誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

患者を支える6

NPOハートプラスの会
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。

 このマーク=写真=をご覧になったことはあるでしょうか? 『内部障害者』や『内臓疾患患者』であることを示す「ハート・プラスマーク」と言います。見た目には何ともないけれど、体の内部に心臓病や腎臓病などで様々な障害を抱えてつらい思いをしている、それが内部障害者であり内臓疾患患者です(会の説明参照)。
 障害が目に見えない分、たとえば電車やバスの優先席に座っていると白い眼で見られる、あるいは駐車場の身障者スペースを使おうとして警備員から注意されたり車イスに乗った人とトラブルになったりするということが珍しくないそうです。言われてみれば、一般に使われている障害者マーク(国際シンボルマーク)は車イスに乗った人の姿がモチーフですね。
 このハート・プラスマークの周知を通じて、内部障害への社会の認知を高め、最終的には公的なマーク制定までめざしているのが、本日ご紹介するNPO法人「ハート・プラスの会」です。
 04年に任意団体としてスタート、07年にNPO法人化したばかりの新しい組織ですが、06年に「読売光と愛の事業団・福祉文化賞大賞」を受賞したことなどもあり、マスメディアにはよく取り上げられています。大きな特徴として、マークの配布など、ほとんどの活動をインターネット上で完結させていることが挙げられます。
 なぜ活動の大半がネット上になるかといえば、会員のほとんどが重篤な内部障害を抱えていて動きまわるのが大変だからです。そもそも心臓病患者の間では昔から「マークがあれば」という声はあって、しかし行動範囲の制約から繋がりを欠き、運動も広がらずにいたのでした。ネットが普及し家にいながら繋がれる時代となったことが、結成を後押ししました。
 03年にマークとホームページを作って賛同者を募り、最初は国際シンボルマークを管理している日本障害者リハビリテーション協会に使ってもらえないかと頼みました。しかし、「障害者を特に区別していない」と断られ、だったら自分たちで広めようと始まった会でした。任意団体の時代に、マークの使用者が5千人程度はいたと推定され、社会の中に埋もれているニーズを実感したそうです。
 ただNPO法人化してみたら、会費を払ってまで活動しようという人は思ったほど多くありませんでした。

とにかく無理せず、長続きめざす

 さて、サイトを通じて取材を申し込んだところ、都内在住の理事の村主正枝さんから、「自宅にお越しください」と返事が来ました。訪ねてみると、東京湾を近くに望む集合住宅の一室でした。
 社会への周知が目標ですから、取材は極力受けるようにしていて、しかし対応した人が疲れて体調を崩したりしないよう、取材側の所在地によって全国各地の理事や会員が対応を分担しているのだそうです。
 村主さん本人は、広告代理店に勤務するOLだった24歳の時に膠原病とそれに伴う肺高血圧症を発症し、「治療しなければ3カ月の命」と言われた身とのこと。24時間肺動脈に点滴するという先進的な治療を受けて10年以上が経過したそうです。当然仕事は続けられず、たまにアルバイトする程度の専業主婦です。普段は、患者さんからの問い合わせや要望にネット上で対応し、取材対応や行政への要望なども分担しています。
 このように会員たちで負担を分け合って最小限の動きにしようと心がけていても、コアの会員数が多くないこともあって、ちょっと行事が立て込んだりすると、皆すぐ体調を崩します。昨年も秋口から村主さんが3カ月入院し、退院したと思ったら別のスタッフが入院しました。
 「活動を続けるだけでも大変ですが、それがまず大事だと思っています」
 というのも、メンバーが出演したラジオ番組で「このマークを知っていますか」と街頭インタビューしてくれたところ、まだ20人に1人が知っている程度に留まっていたそうです。
 村主さんは言います。「ゴールは国民が内部障害を正しく理解してくれることで、そのためにも患者さん自身の協力もお願いしたいと思っています。まずマークを身に着けること。身に着けている人が増えれば、あれ? と思う人も増えるでしょう。今のところマークを着けてもメリットは何もないので、それだけでも立派なサポーターです。欲を言えば会員として一緒に活動してくださる方がいたら、とてもうれしいです」

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