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ゲノムって何者?

 新たな薬を産みだすのにも、安い薬を上手に使うのにも、鍵になるというゲノム。先日も「日本人の全ゲノム配列を解読した」と大きく報道されたように、転換期を迎えている医療の次なる救世主と注目を集めています。いったい何者なのでしょう。
 ゲノムとは、「個々の生物が持っている遺伝情報の総体」を言います。ヒトであれば一人何十兆個ともいわれる細胞それぞれの形や役割を設計したり複製したりするための情報です。
 と、こんな風に聞かされてもイマイチぴんと来ないですよね。遺伝といえば、ゲノムより「染色体」「遺伝子」「DNA」といった言葉の方が、馴染みがあるのではないでしょうか。染色体は、中学の時に生物で習いましたよね。細胞分裂の際に細胞核の中に現れるX型の紐のようなあれです。そして、その物質名がDNA。
 この染色体の上に遺伝情報が乗っています。
 若干乱暴ながら、染色体をカセットテープにたとえると、磁気テープにたとえられるものがDNAです。遺伝子は、テープに収められた歌1曲ずつ(ちなみに歌と歌の間には雑音も入っています)。私たちヒトの場合、全23巻の歌謡全集のようなもので、23巻揃って初めてヒト1人分の遺伝情報がカバーされます。その全情報こそがゲノムです。
 体のあらゆる細胞は、それぞれにこの23巻をが持ち合わせていますが、どの歌を再生しているかは細胞ごとに異なります。
 つまり各細胞が、ゲノムの情報に従って様々なたんぱく質を合成し、ゲノムの情報を維持しながら増殖を繰り返しているのです。
 また、長い間にはゲノムに変化が生じて、生物としての進化も成し遂げました。生きるためのあらゆる活動の原点、かつ生き残るための変化の原点が、ゲノムというわけです。
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遺伝子とは

 私たちの体は、たんぱく質からできており、また生命維持に必要な酵素もたんぱく質です。どんなたんぱく質を作るか、そのそのためのレシピが暗号化されて入っている所が、DNA上の遺伝子領域というわけです。
 なお、ヒトのゲノムの全配列を解析する作業は2003年に完了しました。ただ、一つの染色体を形づくるDNAは非常に長いのですが、そのうち遺伝子領域はほんのちょっと。「雑音」が多く、しかしその雑音の中に別の暗号が隠れている可能性もあります。しかも、解明された全配列のうち、ちょっとしかない遺伝子のそれぞれの部位と意味の特定は、まだまだこれからの課題なのです。

DNA鑑定の信憑性と双子  DNA上には繰り返し現れる配列があり、それが家族ごとに特徴のある型を示すことがわかっています。それを家族関係の同定や、犯罪者の特定などに応用したのが「DNA鑑定」です。ただし、「鑑定の結果DNAが一致した」といっても、実際にはDNAのごく一部のパターンの一致・不一致を判定し、確率の話として推定したもの。同じDNAの型の人が出現する可能性はゼロではないのです。  ちなみに一卵性双生児はDNAが全く一緒なので、DNA鑑定では識別できません。性別や血液型も基本的に一致します。一方、顔形や指紋も似てはいますが、完全に一緒にはならないもの。これは、DNAが一緒でも遺伝子の現れ方に違いがあるためと説明されています。

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