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中医協って知ってる?


新たな船出をした中医協

 汚職事件をきっかけに新たな船出をした中医協ですが、病院団体側からは、「われわれが参加するのが遅過ぎた」との声が出ています。近年、病院勤務医の労働環境が悪化していることが問題になっています。これは、病院よりも診療所の診療報酬を手厚くしてきた結果だと言う人もいます。
 08年度の診療報酬改定では、病院勤務医の負担を軽減するための施策を「緊急課題」として取り組みましたが、厚生労働省が4月に公表した調査結果によると、思ったほどの効果は出ていないようです。
 中医協では、個別の診療行為の点数を決めるとされています。実は、この点数は診療報酬改定案を厚生労働大臣に答申する直前まで明らかにされません。医療費全体の総枠は、内閣が決定する「改定率」によって決まってしまいますので、点数でその配分を決めることになります。事務局を務める厚生労働省の保険局医療課が原案を作成し、中医協で議論します。
 中医協は公開されていますが、中医協の外で行われる日本医師会や病院団体との調整は国民からは見えませんので、不透明な意思決定がなされているという批判もあります。
 外部からのチェックも不十分です。公益委員の同意人事としてしか、国会のチェックを受けないことや、厚労省保険局医療課という役所の一つの課が絶大な権限を持ってしまったことも問題です。
 また、治療や検査のうち、どの点数を上げるかについては、政策誘導的な意味合いが多いことも指摘されています。科学的に証明できるような根拠に基づいて点数が配分されるわけではないため、診療報酬改定は時として、「厚生労働省の勘と度胸」と言われることもあります。
 有名な改定では、06年の「7対1入院基本料」の創設があります。入院基本料は、主に看護職員の数が多ければ多いほど、点数が高くなる仕組みになっています。それまでは、「入院患者10人に対して看護職員1人」(10対1入院基本料)に最も高い点数が付いていましたが、その上に新たに「入院患者7人に対して看護職員1人」という「7対1入院基本料」をつくりました。
 たくさんの看護職員を配置している病院を評価してほしいという要望に応えたものですが、看護師を多く集めれば年間数億円の増収になるため、看護師の獲得競争が過熱しました。その結果、資金やブランド力のある都市部の病院が新卒看護師の大量採用に走り、地方の看護師不足が深刻化したことが問題になりました。
 前回の08年度改定は、医師不足対策をメーンに掲げました。しかし、実際には点数を取るための条件を厳しくし過ぎたため、「絵に描いた餅」になってしまいました。
 今回の改定では、出来高払いと包括払いをどのように整理するかが焦点となっています。出来高払いでは、医療サービスをすればするだけ収入が大きくなります。これに対し、包括払いの場合は、総枠が決まっているので、効率良くサービスをした方が利ざやを得ることができます。出来高払いは「過剰医療」の危険があり、逆に包括払いは「過少医療」の危険がつきまといます。
 診療所は出来高払いが中心で、病院では入院医療について包括払い制度を導入しているところも増えています。
 医療は国民の健康に直結する問題です。コストやエビデンスに基づいて、国民のためになる診療報酬体系を構築する方向に舵を切れるかどうかが注目されます。
 中央政府が医療の価格を単一に統制しているのは、先進国でわが国だけとの指摘もあります。中医協汚職事件は、保険者代表になった天下り官僚への診療側からの賄賂という側面があります。今後、診療報酬の決定過程が国民に見えるように透明性を高めていくことが強く望まれます。

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