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がん医療を拓く④ ふぞろいを狙い撃つ


なぜ染色体は ふぞろいになる?

 なぜ、がんでは、細胞ごとに染色体の数がバラついてしまうのでしょうか。

 広田博士は、「注目すべきは、細胞増殖のまさにその時です」と言います。

細胞分裂の失敗

 細胞増殖では、一つの細胞が分裂して二つになり、しばらく経つと、それぞれがまた分裂します。染色体の数にバラつきが起きるのは、この分裂の時です。

 分裂前の細胞を「母細胞」、分裂後の二つの細胞は「娘細胞」と呼びます。母細胞では分裂の時、染色体すべてが複製されて2セットできます。正常な細胞であれば46対です。これが分裂の時に1セットずつ均等に分配されれば、娘細胞でも母細胞と同じ染色体が維持されるわけです。しかし、均等に分配され損なうと、娘細胞の染色体は母細胞と異なってしまいます。要するに細胞分裂の失敗です。ちなみに、この分裂から分裂までのサイクルを細胞周期と言います。

 母細胞の染色体2セットは、分裂が起こる時までリングのようなもので束ねられ、細胞の真ん中に一列に整列しています。この真ん中の部分に切れ目が入って、細胞は二つに分かれていきます。
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運命の分かれ道

 染色体の両側に、それぞれの娘細胞に導くロープ(微小管と言います)がつながれると、準備完了です。細胞は『染色体を分配する準備ができた』と感知し、分裂を始めます。

 分裂が始まると、一斉に染色体のセットの間が切り離され、その直後に微小管が両側から引っ張ります。

「この時、染色体のセット間の糊を切断する『セパレース』と呼ばれる酵素がしっかり働かなかったり、微小管がきちんと引っ張らなかったりすると、分配異常を生じてしまうのです」

 分配異常があまりにも大きい場合、その娘細胞は死んでしまいますが、「軽度の分配異常であれば、その細胞はそのまま生き残り、その後も増殖を続けます」と広田博士。

 そうやって染色体数が46本(23対)でない細胞が次々に生まれ、増え続けるのが、がんということになります。

「がん細胞の分裂を観察すると、5回に1回くらいの割合で染色体分配の異常が起きています。がんの『不均一性』は、そうやって生み出されているということです」

 セパレースや微小管の働きが、がんの発生に影響しているらしいことは分かりました。では、どのような時にセパレースや微小管の働きがおかしくなるのでしょう。

 最近、このセパレースに関して、広田博士の研究チームが注目すべき報告を行いました。

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