文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

緩和ケアのこと知ってますか?

どこへ行けば受けられるの?

 ここまで読んで来て、もし自分ががんになったとしたら、緩和ケアを初期から受けたいと思ったのではないでしょうか。
 がん治療初期から上手に緩和ケアを使いたいと思ったら、当然そういう緩和ケアをできるスタッフのいる病院へ行かねばなりません。
 緩和ケア病棟のある施設は日本ホスピス緩和ケア協会のサイトで調べられます。
 また、前項でも説明したように最近では、外来で緩和ケアを受けられる施設や、一般病床に入院している患者さんを対象に専門スタッフたちが主治医をサポートする「緩和ケアチーム」が増えつつあります。希望すれば、早期からチームのサポートを受けることが可能です。
 緩和ケアのない施設に既に入院しているなら、主治医に緩和ケアを受けたいと要望して、移動先を探してもらいましょう。医療連携室に相談する手もあります。緩和ケアを希望する患者さんや家族が多ければ、自然と緩和ケアの提供量も増えます。提供量が増えれば、初期からの緩和ケアも夢物語ではなくなります。
 現状では需給にミスマッチがありますので、ベッドの空き待ちになることもあるでしょう。しかし緩和ケア施設でないからといって我慢することはありません。先ほども説明したように、がんによる痛みなどの苦痛は我慢しても報われません。どんどん主治医に遠慮なく苦痛を伝え、処置してもらうようにしましょう。
 わがままを言えばよいという意味ではありませんが、痛みなどは検査数値化できませんので、あなたが苦痛を訴えなければ、主治医も気づいてくれません。それで損をするのはあなた自身です。
 少し先を急ぎすぎました。医療施設を選ぶ前、医療施設での心構えを考える前にも、できることがあります。
 人は必ず死にます。現代の医療では治せない疾患が確実にあります。これを前提として、元気な時から、自分がどういう人生の終え方をしたいのか、家族と話し合ってはいかがでしょう。
 あなたの人生はあなたが主人公であり、その幕の引き方はあなたが決めるべきです。病状が重くなると意思表示がしづらくなることもありますので、元気なうちにしておいた方が無難です。
 実際に発病してしまったら、恐れや怒りも含めた自分の気持ちを素直に家族に伝えましょう。痛み・苦しみを伝えましょう。我慢することが家族のためではありません。あなたが苦しめば家族も苦しみます。
 逆に、あなたが患者家族の立場であったなら、患者の意思を尊重すべきということが分かりますね。患者が適切な意思決定をできるよう、伝えるべき情報はきちんと伝えましょう。
 実際には、がんが再発して病状が厳しいということを、患者本人に伝えたがらない家族が多いのです。患者の気持ちを考えてとは思うのですが、結果として治療の選択を誤ってしまうことがあまりに多いのです。
 選択を誤るとは、無効な化学療法を希望して副作用で苦しめると共に在宅移行のタイミングを逃す、あるいは緩和ケア病棟に移行するタイミングが遅すぎるなどです。積極的治療に限界が来たならば、もはやキュアは主役たりえません。一刻も早くケアに重点を移すべきです。
 繰り返します。
 病を得たあなたが、人生をよりよく仕上げたいと願う時、そこに緩和ケアがあります。覚えておいてください。

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
掲載号別アーカイブ