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むし歯のない人こそ歯周病にご用心~それって本当?

むし歯がないから歯科には縁がないという人、知らないうちに歯周病が進行しているかもしれませんよ。
専任編集委員 堀米香奈子(米ミシガン大学環境学修士)
 「むし歯のない人の方が、歯周病は要注意です」と、東京医科歯科大学大学院歯周病学分野の和泉雄一教授は言います。

 「口内では、菌同士が絶えず勢力争いをしています。むし歯がないと、歯周病菌が優勢になっている可能性がありますし、歯科を受診するきっかけがなく、歯周病を発見されづらいのです」

 歯周病菌は空気のない環境を好み、「歯周ポケット」と呼ばれる歯と歯茎の隙間に入り込んで増えます。「通常は2㎜程度の深さですが、歯周病菌が歯茎に炎症を起こすと、どんどん深くなります。4~5㎜なら歯磨きと歯石除去で回復も可能ですが、6~7㎜になると外科手術が必要です」と、和泉教授は警告します。

 特に、年と共に歯茎が下がってきたなら危険信号です。歯の土台である「歯槽骨」が溶け、そのせいで歯茎も下がっている可能性が高いのです。

 「溶け」と書きましたが、厳密には、骨の生まれ変わりを担う破骨細胞による骨吸収(骨の破壊)が過剰になった状態です。歯周病菌の代謝物が直接破骨細胞を活性化するほか、歯周病菌に対抗して集まってきた白血球が発する炎症物質も破骨細胞を活性化します。

 歯槽骨が下がり続けると、最終的には歯が抜けます。むき出しの歯肉には、空気を嫌う歯周病菌はもはや棲めず、歯周病は解消されますが、それは避けたい結末ですよね。

 一番分かりやすい兆候は、歯磨きの際の歯茎からの出血。ひどいと歯茎が赤く腫れ、押すと膿が出たり口臭がしたり、歯がぐらぐら動いたりするようになります。「歯肉炎は高校生くらいから見られ、歯周炎へと進展し40~60歳代が最も心配されます」と和泉教授。

 同じ先進国でも、米国では、日本より高齢者の残存歯数が多く、歯のない人の割合は少ないのです。「歯磨きに加え、歯間ブラシやフロス(糸ようじ)での歯のすき間の清掃と洗口液の使用について、米国の歯科医師会が積極的に推奨してきており、使用率が高いためかもしれません」

 いずれにしても、食後の歯磨き習慣で口内を清潔に保ち、歯周病菌を野放しにしないことは大前提。歯間ブラシやフロス、洗口液なども、色々試しながら自分に合ったものを見つけてはいかがでしょうか。

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