「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (2)
診療所・病院間の医療費の配分について、中医協の遠藤久夫会長は「マンパワーだけの比率を見ると、診療所のほうに有利な資源配分がされているという見方をするのが素直」としながらも、「最終的にはどのぐらいの利益率になっているかで調べるのが一番良い」として、医療経済実態調査による比較を挙げた。今年度から医療法人の診療所についても調査するため、「医療法人の診療所と病院を比較すれば診療所と病院の収支率の差が明らかになる」との考えを示した。(新井裕充)
※ (1)はこちらをご覧ください。
■ 診療所から病院への財源シフトは、22年度改定でも議論になる
中医協の機能は、今や医療費の配分に特化しています。かつては、医療費の上昇に大きな影響を及ぼす改定率、これは後でご説明しますが、改定率の決定に大きな影響を持っていたわけですが、平成16年に不祥事がありました。
その時に大きく変わりまして、現在は直接的には改定率に中医協は関与できません。意見具申はできるんですが、直接関与しない。配分に特化したということです。
ただ、この配分の問題は大変重要なんですね。なぜならば、先ほど説明したように改定率が下がっている。改定率が高いころは、確かに中医協は随分荒れたようですが、配分という視点から見てみると、高い改定率というのは配分を整理する立場からすると楽ですね。相当マイナスになるようなセクターがないですから。
しかし、(改定率)ゼロパーセントやマイナスということは、どこかを引き下げる。何かを上げるためには何かを下げなければいけないというのがゼロパーセントですから。マイナスということは、それがもっと露骨に出るわけです。
この中で再分配を決めていかなくてはいけないということは非常に重要です。そのために、さまざまなエビデンスということが重要になってくるわけです。特に、下げる場合にはエビデンスがないと抵抗されますので、そういう意味で配分の問題は非常に重要で、中医協の機能が重要になってくるわけです。
配分の問題でしばしば出てくるのが、病院と診療所の配分の問題です。これは昔から出ている議論でして、今年に入ってからは財務省の財政審(財政制度等審議会)で、診療所の医師の所得が勤務医の所得と比べて相対的に高いということが議論されて、この配分が病診の間でアンバランスではないかということが財務省の審議会でかなり議論されたということもありました。
また、昨年の診療報酬改定でも、診療報酬の増加分についてはすべて病院に充当すると。さらには診療所の再診料を引き下げて、その分を病院に充当するかどうかということが随分議論になりました。
結果的には、再診料を引き下げずに外来管理加算といわれる点数についての支払条件を厳しくすることによって、診療所から病院への財源シフトの一助とした経緯があります。この問題はいまだに当然のことながら、22年度改定の時にも議論になることは間違いないと思いますが......。
【目次】
P1 → 診療所から病院への財源シフトは、22年度改定でも議論になる
P2 → 診療所の医療費のシェアは下がっている
P3 → 診療所に有利な資源配分がされている
P4 → 医療法人の診療所との比較が今後のポイント
P5 → 各科バランスも議論しなければいけない
P6 → 次期改定の主要課題① ─ 新たな課題
P7 → 次期改定の主要課題② ─ 従来からの課題