣がんのドラッグ・ラグについて、経過(昨年8月の勉強会と重なる部分多し)と現状(ジェムザールに関して適応外処方されていることも多いのに、公知申請による承認ではなく治験を経ての承認を迫られているらしく、そうなれば今使えている患者が使えなくなる恐れが発生している。厚労省政務三役もそれを追認)を解説。続いて村重氏が、ドラッグ・ラグ、ワクチン・ラグ、デバイス・ラグ、薬害は全て同じ原因(1、データベースが公開されていない。2、無過失補償・免責がない)に起因することを説明した。
では、土屋院長も登壇し、白熱した会場との質疑応答から簡単に再現する(2度目からは敬称など略)。
片木
「薬害肝炎の検討会委員をされている坂田さんもお越しだ。昨年11月に私も検討会のヒアリングに呼ばれて行ったが、ちょうど活動していた時期が薬害肝炎の被害者の皆さんと同じで、多くの人から『薬をほしいと言うけど、あの被害者を見て、どう思うんだ』と言われて、薬がほしいと言うのが悪者扱いされ続けたというのが最初の頃にあった。被害者がかわいそうだという言われ方でつらい思いをした。ヒアリングの際にも、サリドマイドの被害者の方やHIVの被害者の方から、『私たちは敵対してない』と言っていただいたけれど、ここで坂田さんのご意見も聴けたらうれしい」
坂田和江氏(薬害肝炎原告団)
「誰が敵とか味方とか、そういう話じゃないと思う。検証委員会を1年やらせてもらって、みんなで手を取り合って考えて行くというのが一番大切じゃないか、と思った」
鈴木氏(メディカルインサイト)
「薬害とドラッグ・ラグの根っこが同じだというのは、私もその通りだと思う。事前に厳しくするというよりも、事後のモニタリングをきちんとどうやるのかというように発想転換をすることが大切だと思う。薬害は結局、事後のモニタリングができてないから広がってしまったまま放置されるということ。こういう発想転換していくことが、厚生労働省には可能なのか」
村重
「役人の立場は、役所の無謬性を守ることが最優先課題。役人も人間なので、家族を抱えて終身雇用で人事権を握られてという立場にあれば、組織のため無謬性を守るということになる。役人の方から変化することを求める期待するのはかなり難しいので、そこは是非今日お集まりの方々のように理解している人たちが手を取り合って声を上げていただきたい」
片木
「ジェムザールも、今は適応外処方できているからいいじゃないかと言うお医者さんもたくさんいて、でもそれが本当にいいのかなと言うと、抗がん剤の治験は多くても100人いってないんじゃないかと思う。それが承認されると何千人という患者さんに使われる。そこで治験では発見できなかった何千分の1というような確率の重篤な副作用が絶対に出てくると思う。そういったものこそ、きっちりとPMDAが管理して、予期せぬ副作用が起きた時に一斉に通知を流すべきなんじゃないかと思う。これまでの活動で薬害被害者の方のことも考えたし、自分としても認めてほしいと言った薬が薬害を起こしたらどうしようという恐怖はあった。だからフィブリノゲンを投与した産婦人科のお医者さんにも直接会って話をさせてもらった。先生が言ったのは、その時にフィブリノゲンが危ないという通知が出ていたら絶対に使わなかった、僕は危ないのは知らなかったと。だから、何かあった時にバーっと通知する仕組みがあることの方が、私は大事だと思う」