緩和ケアのこと知ってますか?
6月に成立した「がん対策基本法」では、がんの早期段階から緩和ケアを行うことが盛り込まれました。緩和ケアの本質から言えば当然の話なのですが、法に明記しなければならないほど、これまでは末期の人だけが対象と誤解されがちでした。
現在、主に緩和ケアが提供されているのは、ホスピスです。病院に併設されている緩和ケア病棟も、名前は違いますが中身は同じものです。
保険適用の関係で、これらに入れるのは、積極的ながん治療を終え、最後の仕上げの時期を過ごす方々です。裏返すと、積極的治療をしている方には緩和ケアが提供されないことになります。結果として、緩和ケア病棟(ホスピス)へ行くことは、積極的治療の打ち切りを意味します。
このため、患者に良かれと思って医師が緩和ケアを勧めても、患者は医師から見放されたと受け止めがちです。患者の精神安静を保つために、ムダと知りつつ治療を続ける場合も少なくありません。
ただし本来は、治療に多くのエネルギーを必要とする病を抱えた時点で、患者は緩和ケアを必要としているのです。積極的な治療が行われている時でも緩和ケアが提供されてしかるべきです。そうでないと、ある日突然、ベッドも主治医も看護師もすべてが交代すると言われるのですから、患者が受け止めるのは容易でありません。
こうした反省に基づき、最近は、がんが見つかった時から関わってくれる緩和ケアチームも増えています。患者が病棟や施設を移るのでなく、ケアチームが患者のベッドまで来てくれます。最終的に緩和ケアのベッドに移る場合、元の病棟のベッドで過ごす場合、どちらもあります。
緩和ケア病棟やチームは、求められていることが前項のように多岐にわたりますので、痛みを取る医師、心のケアをする医師、専門の看護師がセットになっていなければ、診療報酬加算がありません。ソーシャルワーカーも必要ですね。
積極的治療を打ち切ることに納得した場合、ホスピスへ行かず、在宅(06年4月号参照)での看取りをめざすという手もあります。ただし信頼できる主治医、看護チームが近所にいない場合には、まだまだハードルが高いかもしれません。
最近は緩和ケア科外来というものもあります。ただし、名前が同じでも、病棟に入るための外来と初期の方のサポートをする外来と二通りありますから、かかる前に確認をしてください。
がん医療の考え方、変わりそうです。 世界保健機関(WHO)の専門委員会は、既に1989年に早期がんの患者にも緩和ケアを導入すべしと報告書を出しています。日本のがん医療は、キュアと緩和ケアとが、ある日を境に入れ替わるのが一般的でしたが、今後はキュアと緩和ケアが同時期に施され、徐々に比重が変わるというものに変わっていきそうです。