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「情報を吸い上げて何かやるのではない」 ─ 厚労省

 鳩山内閣の陣容が明らかになった9月16日午前、厚生労働省内では「医療情報ネットワーク基盤検討会」の今年度初会合がひっそりと開かれた。委員席には、医療事故調の検討会などで「医療の透明化」を声高に主張していた南砂氏(読売新聞編集委員)の姿もある。どこか怪しい香りのする審議会だが、厚労省の担当者は、「国が医療機関から情報を吸い上げて何かやるのではない。ネットワークの基盤づくりを応援する」と話している。(新井裕充)

 この検討会は、カルテやレセプトに含まれる患者の個人情報など、医療機関が保有する電子化された情報管理の在り方などについて一定のルールを策定するため2003年6月に設置された。
 同検討会での議論を踏まえ、厚労省は05年3月に「医療情報システム安全管理に関するガイドライン」を公表。07年に第3版へ改定し、現在は第4版の作成に向けた審議が進められている。

医療情報ネット基盤検討会0916.jpg 2月の前回会合では、第4版の内容などについて大筋で了承。現時点では、医療機関などが扱う情報管理に関するガイドラインの策定というレベルにとどまっているが、進む方向として考えられるのは医療機関が保有する情報を厚労省が一元的に把握し、管理医療を徹底すること。委員名簿に、病院団体の関係者の名前はない。

 医療情報の管理について、厚労省は同検討会の開催要項で、「医療機関や医療従事者等にとって、医療情報の安全管理には(中略)多大な設備投資等の経済的な負担が伴う」「限りある人的・経済的医療資源は、(中略)情報化に対して過大な労力や資源が費やされるべきではない」などと指摘。
 その上で、「適切な医療分野の情報基盤構築のために以下に掲げる事項を検討する」として、▽医療分野における電子化された情報管理の在り方 ▽個人が自らの医療情報を管理・活用するための方策等─を挙げている。

 9月16日の会合では、医療機関同士などで電子情報をやり取りする場合の認証システムなどについて、山本隆一委員(東京大大学院情報学環准教授)が説明。「証明書ポリシ」「PKI」など難解な言葉が連発されたが、要するに厚労省が「認証局」となって、医師、歯科医師、薬剤師、看護師など国家資格を保有する医療従事者が本人であるかどうかを公的に証明する。
 厚労省の管理の下、「ID」と「パスワード」で会員制のWEBサイトにログインするような仕組みに似た認証システムを構築するのが狙い。ただ、具体的に、「いつまでにどうするか」ということは明らかにされていない。厚労省がサーバー管理を委託する業者名についても、「ハッカーなど危機管理の観点から非公表」(厚労省担当者)としている。

 この日、厚労省は今年度の検討事項として、▽「診療録等の保存を行う場所について」(外部保存通知)の改定に向けた検討 ▽医療機関から自らの診療情報を安全に入手し、活用するための方策の検討─などを示して議論を求めたが、委員は一様に沈黙。特に議論もなく、予定時間を1時間近く残して閉会した。

 会議終了後、「医療情報ネットワーク」の目的について厚労省の担当者は次のように説明した。
 「我々がやるのは基盤づくりなので、誤解がないように書いていただきたいと思う。国が医療機関から情報を吸い上げて何かやるのではない。あくまでも、医療機関と薬局などが安全に情報交換ができるようにするもの。それによって、地域連携とか医療の質を上げていくとか、ネットワークの基盤づくりを応援する。国がやるのは、『その保険医療機関は本物ですよ』とか、『その薬剤師さんは本当にその薬局にいますから、その人から来ている情報は安全ですよ』ということを教えてあげる。そういうインフラ整備のお手伝いだ」
 
 
 
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