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免疫きほんのき 3


進化してきた排除法。
 次に、NK細胞はどうでしょう。リンパ球としては例外的に食細胞と同じく自然免疫を担ってはいますが、攻撃方法はちょっと進化しました。標的となった細胞に取りつくと、自身の内部をたんぱく質のツブツブが移動していき、まるで銃弾を浴びせたように相手の膜に穴を開けます。そこからツブツブに含まれる別の成分が入りこんで、それが相手を自殺に追い込むように作用するのです。
 獲得免疫の排除担当の一つ、キラーT細胞も、主にこの方法をとっています。リンパ球としては進化の先達であるNK細胞の殺傷方法を継承しているようです。どちらも名のとおり、まさに「キラー」ですね。なお、このように、キラーT細胞に排除が委ねられる獲得免疫を「細胞性免疫」とよんでいます。

抗体の登場

(本文)
 一方、獲得免疫でも、非自己の情報がマクロファージ→ヘルパーT細胞→B細胞と伝達され、B細胞による排除が行われるものがありました。その排除方法こそが革命的。皆さんもどこかで耳にしたことがあるかもしれませんが、「抗原抗体反応」といって、B細胞が「抗体」とよばれるたんぱく質をつくり出し、相手である「抗原」(獲得免疫系を発動させる非自己=病原体等を特にそうよびます)に向かって放出、結合させてその働きを抑えてしまうものです。働きを封じ込められた抗原は、好中球やマクロファージなどの食細胞が平らげてきれいにしてしまいます。
 というわけで、それまでの免疫細胞の場合は自身が標的にくっつくところから排除が始まっていましたが、抗体はいわば飛び道具。しかも、抗原ごとに異なる抗体をあてがい、2度目の侵入時にはすみやかにその抗原に対応した抗体だけ量産できるようになっています(抗原特異的)。効率的かつ確実に非自己を排除できる方法を、発明したというわけです。
 このようにB細胞が放つ抗体によって非自己を排除する獲得免疫は、「体液性免疫」として細胞性免疫と区別されています。

抗体の正体 抗体というのは、「抗原に結合する」という機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(Ig)というたんぱく質の分子です。1つのB細胞から1つしかできません。Y字形をしており、上下半分、2つの部分から成り立っています。上半分は抗体ごとに違い、それぞれ特定の抗原にだけ結合します。下半分は5通りの構造体があり、それによって抗体もIgM、IgG、IgEなど5種類に分けられます。上半分はバリエーションを持たせることで、さまざまな非自己に対応できるようになっており、一方、下半分は、非自己に取りついて働きを止めた後に、マクロファージなどの食細胞に処理してもらう際の目印となるのです。
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