ありがたや病児保育 でも、なかなか使えない ~記者が当事者になって気づいたこと④
共働きの我が家にとって、病児保育は大変ありがたい命綱です。でも、施設があるからと言って、みんなが自由に使えているわけではないということ、知ってください。
論説委員 熊田梨恵(社会福祉士)
今年2月。保育園に通う1歳半の息子の鼻水がひどくなり、熱もあるようです。翌日に夫婦とも仕事をしたかった私たちは、いよいよ病児保育を使ってみようと動きました。当時、私たちが住んでいたのは兵庫県豊岡市にある私の実家。病児保育を利用する流れは以下のようになっていました。
●事前登録済みの病児保育施設に電話して、受け入れの空きがあるか確認する
●受け入れてもらえそうなら、医療機関を受診して「医師連絡票」を書いてもらう
●連絡票を持って、施設へ行き、子どもを預ける
つまり、登録済みの施設に定員の空きがあり、なおかつ医療機関を受診した後でしか預けられないということです。地域によっては、医療機関に病児保育施設が併設されていて、医療機関に連れて行くだけで済むこともあるようですが、ほとんどは豊岡市同様の運用だと思います。
「隔離」で入れず
夕刻、病児保育施設の空きを確認、そのままかかりつけの耳鼻咽喉科の翌朝一番の診察をネット予約したところまでは順調でした。
夜、息子の熱がどんどん上がり38度8分にまでなりました。ほとんど眠らず看病して受診、インフルエンザA型の簡易検査では陰性でした。ただし、熱が出て間もないので確定ではないと説明されました。そうして医師連絡票(1000円でした)を書いてもらい、薬局で薬を待っている時、問題に気づきました。
連絡票をよく見ると、「安静度」の欄の①隔離室で隔離 ②室内安静 ③室内保育 の3択のうち①に○がついていたのです。備考欄には「インフルエンザ検査をしたが、まだ反応が出ていない可能性もあるため、念のため隔離室で見てほしい」というようなことが。
ちょっと待てよ。確か病児保育は2部屋で定員4人だったはず。隔離室だとすると、1人で1部屋ということになって、入れないんじゃ!?
慌てて病児保育施設に電話をしました。
相談して折り返すので待ってほしいと言われ、しばらくしてかかってきた電話の内容は、こうでした。
現在利用中のお子さんが2人いて、1人はインフルエンザA型、もう1人は一般的な風邪で別々の部屋に入っている。息子がインフルエンザA型か否か分かっていれば、どちらかの部屋に入れたのだが、今回の検査結果では、どちらにも入れることができない。
なんだよ、それ~(涙)。「病児保育は当日の定員がいっぱいで入れない」という話は、よく聞いていました。しかし、空きはあるのに入れないなどということがあるとは......。
受診を断られる
3日間家で看病を続けましたが、息子は、夜中によく咳をするようになり、下痢も出てきていました。お陰で私は毎晩2、3時間しか眠れず疲労がたまっていました。
医師からは「症状がひどくなるようならまた来てください」と言われていましたし、仕事もあったので、改めて病児保育を使おうとしました。
病児保育の空きを確認し、診察の予約をし、おむつや着替えなどの持ち物もきっちり用意しました。そしてクリニックの受付に診察券を出した、そこまでは万全でした。
ところが、受付の看護師に症状を尋ねられて「前回の鼻水と熱が続いていて、夜中の咳がひどくなり、下痢が出てきました」と伝えた辺りから雲行きが怪しくなってきました。看護師たちが中で何やら話し合っています。そして、しばらくして「申し訳ないのですが、下痢などの内科的な症状が出ているので、小児科へ行ってもらえませんか」。
えっ。
かかりつけの小児科は、その耳鼻科から車で30分かかる場所にある上に、いつも混んでいるのです。診察してもらえるのは11時過ぎぐらいになるでしょうから、薬局などに行っていたら、預けられるのは午後になってしまいます。
嫌な予感通り、小児科の診察室に入ったのは11時半頃になっていました。検査の結果は、RSウイルスによる喘息性気管支炎と胃腸炎でした。
点滴を受けて(息子が不安がるので1時間以上抱っこしての点滴になりました)、薬をもらって薬局を出たら、もう1時を過ぎていました。
私は連日の看病による疲労と睡眠不足、この日の朝からの移動や診察、抱っこしての点滴などで疲労困憊。もう病児保育も何もどうでもよくなっていました。予定していたことはもうできませんし、預けたとしても、すぐ迎えの時間です。しかし夫は「母ちゃん(私のこと)が休むために半日でもいいから使おう」と言ってくれました。
実際、そこで自由になった4時間は、宝物のような4時間になりました。
まず看病で余裕がなく4日間風呂に入っていなかったので、風呂に浸かりました。急いでやらないといけないこと、重要なことなど、頭の中を整理しました。頭が整理されたら気持ちもすごく楽になりました。そして、少しだけ眠りました。
たった、これだけで、生まれ変わったようにリフレッシュしたのです。その晩は、いつもより優しく息子に接することができたし、看病もよくできました。
病児保育は、働く親にとって、本当にありがたい存在です。でも、思った通りに使えるわけではないということ、当事者になるまでは知らなかったなあ、と思います。