新型インフルで看護師不足、「非常勤職員を採用」?
新型インフルエンザの流行に伴う看護師不足が懸念されるため、厚生労働省は「非常勤職員を新たに採用するなど、看護要員の過重労働の防止に配慮すべき」と求めている。これに対し、日本看護協会の副会長は「コスト面でのサポートはあるのか」と声を上げているが、募集すればすぐに看護師が集まるのだろうか。(新井裕充)
厚労省は9月14日付けで、入院患者の急増や看護職員の罹患などで看護配置の基準を満たせなくなった場合の緩和措置を各都道府県などに通知した。
緩和措置は、▽インフルエンザが流行している地域および期間に限り、インフルエンザ患者は平均入院患者数(直近1年間)に参入しない ▽1日当たり勤務する看護職員数の特例(1割以内の一時的な変動)を、インフルエンザが流行している地域および期間に限り、「2割以内」まで認める ▽夜勤72時間規制の特例(1割以内の一時的な変動)を、インフルエンザが流行している地域および期間に限り、「2割以内」まで認める─の3点。
ただし、この通知には次のような一文が入っている。
「下記の取扱い(緩和措置)は、新型インフルエンザ患者を受け入れた保険医療機関の診療報酬上の評価を適切に行う観点から行うものであって、看護要員の労働時間が適切であることが求められることは当然のことであり、例えば、非常勤職員を新たに採用するなど、看護要員の過重労働の防止に配慮すべきであることを申し添える」
厚労省は9月18日、今回の緩和措置を中央社会保険医療協議会(中医協)総会に報告。坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)は次のように質問した。
「恐らく看護師が足りなくなるような状況になると思うが、それに対してコスト面での、例えば、パート(看護師)を雇うとか、短時間勤務を増やすということにおいて、コスト面でのサポートはあるのか。都道府県に関して補助金があるなら、病院にそれが行き渡るような方法はどのようにつくられているのか」
これに対して、保険局医療課の佐藤敏信課長は、「この(緩和)措置の中身を理解していただければお分かりいただける」と指摘した上で、次のように回答した。
「100床の病院があって、そこに10床多めに、例えば110人を2人部屋に4人に入れる等々の対応で10人分増やすことになるのでしょうが、その増えた10人についても、例えば、(看護配置)『7対1』とか『10対1』の診療報酬が支払われることになるので、その中には全額かどうかは別にして、看護師の雇い上げに掛かる費用は(入院基本料に)込められていると考えられる」
また、補助金については次のように答えた。
「(新型インフルエンザ)対策推進本部なり、あるいは健康局で所管している補助金の流れ方、その決定の仕組み、特に自治体における決定の仕組みについて関与していないが、恐らくはこの推進本部から出ている各種の通知を見ても、都道府県とか、保健所設置市・特別区単位で適切な医療体制を整えることとなっているので、この中で個々の医療機関と都道府県、自治体との間で綿密な打ち合わせなり調整が行われて、必要な補助金がそこに支出されるものと承知している」
医療課の所管ではないため、「我関せず」といったところか。佐藤課長は「関係部局にご要望、ご意見の趣旨を伝えたい」と述べ、その場をしのいだ。
ところで、医療課は「非常勤職員を新たに採用」と簡単に言うが、新型インフルエンザで急増した患者対応のために、潜在看護師がわざわざパートに出てくるのだろうか。
また、日本看護協会は新たに看護師を雇うコストの負担を求めているが、募集すればすぐに看護師が集まると考えているのだろうか。
坂本委員の質問と厚労省の回答は次ページを参照。