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ニュース〜医療の今がわかる

首都圏が台風に直撃された30日、日本がん免疫学会の緊急シンポジウム『がんワクチン治療の現状と臨床』を聴講してきた。急な開催で、しかも悪天候だったにも関わらず200人入る会場は9割方埋まり、いかに患者さんたちの関心が高いかを改めて痛感した。簡単に再現する。(川口恭)

冒頭に今井浩三・日本がん免疫学会理事長がシンポジウムの趣旨を説明。
「なぜ今なのかと言えば、先日朝日新聞で事実関係にかなり間違いのある記事が報道され、患者さんが心配され不安に思われているので、日本がん免疫学会という、15年近く免疫治療、特に『がんワクチン』を追究している学会が、緊急にシンポジウムを開くことにした。日本癌学会のご後援もいただいており、記事に関しては両学会から抗議声明(会場で配布)を出した。患者会41団体も連名で抗議声明を出しているし、日本医学会の高久史麿会長も抗議声明をMRICに掲載(会場で配布)している。記事の中で一番困ったのは『知らせるべきなのに知らせなかった』と』書かれたことで、グループは皆で情報共有していたし何カ月も前に十分に討論してきたことだった。東大医科研病院の臨床研究はワクチンも違うし、出血もワクチンとは関係ない。そのようなことを記者には何度も書簡で返事しているのに、あのように書かれてしまった。私どもが一番恐れるのは、患者さんに誤った理解が広がること。これから使っていただきたいと夜も寝ないで研究してきた方々にとってはマズいことだし、せっかく使っていただきたいと思って使えるかもしれない患者さんたちが離れるのは悲しい。この記事を見過ごすわけにはいかないので、きちんと正しい知識を皆さんにお知らせしたいと、緊急に全国でがんワクチンの臨床研究をやっている方々、全員ではないけれど選りすぐって来ていただいた」

その後で、河上裕・日本がん免疫学会総務理事が、「がんワクチンの総論と世界の現状」を解説。

さらに、実際にがんワクチンを臨床で使用している全国の医師のうち以下の5人が、それぞれのタイトルでそれぞれの研究の報告をした。淡々と科学的に正確に説明しようとする姿勢が印象的だった。
    中面哲也(国立がん研究センター東病院)
     「国立がん研究センターにおけるがんペプチドワクチン療法臨床試験の経験から」
    岡芳弘(大阪大学)
     「WT1ペプチドワクチン治療の現況」
    笹田哲朗(久留米大学)
     「テーラーメイドがんペプチドワクチンの現状」
    奥野清隆(近畿大学)
     「極度の進行・再発大腸がんに対するがんペプチドワクチン療法」
    影山慎一(三重大学)
     「タンパクがんワクチン-これまでの経験とこれから-」

5人の話を聴き、正直「そんなに実績があるのか」と驚いた。解説や発表の内容を知りたいという方は多いだろうし、お知らせできるとよいには違いないのだが、かなり専門的な内容でとてもではないがメモを取りきれなかったのと、不正確なことを書いてもマズいので、そこは学会自ら広報するということに期待して、第3部の「患者さんからの要望と討論」の部分を簡単に再現する。

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