メタボリックシンドロームお前は何者?
転ばぬ先の杖なのです。
皆さんは、メタボリックシンドロームについて、どのような知識を持っていますか?
新聞やテレビなどで『ウエストが太い人は要注意』という部分だけが強調されて報じられている結果、太めの方々から「私たちが一体何をしたというのだ。私たちを一体どうするつもりだ」という恨み節も聞こえてきますが、この特集を読めば、その手の疑念は消えるはずです。
なお、カタカナは気持ち悪いという方のために最初に説明しておきますと、「メタボリック」を日本語に訳せば「代謝」です。「シンドローム」は症候群ですから、要するに代謝に何だか異常の出る症候群らしいと見当がつきますね。
見当はつくけれど、じゃあ具体的に何が問題なのかと問われると、まだよく分かりません。実は日本語の場合、「内臓脂肪症候群」と表記するのが一般的です。どうやら内臓脂肪が問題らしい、ということは分かりましたね。
診断基準は後ほど詳しく説明しますが、メタボリックシンドロームを言葉で定義すると「内臓脂肪蓄積を原因とする動脈硬化性疾患のハイリスク状態」になります。何のこっちゃ、ですね。さらに噛み砕きましょう。
ポイントは、まず、原因が「内臓脂肪蓄積」である点。次項で触れます。それから、「動脈硬化性疾患」の「ハイリスク状態」であって、身体的苦痛などの自覚症状があるわけではない点です。
動脈硬化のリスクが高い状態ということと、自覚症状がないうちから病気扱いされることは、高血圧(05年12月号参照)や糖尿病(06年1月号参照)、高脂血症(vol.22参照)など生活習慣病と同じですね。これらの複合的なものと位置づけられているのだから、当然といえば当然です。
高血圧特集や糖尿病特集の際にも説明しましたが、生活習慣病について、おさらいしましょう。
自覚症状がないのに病気として扱うのは、その状態が続くと血管がボロボロになって動脈硬化が進み、さらには脳卒中や心臓発作、腎不全など命に関わる重大な疾病を起こす可能性が高いからです。そして、原因が主に普段の生活にあり、放っておいても改善が見込めないために、生活改善や投薬などのコントロールを行うのでしたね。
要するに、転ばぬ先の杖として病気扱いするのでした。
メタボリックシンドロームに関しても、まったく同じことが言えます。むしろ、さらに早く、血管の傷みが軽いうちに警報を発しておく、という意味合いが強いかもしれません。
だから、「あなた、メタボリックシンドロームですよ」と言われたからといって、ショックを受けるには及びません。「ああそうか、生活改善しないといけないのだな。早めに気づけてラッキーだった」。こう思うべきなのです。