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睡眠のリテラシー26

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 すっきりと目覚めた朝は実に爽快です。「今日も一日頑張ろう」と思えるようになります。寝つきが良くて、深く眠れることも大事ですが、心地良く目覚めることも、私たちの望む睡眠の条件と言えます。

 起きている状態から眠りに入る時と同じように、眠っている状態からしっかりと目が覚めるまでには、一定の時間がかかります。電気のスイッチのように、オンとオフとを一瞬で切り替えられると都合が良いのですが、そういうわけにはいきません。

 前回お伝えしたように、自己暗示による方法、つまり「翌朝は○時に起きる」という寝る前の言い聞かせは、希望する時刻に実際に起床することだけでなく、寝覚めを良くすることにも役立つと言われています。とはいえ、これだけでは心もとないという場合もあるでしょう。

 別な方法として、光を使うことが考えられています。目覚めを良くするためには、朝起きたら、日光に当たりましょうというアドバイスをご存じの方がおられると思います。この方法はもちろん効果的ではありますが、そもそも目覚めるのに苦労する方にとっては、すぐには活用できないかもしれません。

 そこで、朝の太陽光が自然に入るように、カーテンを開けたまま寝るという方法も採られています。ですが、寝つきの妨げや間取りによる採光の問題などから、この工夫も必ずしもうまくいかないように思われます。

 より確かな方法として注目されているのが、照明装置を使って、起きる少し前から光に当たることです。いわば、人工的な夜明けを寝室に作るというわけです。夜明けですので、急に明るくせず、30分間くらいかけて、ゆっくりと明るくなるよう、照明装置を設定します。そして、最後には目覚まし時計のように、アラームが鳴ります。

 目覚まし時計ならぬ「目覚まし光」はいくつかの種類がすでに販売されています。この目覚まし光を利用して起きた実験では、普通の目覚まし時計で起きた時より、寝覚めの良くなることが確かめられています。起床直後の気分を尋ねると、目覚めやすい、起床時の気分が良い、活気に満ちているなど高評価になりました。起きた後のボーッとする感じも早く消えました。

 起きる前30分間の睡眠の状態を脳波などから調べたところ、徐々に明るくなる光に当たることで、目が覚めていると判定される時間のやや多いことがわかりました。わずかな光であっても、瞼を通して身体に受け取られます。もしちょっとでも目を開けたら、光はもっと入るでしょう。このようにして、本当に起きる前から少しずつ目覚めることが、どうやら起床の良い準備になるようです。その結果、突然に起こされるのに比べて、睡眠から覚醒へと滑らかに移れるようになります。

 人工的な夜明けに伴う"自然な"目覚めには、体内時計や体温の微妙な変化が関わっているとみられています。

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