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検査の現場から5

脳の働きはこうやって調べます

東京大学病院検査部
湯本 真人

 現在、脳を調べる様々な医療機器が開発されています。

 X線CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)検査で脳の構造が調べられることはよく知られている通りです。一方、脳の働きや機能を調べる方法には、ここ数年で実用化された新しい手法を含め様々な検査法があります。ここでは最近登場した3種類の新しい脳機能検査法について、簡単にご紹介したいと思います。

 トップバッターはfMRI(機能的磁気共鳴画像)です。前述のMRIと同じ装置を用いますが、撮影の仕方を工夫することで脳の構造だけでなく機能も画像化することが可能になりました。赤血球の色素(ヘモグロビン)は我々の身体の隅々まで酸素を運ぶ働きを担っていますが、酸素を運んでいるときと酸素を放出した後では磁気的な性質が異なるために、脳の中で酸素を沢山消費している部分とあまり消費しない部分とを区別して画像化することができます。

 これと似た原理でごく最近実用化された検査法に、光トポグラフィ検査があります。近赤外線の光を頭の外から中に向けて照射すると、光は頭蓋骨を透過して脳組織で散乱され、反射光が頭蓋骨を再び透過し頭の外に出てきます。この光の量は、先程fMRIの原理にも出てきた血色素の酸素飽和度により変化するため、血流の変化の様子から大まかに脳機能を調べることができます。

 最後にMEG(神経磁気診断)です。脳の活動は電流を発生させますが、電流が生じるとその周囲に磁気が生じます。脳の活動によって生じる磁気は地球の磁気(地磁気)の1億分の1と極めて微弱ですが、高感度の磁気センサーを用いて脳の電気的活動そのものをみるのがこのMEGです。古くからある脳波検査の親戚ですが、脳波よりも正確に脳活動の場所が特定できます。

 脳は未解明な部分を多く含む大変複雑な臓器です。現在、脳の病気や機能の解明に向け、各方面で努力が続けられています。

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