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東洋医学を正しく理解しよう

東洋医学は、とにかく観察します

 一般に東洋医学といった場合、中国で発展してきた「中医学」と、インドで発展した「アーユルベーダ」とがあり、それらが江戸時代以降の日本で独自に進化したのが「漢方」と「鍼灸」ということになります。
 たぶんご存じと思いますが一応説明しておくと、漢方は生薬を内服することによって体の中から、鍼灸はハリを打ったりお灸を据えたりで体の外から働きかけます。
 さて、これらの東洋医学に共通し、しかも西洋医学とハッキリ異なるものは、診断の仕方です。前項で、ブラックボックスを認めるのが東洋医学の基本的態度だと説明しましたが、その思想は診断方法に象徴的に表われています。
 西洋医学が、血液だ、尿だ、体温だ、血圧だ、X線だ、超音波だと様々な方法で様々なものを検査して、体の内部の様子を見よう、症状を客観的な数値で表そうとしてきたのに対して、東洋医学では外から得られる情報だけを、五感をフル稼働させて主観的に観察します(〓05年11月号「漢方特集」およびコラム参照)。
 ただしそれは、体の中を調べない方が効果的だからということではなく、昔は体の中を調べる方法がなかったので、仕方なく観察を発展させてきただけと思われます。要するに、分からないものは分からないのだから、分かるものを最大限生かして何とかするしかないという割り切りのうえに成立しているわけです。
 その割り切りは、治療行為についても存在していて、たとえば漢方の生薬は、自然由来の複合製剤ですから、その中に含まれる何がどうやって効いているのか今ひとつ判然としないところがあります。でも経験的に効くと言われているのだし、実際に効けばいいじゃないかというわけです。
 ハリや灸についても、結局のところ何がどうやって効果を上げるのかよく分かっていません。でも実際に効くのなら、それで結果オーライなのです。
 このため、原因と症状の因果関係がハッキリしている疾患については、原因に直接働きかけることのできる西洋医学に、どうしても切れ味の面で劣ることになります。
 でも逆に、原因不明の症状の場合、西洋医学はお手上げになって、「精神的なもの」で片づけられてしまう場合も少なくありません。
 しかし前項でも述べたように、世の中のほとんどのことが分かっていないという前提に立つと、原因不明というのは原因がないことではなく、分からないだけ、分かる方法がないだけかもしれません。
 そして現実に苦痛がある限り、それを取り除いてほしいと願うのは人情です。ブラックボックスを認めて発展してきたがゆえに、東洋医学は、「原因不明」のものに対して西洋医学よりも柔軟に対応可能です。

東洋医学の知恵 四診とは  肉眼で状態を観察する「望」、体に触れて診る「切」、咳や声を聞きにおいを嗅ぐ「聞」、患者の主観的訴えを聴く「問」の四つで情報収集し、過去から蓄積された事例にあてはめて「こういう治療をするべし」と診断します。  医療者と患者とのコミュニケーションが濃厚ですね。病気によっては、この診断だけで治ってしまうかも?

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