誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

気づかぬ間にしのびよる肝硬変(脂肪肝経由)


問題は、脂肪肝の行き着くところ。

 肝臓障害の中で、現代の日本人にとって油断ならないのが、脂肪肝です。日本人はもともと体質的に皮下脂肪よりも内臓脂肪をためやすいともいわれ、食生活の欧米化もあいまって、患者は年々増加中。いまや3人に1人が潜在的に抱えているという話もあります。
 この脂肪肝、読んで字のごとく、肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった「肝臓の肥満症」とも言えるもの。要は、フォアグラと同じ状態です。肝臓は吸収された栄養分などから中性脂肪を作り、その一部を細胞内に蓄えているわけですが、それが様々な原因から利用・処理しきれずどんどん蓄積されると、結果、脂肪肝になってしまうのです。
 原因のトップは、なんといっても中性脂肪の原料となる脂肪や糖分・アルコールなどの摂りすぎ。実際、肥満とアルコールによるものが全体の7割を占めます。お酒の飲み過ぎは摂取カロリーの増加だけでなく、アルコール自体が脂肪酸となって肝臓にたまり中性脂肪に変化するのです。その他、糖尿病や内分泌異常といった疾患、ステロイド剤やある種の抗生物質の長期服用によっても発症することがあります。
 年齢でいうと30~70歳代に多く、男性では40歳前後、女性では40代以降の中高年に多発しています。ただ、若い人や一見痩せているように見える人も、「隠れ脂肪肝」が増えているので注意が必要です。

知らないうちに肝硬変へ...

 脂肪肝そのものは一般に無症状で、黄疸、吐き気や嘔吐、お腹を押すと鈍い痛みを伴うこともありますが、かなりまれです。そのため見逃されていることが多いのですが、放っておくと動脈硬化を始めとするさまざまな生活習慣病につながる恐れがあります。
 そしてゆくゆくは、肝硬変(次頁で解説します)、そこから肝臓がんへ、と、取り返しのつかない状態へ発展していく可能性もあるのです。
 とくにアルコールが原因の脂肪肝は、それによって肝臓が繰り返し損傷を受け続けるならば、肝硬変に至ることも時間の問題です。
 のみならず肥満や糖尿病等、アルコールとは無関係に起こる脂肪肝でも、過食などが原因で肝細胞内に過剰な脂肪が蓄積し、そこから炎症を伴う「非アルコール性脂肪肝炎(ナッシュ)」を発症している場合は深刻。通常の脂肪肝は1%しか肝硬変にならないのですが、ナッシュはその10倍の確率で肝硬変に移行するといわれているのです。以前は原因不明とされた肝臓がんが実はナッシュ由来だった、という報告も増えています。
 脂肪肝は特徴的な症状がないため、ほとんどが健康診断の際の血液検査や超音波検査で偶然に発見されます。さらにナッシュの場合、通常の血液検査では見つかりにくく、確定診断には組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査(肝生検)が必要。脂肪肝かつ肝臓の繊維化や炎症が見られた場合にそう診断されます。CPRなど特別な血液検査を参考にすることもあります。
 いずれも治療の基本は、適切な食事と運動です。バランスのよい低カロリーの食事と、アルコールの節制(「休肝日」をつくりましょう!)、さらに体脂肪を燃焼するよう時間をかけた運動を、医師の指導のもとに行います。ナッシュでは薬物療法も並行します。
 というわけで、肥満は見た目だけの問題ではない、生活習慣の乱れはひそかに肝臓を蝕んでいくんだ、ということは心に留めていただければと思います。とくに脂肪肝というのは、「まだ何とかなる」段階。そこで手を打って踏みとどまれば、その後の人生まで変わってくるのです。

 1  |  2  | 3 |  4 
  • 協和発酵キリン
  • 有機野菜の宅配ならナチュラルファーム
  • ヒメナオンラインショッピング「アルコール感受性遺伝子検査キット」
  • 国内航空券JDA
  • これまでの「ロハス・メディカル」の特集すべて読めます! 誌面アーカイブ
  • 「行列のできる審議会」10月20日発売 関連書籍のご案内
  • ロハス・メディカルはこちらでお手に取れます 配置病院のご案内
サイト内検索
掲載号別アーカイブ