免疫きほんのき 2
サイトカイン放出
非自己の情報を受け取ったヘルパーT細胞は、様々な「サイトカイン」を放出します。サイトカインとは、免疫システムの中で細胞間の情報伝達のために分泌され放出されるたんぱく質の総称です。今お話しているのは、そのなかでも、主としてT細胞から分泌されるインターロイキンと呼ばれる一群です(その他のサイトカインとしては、ウイルス感染の広がりを抑えるインターフェロンなども、がん治療への応用で有名ですよね)。
さて、サイトカインの指令を受けてようやく、眠っていたB細胞が非自己の排除に乗り出します。また、感染細胞からの訴えを聞いて出動したキラーT細胞も、実はまだ待機状態だったのですが、ヘルパーT細胞からの指示を受けて初めて排除を実行します。
以上、免疫は、大雑把なようでなかなか複雑な自己・非自己の認識方法を発達させてきたのですね。
ちなみに、免疫細胞が連絡を取り合っている時、それを自分でも実感できることがあります。例えば、傷口の周りが赤く腫れあがって熱を持ったり痛んだりすること、ありますよね。「炎症」です。これは何かと言うと、サイトカインの指令に従って免疫細胞が集まり活発に働いている状態なのです。
炎症は、江戸時代の町火消しが家を壊しながら鎮火したように、自己を壊しながら非自己も沈静化させる働きがあります。適当なところで治まらないと、非自己よりも恐ろしいことになりかねません(コラム参照)。
次回はいよいよ最終章、非自己の排除について見てみます。
自己免疫疾患 免疫が、誤って自己に攻撃を仕掛けると、様々な体の不調が生じることになります。これこそが、「自己免疫疾患」です。ぴんと来ない方も、関節リウマチくらいはご存知ですよね。 原因として多いのは、免疫が、自己を非自己と誤認してしまうこと。また炎症性のサイトカイン等が過剰に作られてしまう場合もあります。なぜそういうことが起きるのかの詳細はよく分かっておらず、免疫の働きを抑制する治療が行われています。遺伝的に受け継がれやすいものもありますが、全体として患者数が年々増加していることから、環境の変化やストレスなども影響しているようです。