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ニュース〜医療の今がわかる

「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (1)

中医協・遠藤久夫会長1010.jpg 医療経済フォーラム・ジャパンが10月10日に開催した公開シンポジウム「診療報酬改定の方向性」で、中央社会保険医療協議会(中医協)の遠藤久夫会長が「わが国の医療費の水準と診療報酬」と題して基調講演した。前半は医療費抑制策に対する評価、後半は医療費の配分の在り方や次期改定の主要課題について述べた。講演の模様を2回に分けてお伝えする。(新井裕充)

[司会]
 基調講演を予定しておりました厚生労働省保険局医療課長・佐藤敏信先生につきましては、諸般の事情により、代わりまして学習院大学経済学部教授、中医協会長・遠藤久夫先生に基調講演を賜ることといたしました。
 また、シンポジストを予定しておりました財務省主計局主計官・可部哲生先生につきましても、代わりまして全国社会保険協会連合会理事長・伊藤雅治先生にシンポジストとしてお話を賜ることとなりましたことをご了承くださいませ。
 それでは、定刻となりましたので、開会挨拶をメディカル・マネジメント・プランニング・グループ(MMPG)専務理事でいらっしゃる木村光雄先生にお願いいたします。木村先生、よろしくお願いいたします。

[MMPG・木村光雄専務理事]
 本日は、医療経済フォーラム第8回の公開シンポジウムにこのように大勢の方にご参集いただきまして、心から御礼を申し上げます。(中略)

 民主党への政権交代に伴いまして、いろいろ厚生行政の政策の見直しが取り沙汰されておりまして、大変騒がしくなっているような状況でございます。とりわけ、医療・福祉界に目を転じますと、医師不足、医師の偏在、介護職の雇用不安等が明るみに出る中、政権交代に伴う後期高齢者医療制度廃止論や介護療養病床廃止凍結論など、既定路線そのものが大きく揺らいでおります。
 これらは医療関係者からすれば、好転への期待はあるものの、今後の経営戦略を構築する上で非常に不透明な状況であるかと存じます。世界に類のない超高齢社会を迎えた日本にとって、今こそ、この先10年の進路を決する上で極めて重要な時期にあると思うわけでございます。

 今回の医療経済フォーラムのシンポジウムにおきましては、メインテーマが「診療報酬改定の方向性」であります。来年4月に予定されております診療報酬改定は、民主党政権下、従来の社会保障費圧縮路線がいかに変容するかを見極める試金石でもあると思います。本日は、第一人者の先生方にお集まりいただいております。この困難なテーマについて、徹底的に議論を尽くしていただけるものと楽しみにしている次第であります。

 そして、本公開シンポジウムが本日ご参加いただきました皆様方のこれからの医療・福祉経営を戦略的に進める上での指針となれば幸いであります。また、コンサルタントの方々には的確なアドバイスを行う上での貴重な情報となれば望外の喜びとするところであります。
 最後に、MMPGは引き続き医療経済フォーラム・ジャパンのさらなる発展のために貢献することをお誓い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。(会場、拍手)

[司会]
 木村先生、ありがとうございました。それでは、次のプログラムに移らせていただきます。本日のシンポジウムのメインテーマは「診療報酬改定の方向性」でございます。シンポジウムの前にまず、基調講演を頂戴いたします。
 基調講演は、学習院大学経済学部教授、中医協会長でいらっしゃる遠藤久夫先生にお願いいたします。レジュメにつきましては、5ページからとなっております。それでは、遠藤先生にご登壇いただきます。皆様、拍手をお願いいたします。(会場、拍手)

[中医協・遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 皆さん、こんにちは。遠藤でございます。本日は、非常に重要なシンポジウムで基調講演を仰せ使わりまして、大変緊張しておりますとともに、大変感謝を申し上げたいと思います。水野(肇)先生はじめ、医療経済フォーラム・ジャパンの関係各位の皆様、どうもありがとうございます。

 私は実は、当初は基調講演ではなくてシンポジストの1人で参加する予定だったのですが、厚労省の保険局医療課長の佐藤(敏信)さんが諸般の事情で、「こういう所でじゃべってはいけない」ということらしいので、私が急きょピンチヒッターという形になりましたが......。
 実は、本日のテーマであります「診療報酬改定の方向性」については、私もあまりしゃべってはいけない立場でありまして......。それにはいくつか理由がありまして、1つには、そもそも「方向性」ということは中医協で決めるのではなくて、社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で決めるというルールがありますので、そこで基本的な方向性がまだ固まっておりませんので、従いまして、中医協の立場でお話をすることはなかなか難しいというのが1つ。

 もう1つは、中医協というのはある意味でさまざまな利害を持つ団体が交渉していますから、どうしても話が1つに落ち着かない場合もあるわけです。その場合は、私どもの立場、すなわち公益側が事実上の裁定のようなものを出させていただく。そういう形で、1つの方向を決めるということをやっています。
 そういう立場があるものですから、議論が本格的に始まる前に「こういう方向で」ということをこの段階で申し上げるのは、なかなか......。ちょうど裁判が始まる前に裁判官が「判決の方向は」と言うようなものですので、なかなかやりづらいということもあるものですから、そういう意味で、やや、「診療報酬改定の方向性」という観点から見れば、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感じがするかもしれませんが、その辺はご了承いただきたいと思います。

 本日お話ししたいことは、大きく分けて3つであります。1つ目は、「わが国の医療費は過少である」という、皆さんもうよくご存じのことですが、その辺の所を少し整理してみたい。
 実は、「これだけで終わりにしようかな」と思ったのですが、さすがにそれでは問題もあるだろうということで、次に、これは中医協の審議の1つの問題でもありますが、配分の問題。中医協の機能というのは、医療費の配分について具体的な検討をすることですので、配分の問題をお話しいたします。
 さらに、現在お話ししても大丈夫なレベルの今後の中医協での検討事項について、お話をさせていただきたいと思います。特に重要な課題がいくつかありますので、それについてお話をさせていただきたいと思っております。
 

【目次】
 P2 → 国民所得と医療費の伸び率をリンケージさせる政策は限界
 P3 → 明確な医療ビジョンが特になかった
 P4 → 社会保障費の配分という点からも、医療は割を食っている
 P5 → 医療費の負担について明確な議論が十分されてこなかった

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