東洋医学を正しく理解しよう
世界の見方が違います
東洋医学というと、「陰陽」とか「気の流れ」とか、目に見えない確かめようのない概念が出てきて、煙に巻かれたような気持になる方が多いと思います。一般の医療者の中に毛嫌いする人が結構いるのも、その辺りの怪しさが原因でしょう。
しかし東洋医学を迷信と決めつけるのは早計です。無理に理屈で説明しようとするから、怪しく見えてしまうだけなのです。
実は、基本原理(理屈)と世の中の現象との因果関係を説明し、それによって物事を理解しようとするのは、西洋科学とその背景思想である実証主義の特徴です。日本の学校教育も実証主義で行われてきた結果、我々は何か未知のものに出会ったとき、無意識に基本原理を問うてしまうところがあります。
しかし東洋医学は、そもそも実証主義的に発展してきていないので、基本原理を探すと訳が分からなくなります。
と言われても、訳が分からないことに変わりはないかもしれません。現代医学と比較すれば、少しは分かりやすくなるでしょうか。
さて、現代医学は完全に西洋科学の系譜に連なりますので、人体や病気を、根本原因まで遡って把握し、そのうえで原因を取り除く治療を組み立てようとします。
科学的に根本原因を探ろうとする思想の表れが、血液や尿、心電図や血圧、あるいは画像など様々な検査です。「医者が検査データばかり見て、私を見てくれない」という苦情を新聞の投書欄などで目にすることがありますが、誰が見ても同じ結論の出るのを良しとするのが科学ですから、客観的なデータを重視するのは当たり前かもしれません。
客観的な指標に基づいて医療行為が組み立てられる結果、後から妥当性を検証することもできますし、教育と普及にも向きます。一方で臓器や原因ごとの専門化・細分化が進むことにより、全人的把握が苦手になる危険性があります。
対する東洋医学は、誰が見ても同じ結論にはなりませんが、全人的把握に優れます。先人たちによって長い年月をかけて蓄積されてきた経験を根拠に、人間にこういう現象が起きた時にはこうすれば良い、途中の経過や理屈はブラックボックスで良いという態度だからです。
そのブラックボックスの部分を後知恵であれこれ説明する際に非科学な解釈が入り込むことも多く、結果として理屈に関しては怪しげになってしまったのです。
ブラックボックスを認めるのはインチキ臭いと思うかもしれませんが、現代科学をもってしても解明できていないことはまだまだ多く、現代医療にだって、理屈の分かっていないブラックボックスの部分はたくさんあります。