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禁煙なぜできない

57-1-1.JPG今回の特集は、たばこを吸っていることに罪悪感のある方、身近な人に禁煙させたいなと思っている方のお役に立つかもしれない情報です。

監修/磯村毅 リセット禁煙研究会代表 

喫煙は悪いのか

 5月31日は、世界保健機関(WHO)の定めた世界禁煙デーで、そこから1週間の禁煙週間です。このような日が設けられていることからも分かるように、喫煙が健康に害を与えると、先進国では一定のコンセンサスができています。
 具体的には、肺がんなどのがん(06年11月号など参照)、慢性閉塞性肺疾患(COPD=08年11月号参照)、動脈硬化に起因する生活習慣病(高血圧=05年12月号参照糖尿病=06年1月号参照)と心血管疾患(脳卒中=07年10月号参照虚血性心疾患=08年8月号参照)、歯周病(07年9月号参照、付随して口臭が強くなります)などリスクを上げると指摘されている疾患は枚挙に暇がありません。妊娠の際のリスクも上げると言われていますね。
 そして近年は、本人だけでなく周囲の人の健康にも害を与えるとの報告が相次いでいます。最も確度が高いのは、公共の場での喫煙を禁止した世界各地のデータを総合したところ心臓発作を起こした人が約25%減っていたというもの。受動喫煙で心臓発作リスクの上がることが示唆されます。妊娠中に喫煙していた母親の子供は、多動など行動障害を発現するリスクが高まるという研究もあります。さらに、タバコの煙の残留物から新たな毒性物質が発生し、煙が消えてから部屋に入った人にも悪影響を与えるという「三次喫煙」なる仮説も、世界的に注目されるようになってきています。
 ただ、喫煙者の方々は、ここまでに書いてきたようなことは恐らくかなりご存じのはず。「悪い、悪い」でやめられたら苦労しないよ、と思っていますよね。
 さて、本題に入ります。禁煙した方がよいでしょうか。
 4年前から禁煙指導とそのためのニコチンパッチ使用などに健康保険の適用が認められていますが、受診していったん離脱した人の7割が半年後には再び喫煙しているというデータもあり、「お医者さんに行けば簡単に禁煙できる」というのは幻想です。むしろ再喫煙が自尊心を傷つけて、いっそう禁煙を難しくするという悪循環も起こり得ます。本当に禁煙したいのか、じっくり考えてから取り組みましょう。
 まず発想を逆転させて、誰にも受動喫煙させず、リスクを承知して個人の嗜好として嗜む場合に、どういうよいことがあるのか考えてみたいと思います。そのメリットが禁煙のメリットを上回るならば、無理にやめる必要はないと判断するのが合理的です。逆の時に初めて禁煙した方がよいという話になります。
 さて、喫煙のメリットって何でしょう。吸っている方は心の中で挙げてみてください。
 気分転換? リラックス? おいしい? ストレス解消?
 表現は色々あるかもしれませんが、大体こういった感じのところに落ち着くのではないでしょうか。
 次に、これらのメリットは、他のことでは代替できないのか考えてみてください。
 喫煙している人といない人とで大きく異なるのは、恐らくこの質問への回答です。
 喫煙している人は、とんでもないと思うでしょうし、してない人は、他にも同じ効果の得られそうなことはあるなと思うはずです。
 この違いは、一体何なんでしょう。

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