隠れた国民病 肝炎にご注意
レバーは、お好きですか? あれが動物の肝臓だということは、ご存じですよね。普段ご覧になっているのは細かく切ったものだと思いますが、体から取り出したばかりのものを見たら「こんなに大きいの!?」と驚くことでしょう。たいていの動物で最も大きな臓器は肝臓です。
これは人間の場合もまったく同じ。そんなに大きな図体で、肝臓は一体何をしてくれているのでしょう。
まず、肝臓には貯蔵庫としての役割があります。ためるのはエネルギーのもとになるグリコーゲンとビタミンです。だから肝臓が健全でないと体力がなくなります。
また、体にとって有毒な物質を解毒する働きもあります。お酒も薬も、肝臓が健全でないと、いつまでも体の中に残ります。
十二指腸内で脂肪を吸収しやすくするのに使われる胆汁も肝臓が作っています。肝臓が健全でないと、油っこいものを食べた時に、うまく消化吸収できません。また、ビタミンAやDの吸収がうまくいかず欠乏症になることもあります。余談になりますが、サメの肝臓から取った「肝油」が重宝されてきたのは、ビタミンAが豊富に含まれているからです。
さらに、肝臓はアルブミンや血液を固まらせる働きのあるプロトロンビンといったたんぱく質、ホルモンや細胞膜の材料となるコレステロールなど、生存になくてはならない物質をいろいろ合成しています。
まとめますと、肝臓は体に有用な物質を作る生産工場であり、有害な物質を無害化する処理工場であり、エネルギーやビタミンなどの貯蔵庫であるということになります。実に働き者ですね。
肝臓の凄いところは、これだけではありません。少々壊れても体調に異変が出ないほど能力に余裕があり、そのうえ再生力も非常に強いのです。
これほどの臓器であるだけに、壊れた場合は深刻になります。その「壊れていく状態」の代表的なものが、今回取り扱う肝炎というわけです。
肝炎とは読んで字のごとく肝臓に起こる炎症のことです。主にウイルスやアルコール、薬物などによって引き起こされ、中でもっとも多いのがウイルスによるものです。
肝炎には、急激に症状の出てくる「急性肝炎」と、激しい症状はなくともダラダラ続く「慢性肝炎」とがあります。ウイルス性急性肝炎は発熱、全身倦怠感、食欲不振などが見られるので、風邪と勘違いされる場合もよくあります。