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ニュース:カテゴリー「医療/患者・国民」の記事一覧

 予防接種法改正案の国会審議入りを受け、「VPDを知って、子どもを守ろうの会」など7団体は連名で、厚生労働委員会所属の国会議員に対し要請書を送付しました。政府提出の法案では定期接種化が盛り込まれなかった子ども向け4ワクチン(水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、ロタウイルス)を定期接種化するよう求めるものです。

 市民8団体が共同で『VPD(ワクチンで防げる病気)から子どもたちを守るための予防接種法改正に関する要望書』を作成し、30日、厚生労働大臣室で三井辨雄大臣と面会して手渡したそうです。(川口恭)

 この8団体は、「NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会」、「ムコネット Twinkle Days」、「ポリオの会」、「一般社団法人 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」、「+Action for Children」、「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会・支援ネットちば」、「先天性代謝異常症の子どもを守る会」、「胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患 母の会『肝ったママ's』」です。

 要望の内容は①必要な予防接種を国の財源で受けられるような法体系整備②現在は任意接種である、ヒブ・小児用肺炎球菌・HPV・B型肝炎・ロタ・おたふくかぜ・水痘の7種類のワクチンの定期接種化③特にヒブ・小児用肺炎球菌・HPVの3種類に関しては来年度からの定期接種化、の3項目でした。

 詳しくは、「+Action for Children」高畑紀一代表の報告をご覧ください。

 医療界の積年の懸案事項である控除対象外消費税の問題が、政府の税制調査会で議論されることが分かった。この問題に取り組んできた梅村聡参院議員(民主)が今日、大阪市内で開いた国政報告会で初めて明らかにした。(熊田梨恵)

 本日、野田内閣の不信任決議案と問責決議案が衆参両院に提出されたようです。以下に公開する記事は、9月号(8月20日発行)に掲載するものですが、このまま解散総選挙になったとすると、大変にピントのボケた記事になってしまう可能性もあることから、一足先にwebで公開いたします。各党の振る舞いを評価する上でも、面白い視座を与えてくれるのでないかと考えます。(川口恭)

都心ワクチンデモ3

ワクチンパレード.JPG 『希望するすべての子どもにワクチンを!』パレードが6日行われ、患者団体関係者や医療従事者など計100人弱が、蒸し暑い昼過ぎに都心を六本木から日比谷公園まで1時間ほどかけて歩いた。この催しは、2年前から毎年行われており、今回が3回目。(川口恭)

kyusyu1.JPG この度、ロハス・メディカルの九州版『九州メディカル』を創刊いたしました。九州大学先端医療イノベーションセンターとのコラボで、隔月1万5千部からのスタートです。
 最初の主な配置先は、県と地域のがん診療連携拠点病院や九州大学の関連病院です。無料での配置の基準は、首都圏版と同様、原則200床以上の医療機関となります。無料での配置をご希望される医療機関の方は、院内で意思決定の後、こちらまでご連絡ください。50冊単位でお届けいたします。

3月20日発行の4月号に掲載の記事ですが、文中に出てくる『誤答弁騒動』が本当に『誤答弁』として処理されてしまったようなので、暗澹たる気持ちで先行公開します。

79-2-1.JPG専門家の意見と厚労省案をキーグラフ®比較
 予防接種法が、専門家たちの2年以上の議論を経て、改正されようとしています。厚生労働省の法改正案が、専門家たちの議論を正しく反映しているか、大澤幸生・東京大学工学系大学院教授にキーグラフ®解析(*)してもらいました。極めて興味深い差異が見つかりました。

きぼう表紙2.JPG 東日本大震災で住まいを失った方々の健康維持のヒントとなるような小冊子『きぼうメディカルみやぎ』の2号目(右の写真は表紙)が完成、13日から配布しています。仙台市に本拠を置く健診機関「杜の都産業保健会」から委嘱を受けて、弊社で制作したものです。今回も費用は、第一三共グループと同社員からの寄付で賄われました。ロハス・メディカル仙台版版元である日本シナジーマネジメント社が仕切り、河北新報社などの協力も得て、宮城県内の全仮設住宅に配布していきます。(川口恭)

都心ワクチンデモ2

2011ワクチンデモ1.JPG10日、『希望するすべての子どもたちにワクチンを』デモが行われ、約100人が六本木・三河台公演から霞ヶ関・日比谷公園までの都心を1時間ほどかけて行進した。このデモは昨年に続いて2回目。代表者らは、この後、小宮山洋子厚生労働大臣と面談し、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンについて、一日も早い定期接種化とそれまでの間の費用助成制度継続を要請する予定。デモの公式サイトはこちら。(川口恭)

長尾氏.jpg 「平穏死できない現実を知ろう」「救急車を呼ぶ意味を考えよう」-。兵庫・尼崎市で在宅医療を続ける長尾和宏氏(日本尊厳死協会関西支部長、長尾クリニック院長)が10月26日、「平穏死の条件」をテーマに神戸市内で講演した。(熊田梨恵)

きぼう表紙.JPG 東日本大震災から半年経ちました。被災された方々を取り巻く環境は依然として厳しいものがあり、健康への影響も心配されます。仙台市に本拠を置く健診機関「杜の都産業保健会」から委嘱を受け、生活環境が激変してしまった方々の健康維持のヒントとなるような小冊子『きぼうメディカルみやぎ』(右の写真は表紙)を制作しました。費用は、第一三共グループと同社員からの寄付で賄われました。ロハス・メディカル仙台版版元である日本シナジーマネジメント社が仕切って、河北新報社や各地のシルバー人材センターの協力も得て、宮城県内すべての仮設住宅に配布していきます。(川口恭)

災害医療について

災害医療資料-02.jpg 「元来、医師不足である地域が被災したことにより、医療需給の一層の逼迫が見られたと認識している」─。今回の震災を機に厚生労働省が打ち出す対策は何か。(新井裕充)

インタビュー NPO法人「つどい場さくらちゃん」理事長・丸尾多重子さん
 
丸尾多重子さん.JPG 介護者同士の交流の場を開く「つどい場さくらちゃん」の丸尾さん自身、約10年の間に両親と兄をみとった経験があります。「介護者が笑顔になることで本人も元気になる」と介護家族の支援を続ける丸尾さんに、「なぜ今の社会で介護するとこんなに大変になってしまったのだろう」と聞いてみました。(熊田梨恵)

栗栖さん.jpg
 少々アップが遅くなりましたが、「それゆけ!メディカル」4月25日号表紙を飾って下さった介護家族の方へのインタビュー、最後は栗栖典子さん(48歳)です。栗栖さんは、昨年10月にアルツハイマー型認知症とパーキンソン病だった義母の幸子さん(享年85歳)を自宅で看取りました。幸子さんは有料老人ホームに入所していましたが、栗栖さんは施設の介護内容に納得がいかず、在宅で介護することを決意。約1年半の在宅介護を経て、幸子さんは栗栖さんや息子、栗栖さんの母、栗栖さんの友人、在宅医や訪問看護師など親しい人たちに囲まれて亡くなりました。栗栖さんは、「介護を安全に綺麗に楽しく頑張る、なんてことはできません。危険も苦労もあります。相手に対して何を尊重するかが大事ではないでしょうか」と話します。(熊田梨恵)

有岡さん.JPG
3回目は、認知症の母親の富子さん(95歳)と二人で暮らしながら11年にわたり介護を続けている有岡陽子さん(61歳)。次々と出てくる富子さんの症状に有岡さんは一人で悩み続けましたが、介護者同士の集まる場に参加してからは「今が一番幸せ」と語るほどに。有岡さんの話には介護者を心身ともに支援していくためのヒントが詰まっていました。(熊田梨恵)

板垣明美さん.JPG

 2回目は、14年にわたって脳出血の後遺症のある夫の繁治さん(68歳)を介護してきた板垣明美さん(64歳)。繁治さんは一時寝た切り状態で、医師からも起き上がれる状態以上に回復することは難しいと言われた上、リハビリ病棟には180日間という入院制限がありました。あきらめなかった板垣さんは様々な情報を得て在宅で繁治さんのリハビリを続け、繁治さんは自力で立とうとするほどに回復しました。板垣さんは「退院後も地域で個人に合った慢性期リハビリを受けられるようにしてほしい」と話します。(熊田梨恵)

それゆけ!5月号表紙.JPG
 
 「ロハス・メディカル」関西版の「それゆけ!メディカル」4月25日号の表紙写真は、兵庫県西宮市で在宅介護をされている4人の方にご登場いただいています。在宅で認知症の家族を介護することへの思いや悩みなどについて、皆様に伺ったお話をお届けします。(熊田梨恵)


 国立がん研究センターの嘉山孝正理事長ら幹部職員は14日会見を開き、福島第一原発事故に関連して2つの提案を発表した。一つは前回会見の際に提言した「 原子炉での作業が予定されるなど、被ばくの可能性がある方々については、造血機能の低下のリスクがあるため、事前に自己末梢血幹細胞を保存しておくこと」を「被ばく線量が250ミリシーベルト以下での職場環境が保たれない場合は、自己の末梢血幹細胞を保存しておくこと」と訂正するもので、もう一つは原発周辺の住民を対象に、定期的な健康診断と被ばく線量測定を行うよう国に提言するというもの。(川口恭)

DSC_0117.JPG 東日本大震災による津波で自宅を失い、兵庫県尼崎市で避難生活を続けている新妻清茂さん(福島県いわき市、80)は、「避難してから一度も戻れていないので、流されてしまった自宅がどうなっているか一度自分の目で見たいです。ここで避難生活を続けながら行き来して、あちらの様子を見ながらゆっくり復旧や、今後の生活を考えていけたらと思いますが、移動にお金がかかってしまうので難しいです」と話した。(熊田梨恵)

68-2-1.JPG 東日本大震災関連の『ロハス・メディカル』5月号記事。今度は各版共通に掲載するものです。零細メディアゆえ機動力に欠けるという点は忸怩たるものがありますが、その分、少し俯瞰して理解する助けにはなると思います。実は、意外と分かってなかったことが多いのではないでしょうか。
(ここから)
 東日本大震災によって引き起こされた福島第一原発の事故は、にわかに放射線への恐怖を高めました。マスメディアによる報道も、派手に大量に流れた割にはよく分からないものが多くて、無用のパニックを呼びました。そもそも、放射線は医療の世界で有効に使われているものでもあります。原発のことはさておき、医学的な基礎知識を整理してみましょう。
監修/西尾正道 北海道がんセンター院長

satoshieye2.JPG『ロハス・メディカル』でも、5月号で東日本大震災関連の記事をいくつか掲載することにしております。雑誌の発行前ながら前倒しで掲載できるものは、どんどん掲載していきますので、ご活用いただけましたら幸いです。まずは、関西版『それゆけ!メディカル』限定コンテンツ、『梅村聡の目』です。

 国立がん研究センターの嘉山孝正理事長ら幹部職員は28日に記者会見を開き、福島第一原発から飛散している放射性物質によって、どの程度の発がんリスクが発生していると考えられるか見解を発表した。「原子炉において作業を行っている方々を除けば、ほとんど問題がないといえる」という。(川口恭)

 ロハス・メディカル関西版「それゆけ!メディカル」の創刊に向け、実家のある兵庫県北部の豊岡市に引っ越してまいりました。豊岡市は人口約9万人、高齢化率27%(2011年2月現在)という少子高齢化の進む農村地域ではありますが、患者のための医療を目指して国内からも注目を集める活動を行っていることを知り、私自身も驚いています。豊岡の医療について、随時お届けしていきたいと思います。(熊田梨恵)

交流会.JPG 公立豊岡病院日高医療センターの豊岡アイセンター(倉員敏明センター長、23床)で3月21日、視覚障害のある患者同士の交流や情報交換のための院内サロン「すまいる会」が開かれ、地域の患者や家族、医療関係者ら約70人が参加した。視覚障害者のための院内サロン活動は国内でもめずらしく、よりよく見えるように支援するロービジョンケアや福祉制度についても学んだ。会の運営を担った一人の矢坂幸枝医師は「今までは患者さんに何もできなかった時に罪悪感がありましたけど、患者さんにロービジョンケアを紹介することで安心してもらえるので、私たちも自信を持って患者さんと話せます。この会やロービジョンケアがあると医療者も安心して患者に接することができるので、医療者も救われるのです」と話した。

110130nisio.jpg がんの「夢の治療」としてメディアなどで取り上げられることの多い粒子線治療について、専門家の口から「これ以上もう要らない」という言葉が飛び出した。30日、都内で開かれた市民講演会『医療改革の新地平』(主催・市民のためのがん治療の会)に登壇した西尾正道・北海道がんセンター長が会場からの質問に答えて述べた。皆さんに共有していただいて損はないと思うので、その発言の当該部分を採録する。(川口恭)

 昨日発足した内閣官房・医療イノベーション推進室の中村祐輔室長には、ロハス・メディカル誌2010年1月号から12月号まで『あなたにオーダーメイド医療を』というコーナーの連載をしていただきました。これまで、このコーナーの文章はweb公開していませんでしたが、ちょうどよい機会なので1日1本ずつ公開していきます。

(2010年1月号掲載)

「地域」って、何?

12月21日の中医協慢性期分科会.jpg 「地域医療」「地域連携」「地域特性」......。医療記事を書く際に何気なく使っている「地域」という言葉だが、具体的にどこからどこまでが「地域」なのか分からない。医療における「地域」って何だろう?(新井裕充)

 がん診療の均てん化を推進する目的で、東北6県の病院が連携・組織している『東北がんネットワーク』の放射線治療専門委員会が、IMRT(強度変調放射線治療)など特殊な放射線治療をどの病院で受けることが可能で、アクセスするにはどうすればよいか一目で分かるサイトを構築した。(川口恭)

101128sarcoma.jpg 先日もご案内した通り、『日本に「サルコーマセンターを設立する会」』の第2回シンポジウムが28日、国立がん研究センター内にある国際会議場で開かれ、70人ほどが集まりました。この中で、吉野ゆりえ代表は、米国MDアンダーソンがんセンター内のサルコーマセンターを視察してきた結果を報告しました。(川口恭)

101125polio.JPG ポリオ発症の危険がある生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えを求めて署名活動を行っているポリオの会が25日、国会内で民主党に陳情を行った。会側が、国産不活化ワクチンの開発承認が済むまでの間、緊急輸入することを求めたのに対して、窓口として陳情を受けた柚木道義代議士と相原久美子参院議員は、前向きな対応を約束した。(川口恭)

11月13・14日に開催された『現場からの医療改革推進協議会』は今年で5回目を迎え、例年通り多士済々によるプレゼンテーションが繰り広げられた。大変勉強になったので、全部ご紹介したいのはヤマヤマだが、膨大な量になるので興味のある方はユーチューブでご覧いただきたい。ここでは、目からウロコの落ちる思いがした宮台真司氏の講演をご紹介することにする。(川口恭)

101113.JPG 命があることの意味を中学生に考えてもらおうという『ロハス・メディカル』の『いのちの授業』を13日、東京都小金井市の小金井東中学校にお邪魔して開催しました。がん患者と医師が、全校生徒300人弱と保護者約30人を前に、休憩を挟んで1時間半ほど自らの体験や医療の役割などを語りました。(川口恭)

首都圏が台風に直撃された30日、日本がん免疫学会の緊急シンポジウム『がんワクチン治療の現状と臨床』を聴講してきた。急な開催で、しかも悪天候だったにも関わらず200人入る会場は9割方埋まり、いかに患者さんたちの関心が高いかを改めて痛感した。簡単に再現する。(川口恭)

101016simpo.JPG 朝日新聞による東大医科研ペプチドワクチン臨床研究報道で、がん患者さんとがんに携わる医療者たちが騒然とする中、その医科研で16日に『シンポジウム がん医療と介護-親のための準備、何したらいいの?誰に相談したらいいの?』というものが開催された。軽い気持ちで覗いて来たら、あまり来場者は多くなかったものの、予想以上に面白かったので簡単に再現したい。(川口恭)

鈴木康裕・医療課長1015.jpg 「救急に従事する医師等の範囲は不明確」─。深夜の救急患者に対応する当直などで勤務医の疲弊が叫ばれる中、厚生労働省が出した答えは「救急医療の調査は難しい」だった。中医協委員から反対意見は出なかった。(新井裕充)

100820murashige.JPG100820kumada.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく好評のシリーズ。今回は手前味噌ながら『救児の人々』が大変話題になった本誌論説委員の熊田梨恵がお相手させていただきました。村重氏も、話題沸騰の『さらば厚労省』を出したばかりのタイミングだったため、途中から主客転倒して熊田によるインタビューになっているところはご愛嬌。上下2回に分けてお楽しみいただければ幸いです。(担当・構成 川口恭)

都心ワクチンデモ

101014vacdemo1.JPG 14日、『希望するすべての子どもにワクチンを!」デモが行われ、賛同した各団体などから集まった約120人が都心の六本木から霞ヶ関まで1時間ほどかけて行進した。歩き始めた当初はシュピレヒコールもバラバラで不慣れな様子がありありと見られたが、徐々に整い出し、報道陣が20人ほど周りをウロウロしていたこともあって、かなり目立った。通行人らは呆気に取られたように眺めたり、写真を撮ったりしていた。(川口恭)

嘉山孝正理事長(右)、大久保満男会長.jpg がん患者が抱えやすい口腔内トラブルを解消してがん治療の質を高めるため、国立がん研究センター(嘉山孝正理事長)と日本歯科医師会(大久保満男会長)は31日、がんに関する講習を受けた歯科医が同センターから紹介を受けて患者の歯科治療に当たる医療連携を始めると発表した。当面は手術を受ける関東圏の患者約4000人を対象に始める予定で、各地域のがん診療連携拠点病院による全国展開も視野に入れている。(熊田梨恵)

anada.jpg 子宮頸がん予防ワクチンの接種に適した年代の子供達への普及啓発を図るため、癌研究会は30日、中高生向けの公開講座を癌研有明病院(東京都江東区)で開いた。患者会の穴田佐和子代表は、抗がん剤の副作用による苦しみだけでなく、「女性という『性』を失うというメンタルな面」でのつらさも抱えるとして、子宮を摘出して子供が産めなくなったことなどから交際相手と別れたり、出産を諦めたりする女性もいると語った。(熊田梨恵)

 子どもの死亡率の低下は、子どもを亡くす親の数が減るという事も意味するため、悲嘆の気持を共有できる機会も減る。近年まで「不治の病」と言われた小児がんの治療が飛躍的な進歩を遂げる一方で、子どもや親を取り巻く状況も変わりつつあるようだ。聖路加国際病院の細谷亮太副院長(小児総合医療センター長)が24日、中野在宅ケア研究会(東京・中野区)で講演した。(熊田梨恵)

 ロハス・メディカル誌9月号には、創刊丸5年を記念した特別企画として、日本慢性疾患セルフマネジメント協会のご協力のもと、患者さん50人に普段医療者には言えない本音を教えていただくアンケートを実施し、その回答を掲載しています(P16~19)。質問項目の中に「主治医と仲良しですか」というのがあり、その自由記述が非常に面白かったので、患者さんの個人情報は一切削除したうえで全員分をご紹介します。(川口恭)

100723honda.JPG100723murasi.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく好評のシリーズも12人目になりました。お相手は、国立国際医療研究センター病院でHIV診療などを担当している本田美和子医長。本田医師は、患者自身が自らの記録を付けていく大人版母子手帳のような『ほぼ日の健康手帳』を考案しました。なお今回は、初めて誌面とも連動します。webにはいつものように対談の全文を2回に分けて、誌面の方にも抜粋したエッセンスを9月号のP12~14に掲載します。(担当・構成 川口恭)

 森臨太郎氏(東大大学院医学系研究科国際保健政策学准教授)インタビューの最終回です。国民全体の医療を向上させるには、先端医療の開発よりも今ある医療を標準化し、底上げすることが必要と伺いました。今年度から始まった戦略研究で、森氏は実際に標準医療の底上げに取り組み始めています。(熊田梨恵)

 森臨太郎氏(東大大学院医学系研究科国際保健政策学准教授)インタビューの第2回です(前回はこちら)。今回は、このガイドラインの作成過程に関する考え方が医療政策全体に通じるというお話を伺いました。エビデンスの取りまとめや納税者の視点に立った費用対効果分析、医療者と患者の情報交流にもつながる総意形成手法といった部分にポイントがありそうです。(熊田梨恵)

森臨太郎先生.jpgインタビュー
森臨太郎氏
(東大大学院医学系研究科国際保健政策学准教授)

 日本未熟児新生児学会が先ごろ公表した『未熟児動脈管開存症のガイドライン』は、患者家族の参加や、総意形成と根拠の検証へのこだわりなど、今後の日本のガイドラインの在り方に一石を投じるものになりそうです。背景には、英国政府組織でガイドライン作りに携わってきた森臨太郎氏による、ガイドライン作成過程の計画がありました。森氏に取材すると、日本のガイドラインの問題点は医療政策の問題構造に通じているという興味深い話を聞くことができました。3回の連載でお届けします。(熊田梨恵)

 医療上の必要性が高く、欧米で使われていながら国内では使えない医薬品を早く使えるようにしようという検討会『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議』の第4回会議が3日開かれた。ワルファリンカリウムの小児への適応拡大、シクロフォスファミド水和物の全身性血管炎・全身性エリテマトーデス・多発性血管炎・ウェゲナー肉芽腫症への適応拡大、ゲムシタビン塩酸塩の卵巣がんへの適応拡大などが治験なしの公知申請で認められることになった。(川口恭)

100602murasgie.JPG100602sonobe.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく好評のシリーズ。いよいよ3クール目に入りました。今回のお相手は、日本赤十字社医療センター(日赤広尾)小児科顧問でもある薗部友良『VPDを知って子供を守ろうの会』代表です。日本のワクチンを取り巻く環境についてお話いただきました。今回も3回に分けてお伝えします。(川口恭)

100725discussion.JPG 7月25日午後、東京・有明の癌研究会で<癌研オープンアカデミー『日本のがん医療の未来を考える』>が開かれた。冒頭に野田哲生・研究所長が「がん治療・研究に関するあらゆるステークホルダーが集まって一緒に話をしようという趣旨」と説明したように、医療者はもちろん、患者、政策担当者、企業人、メディア人など150人あまりが集まり、歯に衣着せぬ活発な議論が行われた。今までにないほど率直な議論ができた時に皮肉にも見えてきたのは、隠れた最大のステークホルダーである「医療費を払ってくれる健康な人々」が、その場にいないということだった。(川口恭)

 日本未熟児新生児学会(戸苅創会長)が、このほど『未熟児動脈管開存症ガイドライン』を作成・公表した。治療法などに関する33項目の推奨レベルを決定する際、すべての項目で患者家族とコメディカルの意見を取り入れた。参加した患者家族は、「ガイドライン作成過程が患者家族にオープンにされたことに意義があったと思います」と振り返る。この策定プロセスが広がれば、医療者と患者間にある知識や認識の違いを緩和する一歩になるのかもしれない。(熊田梨恵)

100718syuumatuki.JPG  3連休ど真ん中だった7月19日午後、都内で『市民と医療を考える1-川崎協同病院事件から医と法を考える』というシンポジウムが開かれた。自分や家族の死が避けられない状況になった時、私たちは医療にどこまで求めるのか。直球ど真ん中の問題を考える会になった。(川口恭)

100721tinzyou1.JPG 子宮頸がんワクチン接種への公費助成を求めて21日、毛色のかなり異なる23団体が合同で、長妻昭厚生労働大臣に要望書を提出した。5万2千筆あまりの署名も添えた。各団体の代表や付き添いが顔を揃えた結果、30人を超える大陳情団が大臣室を埋め尽くすことになり、熱気を目の当たりにした長妻大臣も「比較的前向きな答え」(同行の小宮山洋子代議士)をした。(川口恭)

7月16日のDPC評価分科会3.jpg 「医療の質」を判断する基準は患者満足度か、臨床研究の充実度か、それとも役人の方針に従うことか。「医療の質」の意味が不明確なまま、厚生労働省はすべての医療機関が目指すべき方向性として「医療の質の向上」を声高に掲げているが、調査手法はいまだ見えない。(新井裕充)

 70の患者団体が連名で13日、がんの適応外医薬品への保険支払いを認める方向で検討するよう求める要望書を、厚生労働大臣など宛に提出した。適応外使用の問題を巡っては、かつて日本医師会の力が強かった時代に、医師の臨床上の判断を尊重し支払いを認めるとした『55年通知』が厚生省から出されているが、最近では有名無実化しつつある。代わって今年から『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議』が設置され、適応拡大後の保険適応という手続きの、時間や費用のかかる道へ誘導されている。(川口恭)

100629murasige1.JPG100629yuji.JPG さる6月28日晩、周産期医療の崩壊をくい止める会代表の佐藤章・福島県立医大名誉教授(このページの下部もご覧ください)が逝去されました。『村重直子の眼』では小山万里子・ポリオの会代表の記事を配信途中ではありますが、緊急追悼企画として周産期医療の崩壊をくい止める会の活動などで米国内科学会から表彰された湯地晃一郎・東大医科研助教との対談が昨日設定されていたため、それを緊急掲載いたします。(川口恭)

100512koyama.JPG100512murasige.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していくシリーズ。今回のお相手は、ポリオの会代表の小山万里子氏です。ほとんどの人が、「そんな話知らなかった。本当なの?」と思うであろう話の連続です。ことポリオに関する限り、厚生労働省の予防接種行政は、犯罪的なのでないかという気にすらなってきます。今回も3回に分けてお伝えします。(川口恭)

6月23日の中医協.jpg 厚生労働省は6月23日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)の薬価専門部会と総会を開催した。海外で承認されている薬が国内で使えない「ドラッグ・ラグ」や、大型製品の特許が切れる「2010年問題」などについて議論、医師の処方権を保障した「55年通知」による弾力的な運用などが争点となった。(新井裕充)

 国が昨年度から実施している、119番で救急車を呼ぶべきか判断に困った患者からの電話相談を受ける救急電話相談のモデル事業が、総務省内の「事業仕分け」で「廃止」と判定された。実際に廃止されるかどうかは選挙後の政務判断に任されているが、もしそうなれば国が描く今後の搬送体制の構築に大きく影響する可能性もある。(熊田梨恵)

100604sakata.JPG100604murasige.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していくシリーズ。7日に最終報告書が公表されたばかりの『薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班』で、薬害被害者として自ら分担研究者となり、大変な苦労の末に厚生省の不作為を明らかにした坂田和江氏に、あの報告書が出てくるまでにどんなことがあったか話してもらいました。3回に分けてお伝えします。(担当・構成 川口恭)

 厚生労働省の『薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班』の最終報告書が7日、公開された。1986年から87年にかけて青森県三沢市で発生した集団感染で、医師は、ある時期を境に肝炎感染率100%の非加熱フィブリノゲン製剤ロットが出現していることを厚生省に文書で報告していたが、その文書は担当者レベルで止まっており、課長も血液製剤評価委員らも見ていなかったことが指摘されている。結果として、非加熱フィブリノゲン製剤が自主回収に留まって全国で使い続けられ、また感染性を保ったままの加熱製剤が承認され被害を拡大する遠因ともなった。(川口恭)

提出.jpg 子宮頸がん予防のワクチン接種に関する普及活動などを行う12の市民団体や学会らは28日、ワクチン接種の公費助成を求める要望書を民主党の小沢一郎幹事長宛に提出した。申し入れを受けた今野東副幹事長は子ども手当を使った助成も検討しているとして、前向きな姿勢を示した。(熊田梨恵)

 今月18日にヒトゲノム国際機構からチェン賞を授与され帰国したばかりの中村祐輔・東大医科研ヒトゲノム解析センター長は、最近、外国へ行く度に憂国の念を抱いて帰ってくることが続いているそうです。何が問題なのか、どうすればよいのか、聴きました。(聴き手・川口恭)

厚労省企画官をただす齊藤委員0519.jpg 抗がん剤など高額な薬剤を使用した場合にDPC(包括払い)では不採算になってしまう問題について厚生労働省は5月19日、卵巣がんに関する5つの診断群分類を出来高算定とする対応案を中医協の分科会に示し、了承された。しかし、高額薬剤の使用に伴う不採算への対応について、従来の方針を変更して出来高算定としたわけではない。(新井裕充)

100425huusen.JPG 関連ワクチンの定期接種化を求めて活動している『細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会』(田中美紀代表)が世界髄膜炎デーの25日、千葉県のJR京葉線・南船橋の駅前で「髄膜炎でお空に旅立ったエンジェルたちにメッセージを!」と題して啓発イベントを行った。NHKの取材も来ていた。(川口恭)


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 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していきます。4人目は、重大なラグを生んでいるワクチン行政に、患者の立場から異議申し立てをしている高畑紀一・細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長です。同会は先月23日に国会請願活動を展開したばかりです。(担当・構成 川口恭)

100402murasige.JPG100402matsumura.JPG 元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく、そんな企画に登場する2人目は、『周産期医療の崩壊をくい止める会』の事務局役として、福島県立大野病院事件の被告医師支援と、それに続く出産時死亡妊産婦の遺族支援という他に類を見ないユニークな活動に関して、実務を担当し続けている松村有子・東大医科研特任助教だ。(担当・構成 川口恭)

 医療上の必要性が高く、欧米で使われていながら国内では使えない医薬品を早く使えるようにしようという検討会『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議』(委員名簿はこちら)の2回目会合が31日開かれた。約50日ぶりの開催とあって、どのような進展があったのか満場の傍聴人が見守ったが、何のために手間をかけてやっているのか分からなくなる本末転倒な議論が随所で展開された。特に、保険局が医薬食品局を弾除けに使っていて、それが話をややこしくしていると分かるやりとりをご紹介する。(川口恭)

 一昨年5月以来23回を数えた厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』が30日終わった。報告書の中で「薬害」をどう定義するのかなど、最終回も予定を1時間超えて熱心な議論が繰り広げられ、最終報告書がまとまるまでには、さらに委員の中でメールベースの議論がありそうだ。(川口恭)

100326adr.JPG 医療に関して裁判外の紛争解決(ADR)機関を運営している関係者を一堂に集めた厚生労働省主催の連絡調整会議が26日開催された。動きの止まっている医療事故調構想との関係にも注目が集まるが、事務局の趣旨説明は「通常の検討会とは異なり、ここで何かを決めるということより、参加者で認識を共有して自発的に何か始めていただけるならありがたい」と控えめだった。(川口恭)

100324ncc.JPG 国立がんセンター中央病院の土屋了介院長が24日、自ら主催した勉強会の席で、定年まで1年を残して4月1日付で辞職し、癌研究会顧問になることを明らかにした。厚生労働省の役人から辞めさせられる(勧奨退職)のではなく、自ら退く(依願退職)という形にしたために、退職金を数百万円失うという。勉強会には、やはり15日に官職を辞したばかりの村重直子氏とスマイリーの片木美穂代表も登壇。会場も交えて熱い討論を繰り広げた。(川口恭)

100324ncc.JPG 土屋了介・国立がんセンター中央病院院長の主催する勉強会が同センター国際交流会館で24日開かれ、演者として15日に官職を辞した村重直子氏(前・内閣府特命大臣付、元・厚生労働省大臣室政策官)が登場、卵巣がん体験者の会・スマイリーの片木美穂代表も交えて、歯に衣着せぬ討論を繰り広げた。(川口恭)

100323zuimakuen.JPG「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(田中美紀代表)は23日、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化などを求める要望書を長妻昭厚生労働大臣に手渡した。これに先立って衆参議院議長宛にも約4万筆の署名を添えて同様の請願を行った。同会による国会や厚生労働省に対する請願はこれで4回目で、集めた署名は計20万筆になる。(川口恭)

 全国でも指折りの医師不足に悩む千葉県の有志が、13日に行われた医療構想千葉(竜崇正代表)のシンポジウムをきっかけに『地域の医師を増やす市民の会・千葉事務局』(田口空一郎代表)を発足させた。お題目ではない具体的な医師不足対策が講じられるよう、今後署名活動などを展開していくという。(川口恭)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第22回会合が8日開かれ、次回まとめる最終提言について討議が行われた。予定を1時間近く超えての議論だったが、「監視評価のための第三者組織」設置の部分以外に関しては、各委員が一通り修文案を言うだけで終わってしまい、最終的にどのように整理されるのか見えないままだった。(川口恭)

 患者・市民と医療者が共に対話の姿勢を持って「メディエーション」の普及に努めていこう、まずは子供たちの周囲にいる人たちから始めよう、という緩やかなネットワーク『産科小児科メディエーション協議会』が7日に設立され、この日に開かれたシンポジウムの席でお披露目された。(川口恭)

 厚生労働科学研究として設置されていた『漢方・鍼灸を活用した日本型医療医療のための調査研究』班会議(黒岩祐治班長=国際医療福祉大大学院教授)は25日、「国民の期待は大きいけれど実状は瀕死という漢方の実態をさらけ出して、どうしたいのか問いたい」(渡辺賢治・慶応義塾大漢方医療センター長)と5項目の提言をまとめ、長妻昭・厚生労働大臣あてに提出した。(川口恭)

改定答申前2012.jpg  約300人分の座席が用意された厚生労働省2階の講堂には、200人を超える一般傍聴者や報道関係者らが集まった。答申書を足立信也・厚生労働大臣政務官に手交した中医協の遠藤久夫会長は「非常に積極的で今までにないような多様な視点からの議論を頂いた」と委員らに感謝の意を表した。(新井裕充)

20100208-0957.jpg 医療上の必要性が高く、欧米で使われていながら国内では使えない医薬品を早く使えるようにしようという検討会『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議』(委員名簿はこちら)の1回目が8日開かれた。突っ込みどころ満載だったので、できるだけ丁寧にご報告する。(川口恭)
*なお、資料がないと意味不明の点も多いと思うので、最低限のものは掲載した。色の変わっているところをクリックすれば読めるようになっている。

公益委員2010.jpg 「重点課題への対応、および外来管理加算の見直しに伴う費用増の予測困難性を鑑みれば、限られた財政枠の下では、診療所の再診料は一定程度下げざるを得ないと判断した。具体的な水準については財政影響を考慮しつつ、69点とする」─。診療所と病院の再診料をめぐる議論は、国民を代表する立場の公益委員の裁定で決着した。(新井裕充)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第21回会合が8日に開かれ、前回、詳細を公開するか否かで揉めたPMDA全職員アンケートの結果が公開された。専門的能力に欠ける厚生労働省からの天下り・出向職員が組織幹部を占めること、行政の判断が優先されて科学的判断が捻じ曲げられることなどへの不満が赤裸々につづられていた。(川口恭)

勝村久司委員(中央)0205.jpg 「散らかっている部屋に他人が入れば綺麗になる」─。医療事故や薬害を防止するため、医療機関が保有する情報をできる限り公開すべきだという考えがある。これに対して、患者のプライバシー保護の観点から、投薬や検査の内容、傷病名などの個人情報が他人に漏れる危険性を指摘する声もある。(新井裕充)

診療側委員0127.jpg 救急患者の受け入れが困難なケースを減らすため厚生労働省は4月の診療報酬改定で、プラス財源のうち約4000億円を救急医療などに投入する方針を示している。全国に約200ある「救命救急センター」の診療報酬が増額されることはほぼ確実とみられるが、問題は二次救急を担う地方の中小病院。厚労省の担当者は、「二次救急はレベルがさまざま」と述べ、一律に評価することを否定している。(新井裕充)

 新年度から積極的勧奨が再開される方針が決まっている日本脳炎ワクチンについて、積極的勧奨が差し控えられた5年間に定期接種対象年齢だったため免疫ををつけ損なった子供たちに経過措置をどう設けるかが27日、厚生労働省の検討会で議論された。しかし結論は出ず、夏以降に再度議論されることになった。(川口恭)

中医協公聴会1.jpg 「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」「訪問看護はボランティア」「医療崩壊を患者自身が痛感している状況は異常」─。4月の診療報酬改定について国民から意見を聴く中医協の公聴会で、福島県内の医師や看護師、患者らが医療現場の窮状を訴えた。(新井裕充)

1月20日の中医協.jpg がんを切らずに治す「重粒子線治療」など保険適用が認められていない先進医療は多額の自己負担金が必要になるため、早期の保険収載を求める声がある。これに対し、「設備のランニングコストが年に40億か50億掛かる」などと反対する意見もある。「普及すると医療費が増える」という考えだが、「普及すればトータルコストは下がる」との声もある。(新井裕充)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第20回会合が29日開かれた。実施する前にもやるかやらないかで鞘当てが行われたPMDA職員アンケート(その後に厚生労働省職員も対象に)に関して、その回答を公開するか否かで、再びほぼ同じ顔ぶれによる言い争いが起きた。(川口恭)

0113hpvvaccin.JPG 昨年末に販売開始された子宮頸がんワクチンがメディアを随分と賑わせていて、何となく自分もそれなりに事情を分かったつもりになっていたが、実際には何も分かっていなかったようだ。13日に国立がんセンター中央病院で開かれたシンポジウムに参加して、そのことを痛感した。(川口恭)

 接種後に因果関係を強く疑わせる急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が発生したことから、予防接種法の定期接種対象に位置付けられながら、05年に厚生労働省課長通知で『積極的勧奨の差し控え』が行われるという訳の分からない状態になっていた日本脳炎ワクチンについて15日、新年度から積極的勧奨を再開する方針が固まった。(川口恭)

 妊婦が新型インフルエンザに感染した場合、合併症を引き起こすなど症状が重くなりやすい傾向がある事を知ってもらおうと、国が昨年末に妊婦向けのパンフレットを作成した。監修に関わった産婦人科の太田寛氏(北里大学医学部助教)は、「妊婦さんたちには、『自分自身が元気でないと、赤ちゃんも元気でいられない』ことを認識してほしい。妊婦がインフルエンザに感染したら、まれにではあるが命を失うこともあるということを知っておいてほしい」と話している。(熊田梨恵)

 16日の『新型インフルエンザワクチンに関する有識者との意見交換会』のなかで、厚生労働省の官僚たちは足立信也政務官や外部専門家から仕事を増やされるのを非常に嫌がっていることと、『有識者』もその意を忖度して動いていることのよく分かるやりとりがあった。人情としては大変よく理解できるのだが、同じように仕事を減らす配慮を前線に対してしているだろうか。(川口恭)

 先月11日の事業仕分けで漢方薬を含む市販品類似薬を保険適用外とする方針が示されたことに対し、日本東洋医学会、NPO健康医療開発機構、日本臨床漢方医会、医療志民の会の4団体が集めていた漢方薬の保険適用継続を求める署名は最終的に92万4808人分に達したという。4団体は前回提出した1日以降の追加分署名を16日、改めて厚生労働省に提出した。(川口恭)

 厚生労働省の『新型インフルエンザワクチンに関する有識者との意見交換会』が16日に開かれ、臨床試験の結果を踏まえて、妊婦と中高生に関してワクチンを2回接種せず1回接種で構わないだろうとの判断が了承された。厚労省では、この判断を受けて同日中に方針を示すという。(川口恭)

 13日に行われた新型インフルエンザワクチンの安全性を議論する検討会に、ワクチンの製造者別、ロット別に副反応の数・割合を出した資料が提出された。委員からは、差がないと判断してよいのだよねと助け舟を出す質問があったが、事務局の回答は奥歯にものが挟まったような歯切れの悪いものだった。(川口恭)

 新型インフルエンザワクチンの安全性について検討する厚生労働省の検討会が13日、開かれた。前回に引き続いて、委員の何名かから疫学的データ解析の必要性を指摘する声が出たが、事務局は何も言及せず、座長も「これまで通りの対応で」と取りまとめてしまった。(川口恭)

 「整形外科医が行う運動器などのリハは年間5600億円。一方で柔道整復師による捻挫などへの施術には3800億円が使われている。これをどう見るか」「柔道整復師への保険給付費が日本の医療統計のどこに入っているのか、何度厚労省に聞いても分からない。正体不明の数字だ」「接骨院も整形外科も、患者にとっては両方に『先生』がいる」―。腫物に触るように扱われ、医療界の"ブラックボックス"とされる柔道整復師の保険請求問題が、にわかにできたばかりの民主党の医療議連で話題に上がった。(熊田梨恵)

12月4日の中医協.jpg すべての病人を救うか、優先順位を付けるか。すべての命を平等に扱うのか、"無意味な延命措置"があると考えるのか。医療サービスに優先順位を付けるなら、「医療費全体の底上げ」は矛盾しないか。平等な医療提供を求めながら、「医療費のメリハリ」を口にするのは矛盾しないか。(新井裕充)

 先月30日に新型インフルエンザワクチンの安全性について検討する厚生労働省の検討会が開かれた。接種後まもなくの高齢者の死亡が相次いでいることに関して、委員からは「ワクチンとは関係ない」という意見が大勢を占めたが、「関係あるとかないとか言えるだけの疫学データが示されていない」と参考人から「待った」がかかり、事務局は研究班に依頼して解析を行うと約束した。(川口恭)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第19回会合が4日開かれ、ひと悶着の末に実施されたPMDA全職員と薬事担当厚生労働職員への匿名アンケートに関して中間報告が行われた。自分たちが俎上に上っているにも関わらず3割近い職員が、この検討会で出された第一次提言のことを知らなかった。(川口恭)

1201kanpouhoken.JPG 先月11日の事業仕分けで漢方薬を含む市販品類似薬を保険適用外とする方針が示されたことに対し、日本東洋医学会、NPO健康医療開発機構、日本臨床漢方医会、医療志民の会の4団体は1日、漢方薬の保険適用継続を求める27万3636人分の署名を、厚生労働省に提出した。対応した外口崇保険局長は「政務三役ともよく相談して、後々に禍根を残さないようにしたい」と述べた。(川口恭)

 鈴木寛・文部科学副大臣は24日、事業仕分けで科学技術研究予算の縮減や廃止が相次いだことに関して、「事業仕分けを国民の75%が支持している。科学コミュニティーの自律が足りず、一般納税者の支持を得る努力、若手研究者の声を聴く努力をサボってきたことのツケが現れた。きちんと現実を受け止め、自分たちのあり方も見直していかなければならない。政治家も反省する」と述べた。

大谷貴子委員1116.jpg 2010年度診療報酬改定の基本方針を審議する社会保障審議会の委員に就任した「全国骨髄バンク推進連絡協議会」の大谷貴子会長は、厚生労働省の原案を「患者の視点に立っていない」と批判した上で、基本方針に「患者の負担軽減」を盛り込むよう求めている。(新井裕充)

西澤寛俊委員(中央)1120.jpg 重症患者を受け入れる「救命救急センター」に軽症・中等症の患者が流れ込む"三次救急の疲弊"を改善するため、厚生労働省は療養病棟の救急受け入れを診療報酬で評価する方針を打ち出したが、病院団体などから反対意見が続出している。(新井裕充)

 行政刷新会議の11日の事業仕分けで、漢方薬が湿布やビタミン剤などと共に保険適用を除外するかどうか検討され、ほとんど議論のないまま全体としては除外する方向でまとまった。まだ漢方薬が保険から外されると決まったわけではないが、関係する医師や患者らが危機感を募らせ署名活動を始めた。(川口恭)

 「基本的な呼吸や脈拍の観察ができていない救急救命士が約4分の1から3分の1程度はいる」-。消防庁が開いた救急医療に関する有識者会議に、救急救命士の観察能力や手技に関する調査が示された。救急振興財団救急救命九州研修所の竹中ゆかり教授は調査について、「呼吸や循環を見るための基本手技が不足しているので、改善のための訓練が必要。教育項目や国家試験ガイドラインなどの根本的な見直しが求められる」と話している。(熊田梨恵)

 今月7日の『現場からの医療改革推進協議会』の中で、ぜひ皆さんに紹介したいなと思いながら、しかしあまりにも発表が早口だったためメモが追いつかずにいたものがある。簡単な文字起こしができてきたので、ご紹介する。発表者は、財務官僚で現在は預金保険機構金融再生部長に出向中の松田学氏だ。医療界の方々が「当然」と思っていることが、本当に当然のことなのか考えてみていただけると幸いだ。(川口恭)

 「混合診療を認めればかなり解決する」「医薬局が公共工事をして本当にラグが解消すると思っているのか。何もしてない保険局を呼んでこないと」。16日に開かれた厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第18回会合は、ドラッグ・ラグ解消を訴えた患者代表の声が呼び水となってか、建前抜きの面白い議論が繰り広げられた。(川口恭)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第18回会合が16日開かれた。対立の構図で語られることの多かった薬害被害者とドラッグ・ラグ被害者とが、「問題の根っこは同じ」という認識を確認しあい、これまでになく建設的な議論が繰り広げられた。(川口恭)

長妻昭厚労相1113.jpg 診療報酬の配分を見直す「事業仕分け」への対応などをめぐって中医協が炎上した。診療側委員は中医協として慎重を求める声明を出すよう主張したが、支払側委員は時期尚早論。診療側委員の「責任を取ってください」との発言に支払側が逆上したところで長妻昭厚生労働相が入室、「激しく、時には優しく議論を活発に」などと挨拶した。(新井裕充)

鈴木委員(左)と嘉山委員1111.jpg 認知症の患者が増加する中、厚生労働省は「認知症疾患医療センター」を中心とする対策を進めようとしているが、まだ全国に51か所しか整備されていない。厚労省は、同センターと地域のかかりつけ医との連携を重視しているが、果たしてうまくいくのだろうか。(新井裕充)

嘉山孝正委員(中央)1106.jpg 「ですから、まさに佐藤君が答えた通りで、今の医療崩壊を招いたのはそこなんですよ。つまり、あなたは『算定した』と言っているけれども、医師の技術料があまりにも低いために医師が立ち去り型になって崩壊したんです」─。新体制3回目の中医協で、嘉山孝正委員(山形大学医学部長)が厚生労働省を質問攻めにした。(新井裕充)

adati110801.JPG 昨日の『現場からの医療改革推進協議会』に登壇した足立信也厚生労働大臣政務官が、6日夜の会見に関して「これだけ重要なデータを出したのに一紙も出てない」とマスメディアに対して憤りを見せた。会見の発言内容は既にお伝え済みだが、グラフをお示ししていなかったので、ここに掲載すると共に昨日の政務官発言のうち該当する部分をご紹介する。(川口恭)

 鈴木寛・文部科学副大臣は7日、都内で開かれたシンポジウムの席上で「小児医療をやっている機関は、これまで厚生労働省に税配分を求めるロビー活動をしてきたと思うが、子供手当ての創設に伴ってお金の流れが変わるので、今後は子供を抱える家庭に対してプレゼンテーションして直接支援を求めていくということが可能になるし、そうなることを期待している」と述べた。(川口恭)

 民主党の福田衣里子衆院議員は7日、都内で開かれたシンポジウムの席上で「薬害とドラッグ・ラグは相反するものという主張をする人たちがいて、お互いに敵対するようにされてきたが、どちらも発生源は同じだ」と述べ、それぞれの解消を求める患者運動は共闘できるとの認識を示した。福田氏は、薬害肝炎全国原告団の代表の1人で、薬害肝炎検討会の委員も務めていた。(川口恭)

 長妻昭・厚生労働大臣は6日の参議院予算委員会で、国産ワクチンの供給量が上方修正される要因となった10ミリリットルバイアルの使用について、「(国内4社のうち)1社が、1ミリリットルの容器で新型のワクチンを作るとすると季節性インフルエンザワクチンの製造を中止しなければいけないという話もあって、我々としては量を確保するためにギリギリの判断をさせていただいた」と述べ、積極的に選択したわけではないことを明らかにした。(川口恭)

 先月25日に開かれた医療構想・千葉シンポジウムより、最後にご紹介するのは、当日最も共感した豊島勝昭医師の発表。事後に聞いたところによると、会場に着いてから講演するように言われて勧進帳に近い状態だったらしいが、シンポジウム全体の流れも踏まえてほぼ時間ピッタリ、実に理路整然としたものだった。(川口恭)

1103jahm.JPG 医療機関の中で患者側と医療者側の対話の架け橋となる人材『医療メディエーター』の育成を進めている日本医療メディエーター協会が3日、早稲田大学で会員研修会を開いた。生後間もない長男を病院内で失い、その後遺族ケアを行うNPO活動を長く続けてきた愛媛県の寺尾るみ子さんが、医療メディエーターをめざして看護学校へと通うようになったいきさつを語った。(川口恭)

 インフルエンザの解熱までの期間がタミフルより短いという研究もある漢方薬の麻黄湯に供給不安説が出ている。薬価が安すぎてメーカーが売れば売るほど損をするうえに、原料が生薬(植物)で生産量が限られているためだ。専門の医師からは「こんな大事な時に使えないなんて。薬価の仕組みを根本的に変えないと国民の利益を損ねる」との声が上がっている。(川口恭)

 ワクチン接種回数に関する厚生労働省の迷走は、足立信也政務官が政治の力で科学をねじ伏せた結果であるかのようにマスメディアで報道されバッシングされている。しかし19日の会合の内容は、科学的根拠のない行政決断に政務官が疑問を呈し、専門家もそれを支持したというものであり、傍聴していた身からすると、一連の報道内容には違和感を禁じえない。19日に出席した専門家の1人である森兼啓太・東北大大学院講師も同じ思いのようだ。簡単にインタビューした。(川口恭)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第17回会合が29日開かれた。医薬品行政を検証するとの旗印を掲げて開始されてから1年半、終結まで半年のこの時期になってようやく、審査や安全対策を行なっているPMDA(医薬品医療機器総合機構)職員の生の声を知りたい、と匿名アンケートが行なわれることになった。(川口恭)

 仙谷由人・行政刷新担当相は28日、「がん対策基本法をつくったけれど、事務局の厚生省のやり方が自治体に丸投げに近くて、国民の実感として医療環境がよくなっていない。議論を自治体の中で巻き起こしていただかないと前へ進まないのでないか。都道府県が本気になった時、もう1回矛盾が出てくるだろうが、その問題提起が自治体側からされれば、国としても解決できるのでないか」と、がん医療に対して地域レベルで考えることを呼びかけた。(川口恭)

提出.jpg  患者家族や医療者などでつくる「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(田中美紀代表)は27日、長浜博行厚生労働副大臣に対し、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌7価ワクチンの定期接種化などを求める要望書を提出した。早期の予防接種法改正を求めるため、一般から集めた約4万7000筆の署名も近日に衆院と参院の両議長へ提出する予定だ。(熊田梨恵)

 25日、6月に発足した医療構想・千葉の第二回シンポジウム『医療崩壊から再生へ 患者の視点で考える』が浦安市の了徳寺大学で開かれた。非常に密度の濃い講演とディスカッションが予定を大幅に超えて約3時間繰り広げられた。講演内容などは、彼ら自身が報告するものとの兼ね合いを見ながら機会を見て記すとして、まずはディスカッションの模様をご紹介する。(川口恭)

「社会保障基本法」シンポ2.jpg 救急患者の受け入れ先が決まらないのは、医療機関の怠慢だろうか。勤務医の環境が悪化しているのは、患者の権利意識の向上や医療訴訟の増加などに原因があるのだろうか。十分な医療を提供できないのは、医療機関の責任だろうか、それとも患者の責任だろうか。医師が悪いのか、患者が悪いのか。(新井裕充)

司会の埴岡健一氏.jpg 「医療崩壊とか救急・産科の(受け入れ困難)問題とかで多くの人が『医療に問題がある』と認識している。これは裏返せば、(医療)基本法成立へのエネルギーになる」─。医師の計画配置や患者の義務などを盛り込んだ「医療基本法」の成立を目指すシンポジウムで、長妻昭厚生労働相の政策ブレーンとされる埴岡健一氏(日本医療政策機構理事)が声高らかに語った。(新井裕充)

仕切る埴岡健一氏1018.jpg 「民主党のマニフェストでは、残念ながら医療問題を解決できない」─。医師の計画配置や患者の義務を盛り込んだ「医療基本法」の成立を目指すシンポジウムで、現役の官僚がついに声を上げた。「自民党の時はもっと自由に言えた」としながらも、来年夏の参院選で「民主党なり最大野党の自民党のマニフェストに書いてもらえば成立は現実化する」と訴えた。(新井裕充)

読売新聞の田中秀一氏.jpg 日本医療政策機構の理事を務める埴岡健一氏らが推進する「医療基本法」について、読売新聞医療情報部長の田中秀一氏は、「医療は医師や患者の勝手になるものではなくて、公共財という視点で考える必要がある」などと力説している。「医療基本法」は、医師や患者に義務を課す強権的な法律なのだろうか。(新井裕充)

 19日晩に急遽開催された新型インフルエンザワクチン接種に関する緊急ヒヤリングは、大変に白熱して面白かった。しかし終了後の記者たちの顔を見ていると、金曜日の専門家会議について旧来型取材の常識に則って記事を書き、結果的に"誤報"とされて面白くなかったらしい。無理に要約しようとするから間違えるので、当方はあんまり要約しない。(川口恭)

伊藤雅治氏1018.jpg 「もっと強力に拠点化・集約化を図って集中的に医師を配置していく。医師を強制的に配置をするような仕組みを導入する」─。医師の計画配置を盛り込んだ「医療基本法」の成立に向けたシンポジウムで、元厚生労働省官僚が吠えた。(新井裕充)

 13日夜に国立がんセンター中央病院で開かれた『院長主催講演会●新型インフルエンザとがん患者―ワクチン問題を考える●』の模様をご報告する。木村盛世検疫官と高畑紀一・細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長の2人が講演した後、鈴木寛・文部科学副大臣、足立信也・厚生労働大臣政務官、梅村聡参院議員(内科医)、土屋了介院長を加えた豪華な6人でのディスカッションとなった。まずは、そのディスカッションから。 (川口恭)

1009ikakenkatagi.JPG 『卵巣がん体験者の会スマイリー』の片木美穂代表は9日、講師を務めた東大医科研病院での勉強会で、「一昨日に製薬協(日本製薬工業協会)の集まりに患者会を代表してしゃべってくれというので行ってきたが、前日に国が予算をカットしたとか会場の話題はお金の話ばかりで、患者のためという言葉が一言もなく悲しかった」と述べた。(川口恭)

保険局医療課・佐藤敏信課長1005.jpg 慢性疾患を抱える高齢者らが回復すると医療費が上がるという考えがある。診療報酬を審議する中医協の分科会で、「体力の悪い方がどんどんどんどん入院してきて、ある程度良くなったら、どんどんどんどん医療費が上がっていってしまう」という発言が飛び出した。(新井裕充)

 今年はじめ骨髄移植に必要なフィルターの供給が途絶しかねない状況が生じていた問題に絡み、わが国の2月の骨髄移植実績が対前年比78%と他の月に比べて明らかに少なかったことが、アメリカ造血細胞移植学会学会誌(Biology of Blood and Marrow Transplantation)に掲載された論文で明らかになった。代替品を超法規的に迅速承認したために供給途絶こそしなかったものの、「代替品に保険が利くのかなど必要な情報を、厚生労働省などが適切に発信しなかったため、現場では移植を見合わせざるを得なかったと考えられ、患者に不利益が出ていたと推論できる」と論文を投稿した研究者は分析している。(川口恭)

医療課・佐藤敏信課長(右2)0930.jpg 重症の救急患者を搬送するため、救急隊が医療機関に4回以上照会した事例が大阪や東京など大都市部で多く見られることから、厚生労働省の担当者は9月30日の中医協で、「単純に医師を増やすとか単純に医療機関を増やすということだけでは難しい」とした上で、「医師の適正配置というのも、もしかしたらある」と述べた。(新井裕充)

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第16回会合が30日開かれた。医薬行政を監視する第三者機関設置のため、検討会内に少人数のワーキンググループを作ることが決まり、長く第三者機関の必要性を主張し続けてきた水口真寿美委員(弁護士)が「私は名乗りを上げたい」と述べた。(川口恭)

「基本法」を考えるシンポ0927_2.jpg 政権交代後、共産系の団体は何をどう主張していくのか─。社会保障費の抑制から充実への転換が叫ばれる中、生存権を保障した憲法25条を具体化する「社会保障基本法」の実現に向け、京都府保険医協会(関浩理事長)は9月27日、東京都内で「貧困をなくし社会保障を守る『基本法』を考える」と題するシンポジウムを開催した。(新井裕充)

表紙.jpg 「自分の子もこんなふうに大きく育つのかなと思うと勇気付けられる」「こんな交流の場を設けてくれた村田選手に感謝したい」-。シルバーウィーク中日の9月21日、横浜スタジアムで開催された横浜ベイスターズ対阪神タイガース戦には、新生児集中治療管理室(NICU)に入院したことのある子どもやその家族、NICUで働く医師や看護師ら約120人が観戦に駆け付けた。家族同士の交流を目的にした、自らも未熟児の息子の父親である村田修一選手からの招待イベントだ。子どもが退院した後の家族へのサポートが社会的な課題になる中、家族や医療者が一緒になってつくる"交流の場"を取材した。(熊田梨恵)

 鳩山内閣の陣容が明らかになった9月16日午前、厚生労働省内では「医療情報ネットワーク基盤検討会」の今年度初会合がひっそりと開かれた。委員席には、医療事故調の検討会などで「医療の透明化」を声高に主張していた南砂氏(読売新聞編集委員)の姿もある。どこか怪しい香りのする審議会だが、厚労省の担当者は、「国が医療機関から情報を吸い上げて何かやるのではない。ネットワークの基盤づくりを応援する」と話している。(新井裕充)

 政権交代後の医療政策が具体的に見えない中、「急性期」の定義をめぐる論争が再燃している。交通事故や脳こうそくなど、生命にかかわるけがや病気の患者が「急性期」であることに異論はないが、しばらく入院して状態が安定した場合を「急性期」に含めるかなど、「急性期」の範囲をめぐって議論がある。これは、高齢者医療の在り方に深くかかわる。(新井裕充)

 民主党の足立信也政調副会長(参院議員)は2日、今後の医療政策を決定するにあたって「国民の合意による負担と給付の関係を築くために、一部の人が決めるのでなく国民全体で議論する仕組みをいかに構築するかが重要だ。そのためにも、まずは徹底した情報公開を行いたい」と述べた。(川口恭)

 出産育児一時金の支払方法が10月から変更されるのに伴い産科診療所に資金繰り不安が出ている問題で、とある産科開業医の声を聞いた。「制度変更の趣旨と違う。我々は踏んだり蹴ったりで、天下り団体が太るだけ。このままではパニックになる」という。(川口恭)

 沖縄県では、唯一の骨髄バンク認定施設で担当医が辞職したために今年4月から骨髄移植ができなくなっており再開のメドも立たないことから、この問題を広く県民に知ってもらう必要があると、「沖縄県骨髄バンクを支援する会」と「がんの子どもを守る会沖縄支部」が共同で今月から署名活動を始めた。(川口恭)

influadviseryvactine.JPG 26日夕刻、厚生労働省で『新型インフルエンザワクチンに関する厚生労働大臣と有識者との意見交換会』が開かれた。特に何かが決まったということではないが、後で記すように舛添要一厚生労働大臣が趣旨として説明した「議論の内容を皆に伝える」ことに私も意義があると思うので、簡単に再現する。(川口恭)

ikakenwadakousyuukai.JPG 医療者と患者が一堂に会して互いのコミュニケーションについて学ぶ勉強会が17日、東京大学医科学研究所病院で開かれた。企画した外科の釣田義一郎講師は、「この病院は臨床試験をするのが使命。しかし、ともすれば『人体実験』と誤解を招くことにもなりかねないので、患者と医療者との信頼関係を構築するための試みとして開いた」という。(川口恭)

 14日に国立がんセンター中央病院で開かれたがん患者3人による講演会の概要をお伝えする。会の趣旨を、土屋了介院長の挨拶から引用すると「がんの患者さんは、実は経済的な負担が大変だという。私たち医者も分かったようでいて、でも聴くとそうだったのかということがたくさんある。診察室ではこういう話を聴くことはないので、ウチの若いのにも聴いてもらおうと思ったのだが、ちょっと参加が少ないのが残念。逆に言うと、これが医療界の実態であるということで大いに反省しないといけない」。会場は3分の2ぐらいの入りだったのだが、どうもメディア関係の聴衆が多かったようだ。(川口恭)

kokugannzenkei.JPG 国立がんセンター中央病院の土屋了介院長は14日、承認も保険収載もされているものの、使えるがんの種類が限られている「適応外の抗がん剤」について、「来年は、ことしの2倍3倍使っていく。世界的に効果が確かめられているものなら、真っ先に有効性を確かめ保険適応してもらうよう研究するのが、研究病院である私どもの施設の使命」と述べ、抗がん剤の適応拡大に向け積極的に役割を果たしていく考えを示した。(川口恭)

 厚労省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』に対しドラッグラグやワクチンラグに悩む6つの患者団体が連名で緊急要望書を出している問題は、29日に開かれた同検討会で、座長が秋以降にラグ問題についても議論したい意向を示した一方、一部委員は否定的意見を述べた。(川口恭)

 明日、第15回の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』が開かれる。検討会を傍聴するには大抵、厚労省サイトの案内に従って事前に申し込みが必要だ。しかし今回、待てど暮らせど申し込み方法の告知が出ない。心配になって問い合わせてみたら、いつの間にか、告知方法が変わっていた。(川口恭)

 医薬品の用法の厳格化を求めるなどの第一次提言を出した厚労省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』に対して、先般、ドラッグラグやワクチンラグに悩む6つの患者団体が連名で要望書を出した。その真意はどんなことなのか、要望書の取りまとめをした「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」事務局長の高畑紀一氏に聴いた。(川口恭)

舛添要一厚労相(右)野村英昭代表(その隣).jpg 慢性骨髄性白血病(CML)患者らでつくる「CMLの会」の野村英昭代表らは7月17日、舛添要一厚生労働相に対し、グリベックなどによる治療を『高額長期疾病(特定疾病)にかかる高額療養費の支給の特例』の対象にするよう求める趣旨に賛同して集まった8万6700件の署名を手渡した。(熊田梨恵)


 医薬品の用法の厳格化を求めるなどの第一次提言を出した厚労省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』に対して、ドラッグラグに悩む6つの患者団体が連名で緊急要望を出した。提言の内容や議論の進め方に異を唱えるものになっている。「適応外使用が認められなくなったら私たちはどうすればよいのか」との危機感からだという。(川口恭)

iryougakkai.JPG 昨日まで元気だった人が急に倒れて亡くなる突然死が毎年約10万件発生しており、その6割ほどは心臓に原因のある『心臓突然死』らしいということが、11日に開かれた日本医療学会のシンポジウムで発表された。シンポジウムでは、この心臓突然死を減らすため国民的運動を展開することが宣言された。(川口恭)

 『抜本的医療改革断行の提言書』を各党の政策担当者たちに手渡してきた梶原拓・健康医療市民会議代表(元岐阜県知事)が9日、今度は野田聖子・消費者行政推進担当大臣の元を訪れ、「医療改革国民会議が自公民のマニフェストに書き込まれると決まったので、選挙後には成立する。ついては消費者庁で主管してほしい」と依頼した。初代消費者庁長官となることが内定している内田俊一・前内閣府事務次官と共に対応した野田大臣は「消費者庁は小さな役所なので、分かった分かったと言って失望させてもいけない」と即答を避けた。(川口恭)

 骨髄移植推進財団に解雇された元総務部長が地位確認などを求めて争っている民事訴訟について、舛添要一厚生労働大臣は8日の衆議院厚生労働委員会で「訴訟に関しては係争中なのでコメントしないが、(略)係争に貴重なお金を使うぐらいなら患者負担を減らしたらどうかということも含めて、どのような形で財団を指導できるかよく検討したい」と述べた。(川口恭)

 慢性骨髄性白血病(CML)患者らでつくる「CMLの会」(野村英昭代表)が、そのグリベックやインターフェロンでの治療を、自己負担月1万円の『高額長期疾病(特定疾病)にかかる高額療養費の支給の特例』の対象とするよう求めている件で、賛同署名が6月末までに4万筆を超えたという。4月中旬から署名呼びかけをしていた。近く舛添要一厚生労働大臣に届ける。(川口恭)

7月6日DPC評価分科会.JPG 抗がん剤など高額な薬剤を使用した場合、DPC(包括払い)では不採算になってしまう問題について、厚生労働省は出来高算定にせずに診断群分類のツリーを増やすことで対応する案を中医協の分科会に提案し、了承された。厚労省は、入院初期の点数設定の方法を変えれば赤字部分が解消されるとみているようだ。(新井裕充)

相川直樹委員(左)0706.jpg 全国どこの病院でも同じような水準の医療を受けられることは患者の立場からは望ましい。しかし、関係学会などが示す指針(ガイドライン)の厳密な順守を求めることに対しては、「医師の裁量権を奪う」など否定的な意見もある。厚生労働省はむしろ、「診療ガイドライン」よりも「クリティカルパスの公開」に関心があるようだ。(新井裕充)

6月29日のDPC評価分科会07.jpg 「中小病院では患者の追い出しにつながることは間違いない」─。入院初期の診療報酬を引き上げる厚生労働省の方針に対し、民間病院の医事担当者は驚きを隠せない。来年4月から、脳卒中や心筋梗塞などで緊急入院した患者が早期に追い出されるケースが続出しそうだ。(新井裕充)

07年12月10日東京・日比谷公園.jpg 入院ベッドが400床以上ある病院では、患者から請求されたら「明細書」を発行しなければならない。検査や投薬など個別の診療単価がレセプト並みに詳しく分かる「明細書」は、医療の透明性や標準化を図る観点から多くの役割が期待されている。その中でも、中医協の遠藤久夫会長は「入院医療の中身が分かる」という役割に強い関心を示している。(新井裕充)

 先般お伝えしたように、『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』が2年目に入った。医薬品行政のあり方を検討すると称して組織論が始まったのだが、どうも唐突な印象を拭えない。当の委員たちはどう考えているのか知りたいと考え、正反対の立場にいそうな、医薬品医療機器総合機構(PMDA)審査官経験のある堀明子・帝京大学講師と薬害サリドマイド被害者である間宮清氏の2人にインタビューしてみた。(川口恭)

DSC_0320.JPG 医療崩壊の危機に瀕している千葉県の現場から、医療再生への提言をしていこうというネットワーク的シンクタンク『医療構想・千葉』(代表・竜崇正前千葉県がんセンター長)の設立記念シンポジウムが13日、市長選投票前日の千葉市で開かれた。多彩な顔ぶれが集まり、オピニオンリーダーたちから「敵は日本医師会だ」、「千葉大病院がなければ千葉はよくなる」などと過激な意見が発せられた。(川口恭)

IMGP0514.JPG 慢性骨髄性白血病の特効薬『グリベック』の費用が高価なために、患者が苦しみ不安に思っていることを先日お伝えした。日本では1錠3100円強するのに対して、お隣の韓国では1800円程度で、さらに14%引き下げられることが今月に入ってから決まったという。この差は、単に経済水準を反映しているだけでなく、薬価決定の際に患者たちが激しく活動したことも影響しているらしい。韓国の活動の中心人物が来日して12日、都内の講演会に参加した。(川口恭)

 常務理事(当時)のパワハラやセクハラを理事長に文書で報告したところ解雇されたとして、骨髄移植推進財団(骨髄バンク)の元総務部長が地位確認などを求めていた民事訴訟の判決が12日、東京地裁で言い渡された。白石哲裁判官は、「文書の内容は基本的に事実」と元総務部長の訴えをほぼ全面的に認め、財団に対して解雇の無効とその間の賃金に加えて慰謝料50万円の支払いを命じた。(川口恭)

命の薬 お金次第

自分や家族が命に関わる病気にかかったとき、飲み続ければ命が助かる特効薬を「飲まない」という人はまずいないだろう。ただしそれは同時に、「その薬を"一生"飲み続けなければならず、やめれば命の保証はない」という道を選ぶことでもある。この薬が高価で、手が届かないというほどの額ではないけれども、その経済負担が毎月じわじわと自分やその家族を追い詰めていくとしたら――。

実際にそんな薬がある。慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬「グリベック」(一般名:メシル酸イマチニブ)だ。その治療費負担の大きさに、自ら立ち上がった人たちがいる。「CMLの会」代表・野村英昭氏にインタビューした。(堀米香奈子)

DSC_0273.JPG 3月末まで千葉県がんセンター長を務め、この程『医療構想・千葉』というシンクタンクを設立する竜崇正氏にインタビューした。(川口恭)
りゅう・むねまさ●1968年、千葉大学医学部卒業。92年、国立がんセンター東病院手術部長。99年、千葉県立佐原病院院長。2005年、千葉県がんセンター長。

iryokihonhou.JPG 患者団体19団体からなる『患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会』が23日、自民、公明、民主、共産の国会議員を1人ずつ招き、「各党の医療政策に患者の声を届けよう!」なる勉強会を都内で開いた。協議会の求める『医療基本法』制定に、全員が協力することを約束した。(川口恭)

薬害防止のための行政のあり方を検討してきた厚労省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』が、このほど1年間の議論に基づいて第一次提言をまとめた。薬害被害者たちの強い意向を反映して医薬品の添付文書への規制を強めようとさせる内容となった一方で、委員たちも知らない間に「臨床研究支援のための基金設立」が盛り込まれていた。(川口恭)

kotuzuibanksien.JPG 骨髄バンクを支援するボランティア団体が昨年、厚生省出身の元骨髄バンク役員から名誉毀損で訴えられる前代未聞の出来事が発生した。訴えられた「公的骨髄バンクを支援する東京の会」を応援する会合が25日午後、東京・銀座で開かれ、参加者から「過去20年、天下り役員が期待通りに仕事してくれたことはない」「これを機に拒否させよう」と次々に声が上がった。(川口恭)

4月22日の診療報酬改定結果検証部会1.jpg 「家族内での診療方針に対する意見の相違があり、個々に話し合いを要求される」「遠くに住む縁者を称する人が後から現れ、話がひっくり返る」―。回復が難しい患者の治療方針について話し合いをする上で医療機関が困難に感じるケースとして最も多いのは、「家族の意見にばらつきがある」だった。(新井裕充)

昨日、下記のような催しが浜松市で行われました。

「医療、そしてこの国をどう再生させるか」
~心臓外科医と政治記者の異色対談~

私は、この模様をロハス誌次号に収録するため、司会をしてきました。
会場の方から、使用したスライドを見られるようにしておいてほしいとの要望がありましたので、ブログに専用のエントリーを1つ作りました。ご活用ください。(川口恭)

第4回終末期医療のあり方に関する懇談会TOP.jpg 死期が迫っている患者に対する治療方針をどのように決定したらいいだろうか。本人の生前の意思表示が文書に残されているなら、それに従ってもいいか。個人の意思は、日々変化するものではないか。死期が迫っていて患者の意思が確認できない場合はどうか。家族の判断に従って、延命を中止してもいいか―。(新井裕充)

siminnokaisimpo.JPG 医療の抱える課題を克服するために国民的大合同をめざそうという『医療志民の会』が発足し、その記念シンポジウムが11日に開かれた。楽観的に言っても、悲観的に言っても、千里の道も一歩からの「一歩」は確かに踏み出した、ということに尽きるだろう。(川口恭)
*写真左側で立っているのは、来賓を代表して挨拶する川田龍平参院議員。

患者の声と対話型ADRというシンポジウムが
早稲田大学で開催されたので傍聴してきた。
実に内容が濃く、かつ頭の中がクリアになるものだったので
記憶が鮮明なうちにご報告したい。
ちなみにNHKのカメラも入っていたようだった。

会場は早稲田大学の南門を出てすぐのところにあるという
小野記念講堂。
小雨の中、地下鉄早稲田の駅を出て歩いていくと
商店街は、野球部の全国優勝を祝う張り紙ばかり。
あれも早稲田で、これも早稲田、大したもんだ、と思う。
着いてみると楽屋まで完備の実に立派なホールだった。


前置きはこれくらいにして早速報告を始めよう。
まず和田仁孝早稲田大学紛争交渉研究所長が挨拶。
「被害者や遺族が参加する新しいタイプのADRをめざす。しかし、どんなに善意に考えたとしても、我々は専門家でしかなく、本当に被害者や遺族の声に答えることにはならない。いろいろな機会で被害者や遺族の声を聴く必要があるだろうということで、今回はここに焦点を当てて2人の遺族の方にお話をいただく。それを受けて我々のNPOがどう考えているのか説明し、さらにパネルディスカッションで議論したい。最後には国会議員も交えてさらに論議を深めたい」
いつものことながら、分かりやすいアジェンダだ。
今からの2人の話を克明に記録することが肝要だなと合点する。

=====
最初の佐々木孝子さんは
1994年1月に二男の正人さん(当時17歳)が
バイクの自損事故で救急病院に搬送されたのだが
十二指腸破裂を見逃された挙句、MRSAの院内感染によって
事故後15日目に亡くなったという経験の方。
聴けば聴くほど理不尽極まりないと思うのだが
感情を高ぶらせることなく低い声でゆっくり噛みしめるように話す。

「もう13年前になりますが、三人兄弟の真ん中の子供を医療事故で亡くした。医療者に対して私は高級職、専門職として信頼と尊敬の念を持っているが、その時にことについては納得がいかなかった。バイクの自損事故で運び込まれた救急病院で、非常な腹部の痛みを訴えていたにも関わらず単なる打撲と診断され、食事に普通にさせていた。9日目に造影検査をして初めて1.5センチの亀裂が見つかった。あまりに遅い診断だったし、それから行った長い手術の後、『食べさせたのが悪かった。食塩水で洗った』と言って、その晩は出てこなかった。翌朝になったら黄疸の症状が出ているので訴えたら『ここでは処置する設備がない。お母さんあらめてください』と。そんなことを言われてあきらめる親がいるはずがない。慌てて済生会へ転院させようとしたら、その時になって『もう一度手術させてほしい』と言ってきた。転院させたのだけれど、2日目にMRSAの感染が分かって、正人がお母さんもうダメと指でバッテンを作った。葬儀の後で、先生いったいどうなってたのですかと尋ねたら、分厚い文献を持ってきて、これにも載ってないので分からなかったと言われた。しかし、どうしても納得いかなかったので提訴することにした。医者を訴えるのはよほどのこと。
それなのに途中から弁護士が示談しましょう、と。1年ぐらい準備書面を交わしていて、『争点になる事実がないか』と言うから、いろいろ調べて救急の腹部外傷に関して鑑定してくれる医師が沖縄にいたので行ってみたら、レントゲンの中に教科書に出せるくらい十二指腸破裂に典型的な気腫像が見える、と。これを分からない医者が救急病院にいるのか、と。それで、その旨を準備書面で出したら、相手からは『最初からわかっていたけれど、あなたが主張しないので言わなかっただけだ』という不可解な答弁書が出てきた。しかも弁護士から、『もう準備書面を書けないし、先にも進めることができない』と言われ、和解を勧められた。最初から和解する気なんでなかったので弁護士を解任して、どうしようかと思っていたところで本屋さんで和田先生の書いた本人訴訟に関する論文を見つけて、本人訴訟で行こうと決めた。裁判長からは威圧的に『せっかく和解が見えて8合目まで行っていたのに3合目まで戻ってしまった。弁護士を決めなさい』と言われたが本人訴訟で行くと突っぱねた。
(裁判官も代わって)ようやく医師の証人尋問をできることになったのだが、出廷してきた医師2人の顔を見てハッとした。2人ともでっぷりとした体格だったのに、顔が半分くらいスリムになっていた。心が痛んだ。医師は私の顔を見ることもなく謝罪の言葉を述べることもなく、私の問いかけには無言だった。私は遺族は一生癒されないのだと伝えたかった。
裁判は精神的に張り詰めた状態が長く続く。しかも相手側からは真実のない書面が出てくる。多くの被害者・遺族は、まず診療期間中に何があったのか知りたいと思っていて医者から聞きたいと思っているのに答えてくれない状況があると、それだったら公の訴訟という場に呼び出してもらおうという気になってしまう。しかし医療過誤が裁判に向いているかというと必ずしもそうでないと思う。
ADRのシステムは5年前に知った。ミスがあった時に医療者が説明し真摯に謝罪することによって、医療者は次の医療へと向かっていけるし、遺族も立ち直れると思う。そうすればマスコミにセンセーショナルに取り上げられることもなく、解決の道筋が開ける。
訴訟の後、北海道から九州までいろいろなところから電話がかかってくるようになった。多くの人が医療者への不満を漏らす。それをカウンセリングのように聴いてあげる。長い人だと1時間以上話す。ただ聴いてあげるだけでも、最後には少し気が楽になりました、ありがとうと言って皆さん電話を切る。

13年も経っているが昨日の如く息子のことを思い出す。当時88歳だった父が『誰にも迷惑をかけることなく逝ったんだから、あきらめなさい』と言ってくれた。その父も3年前に97歳で亡くなった。100年近く生きたとしても人は必ず死ぬ。息子の人生はたった17年だったけれど、その分凝縮して生きたんだと思うことにした。裁判の途中で病気になって1週間入院した。それが息子からの「自分の人生も大切にしなよ」というメッセージのように受け止められて、それからは前向きに楽しく毎日を過ごしていこうと思えるようになった。
医療者の使命感を尊敬している。どうか心やさしいケアをお願いしたい」

=====
この医療事故は民事の一審で佐々木さんが勝訴した後
医師2人が控訴し
「反省してない」と考えた佐々木さんが刑事告発して
最終的に業務上過失致死で医師2人の有罪が確定し
2人の医師は罰金刑とさらに業務停止3か月の行政処分を受けた。
民事訴訟も医師側が控訴を取り下げる形で和解が成立したという。
なかなか言葉を発しづらい雰囲気の中、和田所長が
「分かると言ったら失礼になる。でも学んでいきたい」
と引き取って、次の村上博子さんの紹介へ移った。


最後まで事情がよく分からないままだったが
話をつぎはぎすると、どうやらこういうことらしい。
神奈川県の大学3年生だった息子さんが心拡大によって亡くなった。
実は大学が行っていた定期健康診断では
心拡大は判明したいたのだが本人にその結果が知らされていなかった。
村上さんは和田所長がインタビューする形式で話をした。


和田
「息子さんが亡くなって、まず何をしたいと思ったか」


村上
「何が起きたのか事実を知りたいと思った。私にとって息子の死は理不尽なあってはならないことに思えた、二度と息子のようなことが起きないようにしてほしいと思った」


和田
「まず裁判するつもりがないと宣言したというのが珍しい」


村上
「最初からそうだったわけではない。パッと思いつくのは裁判。とはいえ、裁判のことなど何も知らない。調べてみたら、何が起きたか知りたいとか、二度と同じことが繰り返されないようにとかいった自分の願いを叶えるものではない、そういう気がしてきた。お金も時間もかかるし、息子の死を損害として金銭換算しなければならないのが気持ちに馴染まない。だったら最初からやりませんと。それに裁判では死の決め方が狭い。この時こうしていれば死ななくて済んだというのは全部明らかにしたかった」


この時点では「死の決め方が狭い」という言葉の意味が
よく分からなかったのだが
後になって実に重大な意味を持っていたことに気づく。

=====
和田
「狭いとは」


村上
「健康診断の結果を息子に知らせてくれていれば治療できたかもしれない、といった具合に、資料開示をかけてみると、ここでもしもう少し医療者が突っ込んで対応してくれていれば、死なずに済んだかもしれないということがゴロゴロしている。それをすべて握りつぶされた。その過程を検討して改めるべきは改めてほしい。
健康診断が、大学にとっては就職証明書を作るためだけのものになっていて、医療者にとっても大したものが出てこないと決めつけられていたように感じる。息子の死をケーススタディに再発防止の検討をしてほしい。
そう思って、医療機関の最高責任者や現場レベルの責任者に都合5回面会を申し込んだけれど、残念ながら誰にもお目にかかることができなかった。こちらは開示されたものが真実なのか疑義を持っていて、とても事実にたどり着けないという感覚を持った。そういう対応をするのは責任問題を恐れているからだろうと考えたので、だったら上の人に面会して責任追及や裁判はしないと伝えて、事実を聴きたいと思った。しかしあっさり断られてしまった。
こちらは怒り狂って全て文書にしてぶつけてしまった。それでもやりとりの肝心のところは曖昧だし、改善案もおざなりに感じた。だったらと事実解明はあきらめて、再発防止の一点に絞ってと提案したけれど、それでも現場の責任者からは『説明を尽くした』という文書での回答しか来なかった」


これまた凄まじい話である。
例えるなら、丸腰で「話せば分かる」と近づいているのに
相手が銃を構えたまま砦から出てこないということだ。
たぶん、こんな事例が少なくないのだろう。


村上
「患者がまだ質問があると言っているのに、説明は尽くしたという医者がいるのか、と怒り狂った。医療者の良心に訴えていけば何とかなるのでないかという信頼が音を立てて崩れた」


和田
「医療者の一人ひとりと話してみると、良心を持っているし、悩んでもいることが多い」


村上
「しかし、その部分が何にも出てこなかった。医療者も苦しんでいるんだと感じ取れていたら、状況がまた変わったかもしれない」


和田
「文書でやりとりしたのが問題だろうか」


村上
「窓口が総務の部署で、医療者とは一度も話すことができなかった」

=====
和田
「話をできていたら、納得いく対応が得られたと思うか」


村上
「まず、きちんと話を聴いてほしい。納得いくまで説明をして、そのうえで私の言い分を聴いて欲しかった。事案解明した説明と反省や後悔、あるいは力及びませんでという言葉と息子のようなことを二度と起こしませんという誓いの言葉があれば、納得できたのでないかと想像する。
会っても文書と全く同じ対応だったら怒り狂って何も言えなくなってしまうかもしれない。単なる謝罪だけなら受け入れられない。
会うのはいいことで解決する手段かもしれないけれど、お互いに準備をしてからでないと意味がないのでないかと想像する」


和田
「どういう準備?」


村上
「疑義を申し立てるのはよほどのこと。スーパーのレジ打ち間違えとは訳が違う。迷いに迷った挙句の行動なので、感情的に崖っぷち、ギリギリの所に立っている。マイナスの感情だけで、しかも自分自身を責める気持ちも根底にある。そんな状態だから、感情そのものをぶつけてしまいがちだし、自分が何を望んでいるのかすら分からなくなる。
医療者と会う前に、そういったマイナスの感情を脱ぎ捨てないと、脱ぎ捨てるのは無理だとしたら、せめて抑え込まないと。被害者が加害者と話をする図式ではうまくいかない」


和田
「村上さんに『被害者』という言葉に違和感があると言われた。マイナスの感情を抑え込むことができたという意味では自分自身でメディエーションをこなしているのだろうか」


村上
「私には、まじめに話を聴いて、しかも批判してくれる家族や友人がいた。その点で恵まれていた。周りに医者がいたのでカルテを読んでもらったし、弁護士の友達もいた。そうした人たちに支えられることで、自分の中でキリの良いところで終わらせることができた」


和田
「医療者側も準備しなければいけないだろうか」


村上
「鎧を脱いでもらいたい。組織、保身、体面、世の中を渡っていく鎧を脱いで、良心だけで対峙して将来への誓いを立ててほしい。自分には、できないと思ったら、それも口に出してほしい。組織も、大きな度量で医療者にそれを許してほしい」


和田
「医療機関との交渉では得るところがなかったけれど、文部科学省が対応してくれたとか」


村上
「いろいろと文書にまとめて大学へ送った最初の項目が、健康診断結果の通知方法についてだった。大学の方法は明らかに問題があったけれど、調べてみると全国の多くの大学で同じ方法を取っていた。そこで文部科学大臣に手紙を出した。お役所だから期待していなかったのだけれど、「どういう結果であろうとも本人へ伝えるよう」全国の大学へ文書を発したとのお返事が来た。
たったひとつだけれど願いが叶ったと思うことにした。息子の死が価値あるものになるのは遺族にとって大きな意味がある。
私が伝えたかったのは、疑義を申し立てた人の気持ち。医療者には理解してもらえなかった。危険人物のように見なされ、相手は隙を見せないように身構えている。大きな溝を感じた。その構図では気持ちが伝わるはずがない。
医療者へ申し上げたい。疑義申し立てした人を固定観念で見ないでほしい。真っ正面で受け止めてほしい。それが問題解決につながる」

=====
まさに圧巻の意見陳述である。
ここから議論がどう展開していったのかは稿を改めることにする。


今日になって遅まきながら気づいたこと。
遺族も一生恨みや怒りを抱えていくのは耐えきれないことで
どこかで心に区切りをつけたいと願うものなのだろう。
ところが医療者が出てこないことによって
いつまでも宙ぶらりの不幸な状態に留め置かれるわけだ。
これは二重の苦しみでないか。
やはり医療者が出ていける場を作らないといけない。


シンポジウムの報告に戻ろう。
村上博子さんの話を受けて和田仁孝所長が
中村芳彦弁護士(法政大教授)を紹介しつつ
「これから設立するNPOは、誰かが誰かのためにではなく、皆で皆のためにでなければ機能しないと考えているので、ぜひ参加してください。使ってください」と呼びかける。


中村
「気持の問題を解決することが問題の解決につながるということが印象的だった。また裁判が果たして有効なのかという問いかけもいただいたと思う。では、どういう風に対応したら良いのだろうか、ということで私たちはNPO法人の『医療紛争処理機構』を設立する」。
と、資料を交えて説明しだす。
ロハス・メディカル6月号の「ストップ!!医療崩壊2」の
4見開き目と重複するので資料は採録しない。
「これまでも裁判の対立構造によって不信を増幅し医療崩壊を進めてしまってきた。溝を埋めるには対立構造では不可能。医療は強い信頼関係の中で行われるもの。医療ADRの一つの試みとして、こういう仕組みを考えた。NPOの認証を受け、さらにADR法の認証を受けなければならないので、実際にADRが稼働するのは来年はじめくらいだろう。それまではメディエーターの育成支援が主な業務になる。閉じた機関ではなく、様々な方の参加を得て考え直す場、信頼関係構築の場としたい」
と急ぎ足で宣言して休憩に入った。

=====
休憩の後はパネルディスカッション。
向かって左から和田、佐々木、村上、中村と来て
その次が土屋了介・国立がんセンター中央病院院長
さらに黒岩祐次・フジテレビ解説委員(昨日の写真参照)。
新たに加わった2人がここまでの感想を話すところから再開。


黒岩
「お二人の話を伺って、その心の痛み、母親の思いはすごいなと感じた。死を再発防止につなげるとか、真相解明するというのに裁判が向いていないというのも説得力があった。10年ほど前にフロリダの病院を取材に訪れたときのことを思い出した~」。黒岩氏が紹介したマーティン・メモリアル医療センターの件はご存じの方も多いと思うので割愛する。


土屋
「黒岩さんが指摘した欧米と日本の対応の違いは、思想の違いの現れでもある。欧米では事故をゼロにするのは難しいと捉えているので起きた後の対応を常に考えている。日本は間違えたヤツを罰して、そうすれば事故がゼロになるだろうと考えている。
佐々木さんのお話は、医療者としても当該医師の態度や誠意には問題があると感じた。
村上さんのお話は事情がよく分からないのだが、医療者に疑義を申し立てる際にマイナスの感情でパンパンになるまで我慢してからぶつけるという話があった。医療者からすると、だから困るとも言える。もっと早く言ってもらえればいいのにと思う。退院する時になって病室が暑くて苦痛だったというようなことを言う人もいるのだが、入院中に言ってもらわなければ、応えようがない。それから責任者に交渉しようとしたということについては、私の病院でも何でもかんでも『院長を出せ』という人が多いのだけれど、そういうのでいちいち院長が出て行っていたら病院が回らなくなってしまう。多くの病院で医療事故対応のトップは副院長。私も4年間務めて、いろいろな場に出て行った。医療者がなぜ面談を嫌がるかというと、それこそパンパンに不満が溜まっているので、たいてい2時間は話を聞かなければならない。あまりに副院長の業務が多いので、院長が部長にも振るようにと言ってやらせたことがあったけれど二度やって二度とも結局私のところまで回ってきた。部長連中が悪いのは、まだ相手が話しているのに途中で遮って、相手の言ったことを医学的に解説しようとした。だから、私が黙って聴けと言ったら『ほら見ろ、副院長先生は聴いてくれるじゃないか』と言われた。要するに医者と言うのは人の話を聴くトレーニングができていない。
いずれにせよお二人の話を聴いて自分の施設の教育をし直さないといけないと痛感した。素直に皆様の声に耳を傾けることが改善の第一歩なのだろう」


和田
「パンパンになる前に早く言ってほしいという医療者側からの意見があった。一方でそうはいっても相手は医者でイーブンではないのでないか。対話するといっても、そんなに理想的にはいかないのではないかという批判をよく受けるのだけれど、患者側としてはどう受け取るか」


佐々木
「対話は大切。顔と顔が合うから心も通じ合う。絶対に必要」


村上
「医療者側に聴いてほしい。火中のクリを拾ってほしい。たとえば待ち時間が長いというクレームがあったとしても、本当は診療に不満があるのかもしれない。なぜなら、おいしいラーメン屋さんに行列しても誰も文句を言わない。言葉の向こうにあるものをほじくり出してほしい。クレームの中に解決すべき課題があると認識してほしい」

=====
和田
「医療機関側が聴く姿勢を持っていればよいが、そうでない場合にそれをどう変えていくのか。現実にできるような体制を整えていくときに、まず中村さんにフェアネスをどう捉えればいいのか伺いたい、土屋先生には医療機関の体制をどうすればよいのか伺いたい、黒岩さんにはメディアとして敵対的でない構図をどう描くのか伺いたい」


中村
「まず院内での安全管理の徹底をすること。安全管理部門の人間は臨床現場と距離を取って、透明性・公平性のある運用をできるようなシステムを持っていることが必要だろう。しかし最初から期待すると、そもそもそれができないから問題になっているのであって、どうすればいいのかという話になってしまう。
少なくとも患者側に対するサポート体制は必要であろう。大きな情報格差が依然としてある。その意味で我々の描く院外ADRにはサポート機能も必須と考えている。患者側自身の理解と納得が実現されることを通じてフェアネスも達成される。
院外ADRに強制的調査権のないことを批判されることが多いのだが、証拠保全をかけてからADRに来ていただいても構わないわけで、その辺りはいきなり訴訟ではない柔軟な構造が取れる」


土屋
「根底に患者側が満足していないことがあるというのがポイント。日常診療からキッチリ対話をするように見直していかなければならないと思う。私は院長になってから、外来を完全予約制で1時間6人までにした。それまでは主治医がどんどん診察を入れて1時間に10人も20人を診るようになっていた。患者さんのためと本人たちは言うけれど、結果としてきちんと対話ができていなかった。そういう風に診療そのものから見直していかないといけない」


黒岩
「前提条件がキッチリできていないと難しいと思う。ミスがあった時に隠したくなるのが自然な反応で本能のようなもの。そのままの状態で対話しろと言ったって、逮捕されるかもしれないと思ったらムリ。米国では、件のベン君の事例をモデルにするにあたって、クリントン大統領が全部出しなさい、その代わりそれは刑事で問わないということをした。罪に問われないということが大前提。メディアの人間として、この問題に関しては内心忸怩たる思いがある。どの立場に立っているのか問わざるを得ない。特にテレビはエモーショナルに患者さんの立場に立った方がやりやすい。患者の声を伝え、一方で取材に応じない病院やドクターを敵として追及するというのはよくある。印象として善良でかわいそうな患者と殺人者に値する医療者という構図にしてしまう。福島県立大野病院事件があって、その後どうなったか。それでメディアはいいのか。この医療崩壊をどうやって食い止めるのかはメディアが抱えている課題だと思う」

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佐々木
「記者会見でよくテレビカメラに向かって病院側を謝らせてますよね。あれは一体誰に対して謝罪させているんですか。先に遺族に謝罪させるべきではありませんか」


土屋
「極論すれば会見しないでも良いと思う。被害者に直接謝るべき。でも、メディアに責め立てられ、メディアに用意されて出ていくというのが実際のところ」


村上
「土屋先生が先ほど責任者に話を持って行ったのが無謀だとおっしゃった。確かに自分でも無謀だったとは思うけれど、方法論としては間違ってなかったと思っている。というのが、最初に質問した際に現場の責任者からは明らかにおかしな回答が来た。これは組織としての意思決定があるに違いないと感じた。黒岩さんの紹介したベン君の件では、婦長が最高責任者に『これを検査したら病院になるかもしれないけれど調べるか』と尋ねて、最高責任者が了承している。そういうくだりがあったので、だからそのことを紹介した和田先生の本を手紙に同封して担当理事あてに『どうかこの本の付箋を付けた個所を読んで欲しい。あなたの英断が必要』と手紙を書いた。しかし結局決断はしていただけなかった。上の方の意思がないと、事実も出てこないし、医者も大変な思いをするのだと思う」


土屋
「組織として対応しないといけないのは確か。私が先ほど言ったのは、決まり文句のように『院長を出せ』という人が多いという話」


黒岩
「終末期医療なんかまさにそうだけれど、殺人罪と一線を画したところへ持ってきてあげないと。免責は大事な要素だと思う。
メディエーターというのが、話に聴いてもどうもイメージがつかめなかったのだけれど、実際に活躍している人に会ってなるほどと思った。医療福祉チャネルの番組で大阪・豊中病院の水沼さんというナースの仕事ぶりを追った。それこそマイナスの感情でパンパンになった人が突然やってくるわけだが、その方は奥さんがミスで寝たきりになってしまった。で暴れまわって大クレーマー。水沼さんに対しても、しょせんお前も病院から給料もらってる病院側の人間やろうと罵倒する。それに対して、たしかに私は病院側の人間ですけれど、きちんとやりますから、思う存分話してください、とまず不満を聴きとって、それを今度は現場の人間に対して、テクニックなのか少しキツイ位に『こんなことがあったのか』と問いただす。それを見て旦那さんも心を開いていくわけ。最初は大クレーマーだった人が私たちのインタビューに対して『水沼さんには感謝している』と言った。『裁判になった時も暴れたけれど納得した。こういう気持ちにならせてくれたことに対して感謝している』と。そういう人間力のあり人がメディエーターになるんだなと思った」


和田
「水沼さんクラスのメディエーターは今日の会場にも何人もいる。刑事免責の件だが、日本以外の国では医療事故は刑事事件にしない。それは遺族から見た時にどうなのか」


佐々木
「私の場合は刑事へ行って業務停止3カ月の行政処分も出た。でも聴いたら院長は業務停止中も毎日病院に来ていたらしい」


村上
「裁判をやっわけではないのだが、池田小事件で宅間死刑囚が『早く死刑にしてくれ』と言って執行されたのを見て、遺族は気持が治まるのかなと思った。言葉は悪いが、もっと本人に自分のした罪に苦しんでもらいたかったのでないかという気がする。医師の場合の刑事罰もそれで遺族の気持ちの整理がつくのかなとは思う。気持の整理がつくかどうかの方が大事。佐々木さんの例のように形だけの罰だったら余計に腹が立つ」

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和田
「医療者の苦しみが刑事罰だと遺族に伝わらないという話だが、それをつなぐのがメディエーションでありADR」


土屋
「解決した後も恨みは残ると思う。ただ、医療者が真摯に反省して改善があれば遺族の慰めにはなるだろう。ただし、対話の場には水沼さんのようにエクセレントなメディエーターでなくても、医学的な常識のズレを埋める翻訳者は必要だと思う」


ここでディスカッションの第一部が終わり中村、土屋の両氏が退席。
代わりに鴨下一郎衆院議員(自民党、医師)と
鈴木寛参院議員(民主党)が加わって第二部へ。

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鴨下
「ここまでどういう議論が行われてきたか承知していないが、対話型ADRを構築すべしというシンポジウムの趣旨については、まさにその通り。福島県立大野病院事件に大変ショックを受けた。政治も取り組まないといけない。厚生労働省も第三者委員会を作ろうと動き始めているので、その動きについてまずご報告したい。
本当は医療は安全・安心にかかれるものでなければならない。一方で医者は訴訟に対して防衛的になりがち。胸襟を開いて対話するためにも、いきなり警察・検察でない仕組みが必要」


鈴木
「行政監視委員会に所属して医療ミスがどうやったらなくなるかといった問題を考えてきた。また福島県立大野病院事件で鴨下先生ともご一緒に医療者の請願を川崎厚生労働大臣に取り次いだりした。
この問題は相当根が深いというか、いろいろなレベルで様々な問題を含んでいる。医療現場のコミュニケーションの問題でもあり、医療機関のガバナンスの問題でもあり、霞が関・永田町の医療政策の問題でもある。この問題こそ熟議・熟論が必要であり、今日だけで解決策が示せるはずもないがキックオフとしたい。
医療崩壊、保身医療、委縮医療がどんどん広がっていて、みな善意で関与していて、加害者はいないにも関わらず被害者がいろいろなところに出ているという状況だと思う。また霞が関の議論が、我々の意図とズレてきていることも指摘しておきたい」


和田
「鴨下先生からも言及のあった医療版事故調というか原因究明機関について、遺族としてどう評価するか」


佐々木
「対話型ADRのことで頭がいっぱいなのだけれど、第三者機関は行政任せになるような気がする。遺族は情報を得ることができないし、医療者の顔も見ることができないのでは? 被害者はその場の議論でどんな気持ちになるのだろう、納得できるのだろうか」


村上
「実はパブリックコメントを送った。書いたのは、死亡原因を広く取ってほしいということ。これからの医療を良くするためという観点に立って、行政とか保険点数の所まで遡って原因を広く取ってほしい、と。それから被害者・遺族の申し立てで調査に入ってほしいし、その結果を踏まえて対話の場を設けてほしい。そのうえで話し合ってほしいと書いた」

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鴨下
「第三者機関の議論は始まったばかり。こうした声は吸い上げなければならない。患者の疑問と医療者の言い分はすれ違いがち、何が重要か、罰することなのか、補償を受けることなのか、むしろ多くの方にとっては、なんでこうなっちゃったのか知りたいのだろう。当事者どうしで話してもらう。医療者は防衛的になりがちなので、お互い納得するものを見つける、患者が納得できる仕組みでないと意味がない」


ん?と思った。第三者機関の議論が既に取りまとめ段階に入っていることは耳に入っていないらしい。本題とずれるので、あまり深く考えないようにしておこう。


鈴木
「村上さんのおっしゃった死亡原因を広く取るというのは非常に大切なこと。というのは先ほどから対話が大切だという話になっているが、医師が患者さんと10倍コミュニケーションの時間をとったとしても診療報酬は変わらない。もっとヒドイ例で言うと家族とのコミュニケーションも大切だと思うのだけれど、それに対しては診療報酬は1点もつかない。そんな中、マジメな医療者たちは自己犠牲を払って患者や家族と対話しようとするのだけれど、やればやるほど燃え尽きてしまう。原因といった時の食い違い、それは直接の死因なのか、それともその死因を発生させてしまったシステムの問題なのか、きちっとしておく必要がある。たとえば日本外科学会の調査では、実に外科医の7割が当直明けの手術を経験しているという。つまりほとんど徹夜明けで手術している。そんな状態でミスをした時にそれは果して医療者本人の責任なのか。本人を追及しても恐らく再発防止にはならず、リスクのある医療行為をやらなくなるだけ。二度と繰り返さないために何が必要なのか、という原点に帰ってくることが大切だと思う」


和田
「だんだんマクロの話になっていくのだが、事故の当事者にとっては常にかけがえのないミクロの話。そういうミクロをすくい上げるのはメディアの得意分野なのかなという気もする」


黒岩
「ミクロを取り上げやすいのはその通りなのだが、エモーショナルに動かして大きなグランドデザインを壊すことになる危険性が常にある。死亡原因を広く取る、というのは実に素晴しい表現。対話にはテクニック性もあるのだが、医療者の教育で教えているのか、などなど言い始めるとキリがない。一つひとつやっていくしかないのかなと思う」

=====
和田
「そういう意味でも一つひとつの被害から学ぶ、こういった機会が重要だと思う。では折角の機会なので会場の方、質問があったら」


会場1
「大学で倫理学の研究者をしている。今日の話を聞いていると、これはもはや法律の世界ではなく倫理学の分野だと思う。倫理学的に言うと責任は応答可能性と翻訳するのだけれど、医療ADRでは誰が誰に応答するのか、主に医療者が患者・被害者に対するものと理解したが遺族・被害者に対して一般市民がどうレスポンスすべきとお考えか、レスポンスという言葉がなじまないとしたらどう下支えしたらよいのか」

和田
「個々の体験に互換性はないので、応答する際には医療者とか被害者肩書が抜け落ちて、最終的には個と個のレスポンスになるのだろう。もっとリテラシーというかレスポンスを高める活動はNPOとしても必要になるだろう」


村上
「パブリックコメントに、普通の人を入れてほしいと言った。普通の人の感覚を取り入れてほしい。医師や弁護士が持っているのは普通の人の感覚ではない」


黒岩
「普通の人というのが一番難しくて、実際に探そうとしても難しい。先ほどの一般の人のレスポンシビリティは、外から見ているのだと思う。あそこの医療機関は患者の声をよく聴いてくれるという評判が一般の人も巻き込んでいくのでないか」


鴨下
「事が起こってしまってからの話をしているが、倫理的には紛争を未然に防いだ方がよいに決まっている。情報応答性に欠ける医療現場では、どんどん不信感を増幅する。開業医が増えているのは、安全なところに逃げ込もうという医療者の心理があるので、リスクの高い行為をしている人へのサポートをしないと解決しない。医療ADRだけでなく総がかりで取り組まないと。そして、もっともっと広い意味で医療を担っていくのは皆さんが主体という考えを持っていただきたい」

=====
会場2
「まさに市民社会の創造なのだと思う。普通の人を探すのが難しいと言うけれど、それをあきらめていいのか。裁判員制度も始まる。あまりにも医療制度は偉い人だけで決められていないか」


鴨下
「がん対策基本法のがん対策基本計画を議論する協議会は患者団体の代表も含めて構成した。皆さん苦労して、自分たちの想いはあるけれど全体のことを考えて意見を取りまとめている。ある人が新しい民主主義の第一歩だと言ったけれど、ぜひこの動きに関心を持っていただきたい」


まだ質問の手は上がっていたが時間切れ。
最後に鈴木寛参院議員が講演した。


鈴木
「一市民としてこの運動に参加していきたいと考えている。私の専門は情報学、その中でも情報社会学とコミュニケーション教育なのだが、医療には現代社会の抱える問題が凝縮している。不条理なこと理不尽なことがいっぱいある。学者としては現場の問題点を抽出したいと思うし、立法者としては対策を取りたい。
我々は日々様々なトラブルに巻き込まれる。個人ではほとんど解決できないので社会や組織というものを作ってきた。ベースには倫理があるべきなのだが、ここ200年ほどは法律や社会制度のような規範で解決しようとしすぎている。これがひずみの原因。というのも法律は、責任者を定め権限と責務を与えるという構造を持っている。その責務がどんどん広くなっている。無過失責任とか結果責任という言葉に代表されるように故意でなくても責任を問われる。そうするとどうなるか。誰もが責任あり立場に就きたくない、責任を取りたくないということで社会が崩壊する。医療崩壊はまさにその象徴。
インターネットにベストエフォートという概念がある。インターネットが出てくるまでの通信は、NTTやKDDといった電気通信事業者が責任を持って回線を保証していた。しかしインターネットに運営者はいない。誰も保証はしないけれど、自発的につながって、それぞれの立場で最善を尽くすというもの。最初のころのインターネットはブチブチ切れた。でも誰も責任を取れとは言わなかった。そういうものだと皆が理解していたから。
医療の世界にもベストエフォートの概念を導入するべきでないか。誰が最善を尽くすのか。それは医療者だけではない。患者も家族もメディエーターも、それぞれがそれぞれにできる最善で関与する。
その世の中をどうやって作るのか。そのためには法律や制度の可能性と限界を理解する必要がある。
世の中で立場をわきまえて行動するようになると社会人になったと言われる。しかし現代社会では、良い社会人であることがかえって禍いを招く。立場をわきまえるから、組織の目的に従順になって、普通の人の立場から遊離していく。
ADRの話をすると法律のプロほど反発する。法律の限界を認めたくないというか、万能であると信じたいから。しかし、立場を超えて普通の人として良心のみに従って行動したら、そうはならないはず。
本当は我々が幸せになるために組織を作ったのに、組織によって人々が不幸にさせられているという逆転現象の起きるところまで来ている。ここで普通の人とは何かということになるけれど、一つの立場に拘泥しない様々な立場を内包した存在、自分がなったことのない立場のことも慮ることができる、そんな人のことだ。
もう一度医療について、政策のつくりかた、医療機関の運営の仕方、日々の診療現場考え直す必要がある。医師と患者の対立構造が一番不幸。一つひとつの現場で最善を尽くすにはどうすればよいのか。
必要なものは①関与する人間の能力と志と倫理②知恵や方法論、この二つがあったうえで初めて③社会制度・システム・法律が出てくる。それも①②に対してポジティブフィードバックをかけるという目的を達成してこそ意味がある。
現在の医療はあまりにも過剰な責任によって、ベストエフォートの芽が摘まれている。もう一度普通の人に戻って、良心に誓って、本当にその行動でよいのですかと自問する。資格や立場を超えて一人ひとりに戻ることが大切なんだと思う。
そういう人の連なりである現場が増えることが大切。そしてつながる。
一緒に知恵を出し、一緒に勇気を出して、一つひとつの現場を作り出そう。一緒にやっていこう。私も一市民として皆さんと一緒に活動していきたい」


 今までモヤモヤしていたものが一気に具体的な像を結んだ気がする。ロハス・メディカルと私もその中に加わりたいと強く願う。


最後に和田所長が
「皆さん、それぞれの場へ持ち帰っていただき、一歩ずつ進んでいけたら」と総括して、幸せな日曜日の午後は幕を下ろした。

がんと民主主義

「国会がん患者と家族の会」という団体が「がん対策推進基本計画」に関する意見交換会を、参議院議員会館の第四会議室で先ほどまで開いていた。何をするのかよく分からないまま、ちょっと傍聴に行って大変感銘を受けた。

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