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がん⑥ 抗がん剤なぜ効くのか2

副作用と抵抗性の壁を乗り越えて。

 先にも少し触れましたが、ホルモン療法の利点としてよく上げられるのが、副作用が比較的軽いということです。細胞毒系の抗がん剤とは違って、かえって命に関わる事態に陥るような心配はありません。しかし副作用が全くない薬はありませんし、ましてホルモン療法は長期にわたりますから、多かれ少なかれ何らかの有害反応は覚悟しておくべきなのも確かです。
 ホルモン療法では、性ホルモンの分泌や働きを阻害するために、男女とも、更年期障害のような症状が出てきます。具体的には、のぼせやほてり、イライラや躁鬱、関節痛、眠気や頭重感などがあります。加えて女性では生理不順や膣乾燥が見られ、男性では勃起障害が起こります。乳房が女性のように黒ずんで大きくなったり、痛むこともあります。
 更年期障害に似た症状の中でも特に、LH-RHアゴニスト製剤(MAB療法含む)や女性ではアロマターゼ阻害剤などを使用した場合、骨密度の低下が懸念されます。個人差も大きいのですが、半年から1年程度で急激に低下して骨粗しょう症になる人もいます。問題は太ももの骨や背骨を骨折しやすくなること。骨折すると寝たきりになりやすく、肺炎等の合併症も増えて、寿命を縮めかねません。
 一方、抗ホルモン剤は性ホルモンと似たような作用も持っているのが興味深いところ。
 そのせいで治療の効果が下がってしまうこともあれば、コレステロール値を下げたり骨粗しょう症を予防するなど、他のホルモン剤とは全く逆の効用もあったりします。
 その他、女性特有のがんに男性ホルモン製剤を使ったり、男性特有のがんに女性ホルモン製剤を投与する場合、重大な副作用として、稀に血栓症や心臓の障害を起こすことがあります。そのためいずれも使用は減っています。
 こうしたホルモン剤の副作用については、ものによって治療薬もあります。しかし、その治療薬に副作用があることも珍しくありません。例えば勃起障害は飲み薬で治療できますが、心臓が悪い人や血圧が安定しない人が使用すると重篤な副作用の危険もあります。いずれにしても、まずは主治医に相談を。他の薬剤に変更することによって副作用が改善することもあります。副作用が出るからといって勝手に薬をやめることは、もちろんNG。特に飲み薬は規則正しく続けることが大事です。

効かなくなる? でも道はある

 さらにホルモン療法のもう一つの問題が、「ホルモン抵抗性」です。長期間の継続によって、ホルモン剤が効かなくなる時期が訪れるのです。
 ホルモン依存性と非依存性のがん細胞があるという話をしましたが、もともと一つの腫瘍の中にどちらか一方だけが存在しているとはかぎりません。むしろ片方はわずかながら、両者が共存していることがほとんどです。ホルモン療法ではホルモン依存性の細胞が減ることでがんが小さくなりますが、やっかいなのが、わずかに残った非依存性細胞。じわじわ、しだいに増殖してくるのです。当然、そうして成長したがんにはホルモン療法が効きません。
 でも、諦めるのはまだ早い。ホルモン抵抗性に対する治療法も開発されてきています。
 例えば前立腺がんで、MAB療法を続けてきて抵抗性が現れたら抗アンドロゲン薬だけ中止する方法があります。いつの間にか抗アンドロゲン剤自体ががんを増殖させるようになることがあるためです。あるいは、あらかじめ抵抗性を回避するために、ある程度効果が上がったら治療を中断し、がんが大きくなったら治療、というのを繰り返すやり方(間欠的除去療法)もあります。経済的にも優れ、副作用の軽減にもつながります。
 また、ホルモン療法が効かなくなると、貧血、疲労、痛みといったがん特有の症状が現れ、患者のQOL(生活の質)は低下します。原因はがんによる炎症で、それを抑えるのにはステロイド薬治療が有効。そして前立腺がんであれば、最終手段とも言えるのが細胞毒系の抗がん剤。タキサン系抗がん剤の併用療法が多く試みられています。

理解を深め不安を和らげて

 いずれにしても、ホルモン療法も人によって効き目や副作用に差があるもの。そうしたことを正しく理解し、自分の体の変化を把握するようにしてください。ホルモン療法中は気分の落ち込みを経験する方も多く、自分だけがおかしいのではないかとつい不安に駆られがちです。でも、それも薬の副作用だと認識しましょう。少しなりとも気持ちが落ち着き、体の症状が軽くなることもあるようです。
 ホルモン療法は長期間にわたります。生活上の留意点に気をつけ、それ以外は必要以上に力を入れずに、できるだけ普段どおりの生活を送るよう心がけてみてください。

抗ホルモン剤でがんになる?  乳がんによく用いられる抗エストロゲン剤のタモキシフェンは、子宮では女性ホルモンのようにも働くため、子宮筋腫や子宮内膜がんのリスクが高まるとも言われています。といっても、実際には子宮内膜がんが発生する率はごくわずか。乳がんの再発率を抑える効果の方が圧倒的に大きいという研究結果が出ています。それでも定期的に婦人科検診を受けておくと安心です。もし不正出血などがある場合は、すぐに主治医に相談しましょう。
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