あなたの悩みにお答えします①
病気になってから、不安やイライラで気持ちが落ち着きません。どうしたらよいでしょうか?
答える人 池田愛さん(40代女性、潰瘍性大腸炎)聞き書き 武田飛呂城・NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会事務局長
私も病気になってから、感情の波に苦労してきました。
私は24歳の時、下血が続き、潰瘍性大腸炎と診断されました。医師からは「潰瘍性大腸炎は難病の一つで、治すのは難しい」と言われましたが、あまりピンとこなくて、まあ何とかなるだろうと思っていました。当時は大学を卒業して2年目、システムエンジニアとしてバリバリ仕事をしていたので、落ち着いたらまた頑張ろうと思っていました。
しかし、最初に使った治療薬が合わず、薬剤性の肺炎になって入院。3週間ほどで退院できましたが、その後、潰瘍性大腸炎も良くなったり悪くなったりで入退院を繰り返し、薬の副作用でうつ傾向も出てしまいました。
この間、仕事も何とか続けていましたが、29歳の時、結婚を機に退職しました。子どもが欲しかったので、仕事を辞めて体調を整えようと決めました。しかし、それでも体調は良くなりませんでした。しかも、一日中家にいて、トイレに行って、テレビを見て、寝てと繰り返すだけの毎日に、自分は何のために生きているんだろうと、毎日とてもつらく感じていました。
そんな時、病院で慢性疾患セルフマネジメントプログラムのポスターを見ました。ポスターには「このプログラムは、病気があっても自分らしく日々を快適に過ごすためのプログラムです」とあって、これこそ自分が求めているものだと感じました。病気で困っている人なら病名を問わずに参加できるとあったので、私もこのプログラムのワークショップに参加してみました。
ワークショップでは、まず、来週までの1週間で、やりたいことをやってみましょうと言われました。その頃は、体調が悪過ぎて、自分が何をしたいかも分かりませんでした。でも、今の状況でできる、やりたいことを考えて、パンを焼くとか、花を買って水をやるとか、本当に些細なことを、一つひとつやってみました。やりたいことを考えるなんて、ずいぶん久しぶりだなと思いました。そして、やってみると、まだ自分にもできることがあると分かって、少し嬉しくなりました。「病気が治ったらやってみたいこと」ではなく「今の私がやりたいこと」を考えるのが良かったのだと思います。
また、ワークショップには、私以外にも色々な病気の人が参加していました。心臓の病気や、がん、膠原病の人などがいて、日常で困っていることも様々でした。
ある時、ある人が困っていることに、私が「こんな風にしたら良いんじゃない?」とアドバイスしたら、その人が「あ、それは良いかも! ちょっとやってみる」と言ってくれました。その時、自分がまだ誰かの役に立てるということに気づき、とても嬉しかったです。毎日、家に閉じこもっていた私でも、病気の経験から人にアドバイスできることがあって、しかもそれが喜ばれるなんて、想像もしていませんでした。こう考えると、病気のつらさも悪いことばかりではなかったなと思います。
ワークショップで出会ったメンバーとは、その後も交流を続けています。思えば、私の一番のつらさは、孤独だったことかもしれません。元気な人には病気のことを分かってもらえないし、何もできない自分を突き付けられて惨めになると思って、人に心を閉ざしていたような気がします。でも、色々な病気の人と出会えて、人それぞれ、悩みを抱えていると分かってからは、大変なのは自分だけではないと思えるようになりました。