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あなたの悩みにお答えします⑪

病気になってから、恋愛に対して後ろ向きになり、なかなか一歩が踏み出せません。どうしたら良いでしょうか?
答える人 宿野部武志さん 40代男性 慢性腎不全による人工透析中
聞き書き 武田飛呂城・NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会事務局長
 恋愛のことは悩みますね。でも、私は、あきらめずに自分を磨くことで、いつか良い出会いに結び付くと信じています。

 私は3歳の時に慢性腎炎と診断されました。医師からは、良くなることはなく、いつか人工透析になると言われました。実際、高校卒業を間近に控えた1987年の2月に透析導入となり、週に3回の人工透析を現在まで続けています。

 透析を始めた時は大学入試の真っただ中。体調も良くなかったため、入試に失敗し、浪人することになりました。それでも、1年間の浪人を経て、なんとか大学に入学すると、クラスの仲間と遊んだり、自分でサークルを立ち上げたり、大学生活を満喫しました。もちろん、透析をしながらですので、時間的・体力的な制約はありましたが、友だちにも透析を受けていることは伝えて、合コンや飲み会にも積極的に参加しました。友だちも、透析と聞くとびっくりしたかもしれませんが、目の前に見える私は元気そうでしたし、何となく受け入れてくれたようです。

 就職は、大学の就職課で障害者の採用を探すことから始め誰よりも遅くなりましたが、無事に決めることができました。ただ、実際に入社してみると、透析と仕事の両立は思ったよりも大変でした。透析の日は、18時までに病院に入れるよう、17時には会社を出なくてはいけません。自分が困った時に助けてもらう分、普段からコミュニケーションをしっかりとり、自分ができることは最大限やろうと努力しました。常に思っていたのは「無理せず、甘えず」ということです。なかなか完璧にはできませんし、仕事が楽しかったため、時に無理をし過ぎてしまうこともありましたが、折り合いをつけながらやっていました。

 その後、30代後半で仕事を辞め、社会福祉士の資格を取りました。

 福祉の現場で相談職についた後、腎臓病の人や透析を受けている人、その医療に関わる人たちの役に立つことがしたいと思い、現在は独立開業して頑張っています。そんな中、一緒に社会福祉士養成の専門学校に通っていた友人から紹介された女性とお付き合いすることになり、2009年に結婚しました。

 私は、小さい頃から「病気だから○○できない」と思うことが嫌でした。負けず嫌いな性格だったこともあって、大学も、就職も、恋愛も、結婚もあきらめたことはありません。もちろん、道のりは厳しかったです。結婚については、一度、結婚相談所に行ったこともあります。しかし、透析をしていると登録できないと言われ、落ち込んだこともありました。ただ、自分としては病気や透析が特別なことという意識はなかったですし、仮にそれがハンディになったとしても、その他に魅力や特技を持つことができれば、絶対にうまくいくと信じてやってきました。

 恋愛・結婚について、どうしたら自分が好きになってもらえるかと考えた時、輝いている人でありたいと思いました。仕事でも、趣味でも、何でも良いので、なにか真摯に取り組めることを持てたら良いと思います。また、必要以上に背伸びをする必要はありませんが、清潔感のある格好をするなど、見た目にも気を遣っていくことが必要です。

 妻からは「透析患者のあなたを好きになったわけじゃない。好きになった人が、たまたま透析をしていただけ」と言われました。私が仕事に取り組む姿を見て、そう思ってくれたようです。何事にも、あきらめずに頑張ってきて良かったと思っています。

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