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認知症を知る2 アルツハイマー型

神経細胞が減少 大元の原因は?

 アルツハイマー型認知症の患者の脳では、神経細胞が減っている一方、特徴的な2種類の病変が見られます。一つが大量の老人斑、もう一つが神経細胞中の糸くずのような神経原線維変化です。これらは、認知症初期には記憶に関連する海馬を含む側頭葉内側に目立ちますが、次第に脳全体に広がっていきます。
 神経細胞が死滅して減るために、認知機能も失われて行くと見られています。老人斑の主成分は、βアミロイドと呼ばれるアミノ酸40個余りからなるタンパク質です。また神経原線維変化はタウタンパクというものが変化したものです。
 どうして脳神経細胞が減っていくのか、原因はまだ分かっていませんが、現在最も有力視されているのが、このβアミロイドに着目した「アミロイドカスケード仮説」というものです。
 誰の脳でも、日常的にβアミロイドは作り出されています。しかし正常であれば、酵素で分解され脳内に溜まることはありません。しかし、脳内に病変があったり、活性酸素が過剰に存在したり、アポE4というタンパクがあると、βアミロイドが凝集してしまい、外から分解できなくなります。アルミニウムが脳内にあるとβアミロイドを引き付けてしまうとも言われています。溜まったβアミロイドは、神経組織に異常な変化を起こしたり、活性酸素を過剰に作ったりして、神経細胞を死滅・脱落させます。その流れは、さらにまたβアミロイドを蓄積させます。このような悪循環が起きるというのが、アミロイドカスケード仮説です。
 タウタンパクの異常な変化が、これらの流れの発端だという「タウ仮説」もあります。下流で起きることについてはほぼ同じ考え方です。
 過去には、アセチルコリンという神経伝達物質の産生不全が原因という「コリン仮説」が唱えられたこともあり、その仮説に基づいてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(アセチルコリンを分解する酵素の働きを妨害する薬)が開発され治療に用いられてきました。しかし、対症療法としては有効だった一方、疾患自体を改善することはできなかったため、アセチルコリンの減少は、脳細胞死の原因ではなく結果であるとの考え方が現在では一般的になっています。

生活で気をつけること 82-1.2.JPG  以下の生活習慣を心がけることで、発症リスクを下げられると考えられています。 ・運動 普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している人は、全く運動しない人と比べ、発症の危険が半分という研究があります。 ・充分な睡眠 マウスを使った実験で、βアミロイドは起床中に蓄積され、睡眠中に減るという結果が出ています。睡眠時間が短くβアミロイドが蓄積されがちなマウスに睡眠改善薬を服用させたところ、βアミロイドは減りました。 ・バランスよい食生活 魚、野菜・果物の摂取は発症リスクを下げることが分かっています。動物実験では、高脂肪食を与えたグループに脳内のβアミロイド蓄積の多い傾向が見られました。 ・知的好奇心を保つ ・禁煙
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