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ニュース〜医療の今がわかる

医療事故調を巡る随想

『ロハス・メディカル』は患者と医療者の懸け橋をめざしています。


今回の医療事故調の議論を巡って
一部の患者被害者の方々と一部の医療者の方々との感情対立が
抜き差しならないところへ入りつつあるのを知り、途方にくれています。
私は、どちらも善意に基づいて行動していることを知っています。
しかし双方、正しさを主張すればするほどズレが大きくなります。


厚労省から第三次試案が出されたことで決着の時が近づいているようです。
しかしながら
このままだと、どのように決着したとしても必ず恨みが残るでしょう。
それで良いのでしょうか。

少々乱暴ですが両者の最も中核となる主張を端的に表現すると
患者さん側は
「事故があった時に隠すな、嘘をつくな、誠実に対応してほしい」。
医療者側は
「医療者が安心してベストを尽くせるようにしてほしい」です。


真っ向から正反対の主張をしているのでないことが分かります。
むしろ、正直者がバカを見ないようにすれば、両方満たされます。
正直者がバカを見ないと確信できる仕組みなら
こんなに話がややこしくなるはずはないのです。


問題は
正直者がバカを見ない世の中などというものが存在したことがあるか。
それを国の制度として担保できた例があったか、ということ。
事例をご存じの方がいらしたら、ぜひ教えてください。
厚生労働省にも教えてあげればいいと思います。
それで一件落着です。


今回、ここまで話がこじれてしまったのは
正直者がバカを見ないとお互い確信を持てないまま
組織を作るという話だけが進んだからだと思います。


話は変わります。
患者も医療者も、ともに有限の生を生きる、神ならぬ身の人間です。
患者という種類の人間がいるのではなく
たまたま病を得た人間が患者になるのであり
医療者という種類の人間がいるのではなく
役割を引き受けた人間が医療者になるのです。


そして医療者の役割は
今の日本で単にお金を得る手段として考えたなら
とてつもなくシンドくて割に合わないと思います。
(正直、やってみろと言われたら、間違いなくお断わりします)
でも、自分の意思で人様のお役に立つという「自らの真善美」の充足感が
何物にも代えがたいから
大勢の医療者がなお現場で踏みとどまっているのだと思います。
邪心まみれの人が皆無ではないでしょうけれど
日本の中で見れば奇跡的に正直者が多い業界だと思います。
新聞記者として世の中を斜に見る癖のついていた自分が
「いい人」の多さに感動してロハス・メディカルを作っているくらいです。


ですから患者さんたちにお願いしたいのは
どうか医療者の中の正直者、まじめにやっている人を信じていただき
彼らがバカを見ないようにしていただきたいということ。
今回、皆さんと感情対立を起こしている方々と
よく話し合っていただけないでしょうか。


そして、医療者に申し上げたいのは
「自分は正直です」という人はあまり信用ならないのですが
少なくとも疑いをかけられていることに対して
頭ごなしに否定することなく誠実に説明してほしいし
何より、患者さんを誹謗中傷したり
言い負かして悦にいったりしないでほしい、こう切に願います。
そういうことをすればするほど感情対立が大きくなります。


恨みを残したままになるのか
解消して新しい医療の形をつくれるか
ピンチでありチャンスでもあると思います。

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