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メタボより怖い 慢性腎臓病CKD

48-1-1.JPG 生活習慣病と致死的な発作を束で連れてくる......それがCKDです。
腹囲という自覚可能な指標のあるメタボリックシンドロームと違い、こちらは気づかぬ間に進行する分、怖いです。
監修/木村健二郎 聖マリアンナ医科大学教授
     小原まみ子 亀田総合病院部長

腎臓悪いと万病の元

 腎臓が一体どのようなことをしているか、悪くなるとどういう問題が起きるかについては既に1回特集しています(07年5月号参照)。
 簡単におさらいしますと、血液を濾して尿をつくり排出することで、余分な水やミネラル、老廃物(尿毒素)を捨てています。同時に、血液が酸性やアルカリ性に傾かないようにバランスも取っています。だから腎臓が悪くなると、体がむくんだり、血中に老廃物が溜まったり、ミネラルバランスがおかしくなったりします。ミネラルバランスがおかしくなると意識が混濁したり、不整脈(08年3月号参照)や心不全を起こしたりします。
 また、レニンという血圧を上げるホルモンを分泌しています。全身の血圧を維持するとともに腎臓の血流量を維持するためと考えられています。だから腎臓が悪くなると、その血流量を増やそうとレニンの分泌が増え、高血圧(05年12月号参照)になります。また食塩に対する感受性が高くなって、高血圧になりやすくもなります。
 骨髄で赤血球の産生を促す働きのあるエリスロポエチンというホルモンもつくっています。だから腎臓が悪くなると赤血球が不足して貧血(06年3月号参照)になります。
 ビタミンDを活性型(カルシトリオール)へ変える働きもあります。カルシトリオールは小腸からカルシウムとリンの吸収を促し、骨の発育・維持に大きな役割を果たします。だから腎臓が悪くなると、骨がもろくなります。
 さらに、インスリンや成長ホルモンなど、役割を果たした後で不要となったホルモンを不活化したり捨てたりもしています。
 これだけ各方面に大活躍で壊れると大変な腎臓ですが、少々悪くなったぐらいでは何の自覚症状もありません。でも放っておくとどんどん悪くなる一方、ついには慢性腎不全になって、腎臓で調節が充分には行われなくなる分、食事制限や薬で補ってあげないといけなくなります。そしてついには透析が必要になります。その時点では、飲食制限もたいへん厳しいものになっています。
 さらに近年分かってきたのは、自覚症状のない程度の腎臓の壊れ方であっても、心臓発作や脳卒中など心血管疾患の発生率は上がっているということ(次々項のグラフ参照)。発作を起こしてしまったら死にかねませんし、たとえ命を取り留めたとしても、その後は以前と比べて生活の質はガタ落ちです。
 そこで近年注目されているのが、自覚症状のないうちから腎機能を把握し守っていこうという「CKD」(慢性腎臓病)の疾患概念です。

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