冷えに負けずに冬を乗り切る
寒くなってくると増える病気があります。
増えるのには明確な理由があり
であれば、備えることもできる理屈です。
監修/渡辺賢治 慶應義塾大学准教授
和田豊郁 久留米大学准教授
渡邉賀子 慶應義塾大学講師
常深祐一郎 東京大学助教
最初にお断りです。今回は広い範囲の話を横断的に扱う分、一つひとつの疾患の説明は駆け足にならざるを得ません。出てくる疾患のほとんどが過去に特集済みなので、もう少し詳しく知りたいという場合は、過去の特集を適宜ご参照いただけると幸いです。
それでは本題に戻りまして、まずは、寒くなると人間の体で一体何が起きるのか、というところから話を始めましょう。
人間の体は寒さを感じると、自律神経の働きで鳥肌が立ちます。毛が逆立って衣服との間に空気層ができ皮膚の保温に役立ちます。と同時に、皮膚がひきしまり毛細血管の流れが少なくなって、血流から体温が外へ逃げないようにしているのです。
また自律神経は、毛細血管に入る前の細い動脈(細動脈と言います)も細くします。体温が下がり過ぎたら死んでしまいますので自然な防御反応ではありますが、しかし同時に色々な問題が起きてきます。
血流が少ないのは、血行不良と同じことです。また、血圧(05年12月号参照)は、血液の量に比例し血管の断面積(太さ)に反比例します。血液の量は肝臓である程度調整していますが、それが間に合わないほど急に血管が細くなると、血圧も急に上がることになります。高血圧は腎臓の分泌するホルモンの影響でどんどん悪循環します(07年5月号参照)し、脳卒中(07年10月号参照)の危険性も上がりますので、高血圧の素因がある方、どうぞご用心ください。
また心臓の周りで血管が急に血行不良になると、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患(08年8月号参照)を引き起こしやすくなります。これらの既往がある方、特にお気を付けください。
年寄りの冷や水という言葉がありますが、冷水を浴びるまでもなく、温かい室内から寒い部屋や外に出る時には特に注意しましょう。きちんと防寒すると共に、寒いところに出るのだと気合いを入れ、焦らずゆっくりを心掛けましょう。朝寝坊したからといって、慌てて家を飛び出すのは危険です。