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大人も気になるアトピー性皮膚炎。

アトピー性皮膚炎はどうして起きる?
18-1.1.JPG かゆい皮膚の湿疹で知られるアトピー性皮膚炎ですが、一体どのようにして起こっているのでしょうか?
 原因を大別すると、①皮膚のバリア機能障害、②アトピー素因、③悪化因子の3つ。順番に見ていきましょう。
 もともと、私たちの皮膚には、外界からの「バリア機能」が備わっています。外から異物を入れないようにする、体内の水分を逃がさないようにする、角質細胞がはがれないようつなぎとめる、などなど。バリア機能が正常の皮膚なら、多少の刺激や後述するアレルゲンなどがやってきても、ブロックしてくれるのです。また、乾燥しないよう皮膚に水分を蓄えて、しっかりさせる働きも備えています。しかし、アトピー性皮膚炎の場合、皮膚が乾燥していて水分を保ちにくく、「バリア機能が低下」しています。その結果、刺激に過敏→掻く→荒れてさらに過敏に→さらに掻く......という悪循環に。掻いたところは、ますます炎症がひどくなってしまいます。
 次に「アトピー素因」について。これはアレルギー体質の一種です。
 人間には、外から有害な異物が侵入したときに身体を守る免疫システムが備わっています。ところが、多くの人にとって無害なものを、排除すべきもの(アレルゲン)として過剰に反応してしまう体質の人もいます。この異常な免疫反応がアレルギーです。
 アトピー性皮膚炎の人の血液には、アレルゲンと結合しやすいたんぱく質(IgE抗体=採血検査で調べられる場合が多いです)が多く含まれているため、反応を起こしやすいといいます。それが炎症となって現れるのです。また、この体質は遺伝しやすいともされています。
 ただし、ここで注意しなければならないのは、『アトピー性皮膚炎=アレルギー疾患』ではないこと。例えば、スギ花粉症の患者はスギ花粉が飛んでいなければ症状が出ませんが、アトピー性皮膚炎の場合は、たとえアレルゲンの全くない部屋を作って生活しても、それだけで完全に治るということはないです。中には全くアトピー素因を持たない(IgE抗体なども正常)患者もいるとのこと。
 3つ目の原因「悪化因子」には、アレルゲンとアレルゲン以外の刺激があります。アレルゲンは、ダニや花粉、カビ、ペットのあか、虫のふんや住宅建材の処理剤といった生活環境中の物質だったり、特定の食物だったりします。
 アレルゲン以外の刺激も重要です。髪の毛や毛糸のセーターから、シャンプーや石鹸、香水などの化粧品類、汗、よだれや食べこぼしなどまで、実にさまざま。直接的な刺激以外にも、精神的なストレスや生活リズムの乱れ、食習慣の極端な偏りなども、悪化の原因となることがあります。
どちらが先、というものではありません。アレルギー反応でかゆみが生じることもあれば、ちょっとした汗や乾燥などが刺激となって炎症が起きることも。そこで掻いてしまえば、それが刺激となってますますかゆくなります。掻くことで皮膚が傷つけられると、バリア機能が阻害されてアレルゲンが入ってきやすくなり、アレルギーの面からも悪化する、という悪循環に。
 こうしていくつもの要因が重なってアトピー性皮膚炎が引き起こされ、悪化するのです。誤解を受けがちですが、決してアレルギーだけで起こる病気ではないということ。3つの原因それぞれが重要で、これに対応して治療も組み立てられるのです。

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