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深いシワがイヤなら曇りでも紫外線対策~それって本当?

紫外線(UV)の対策は夏にするものと思っている方、実は4月頃からどんどん線量が上がってきて、お肌を老化させています。たとえ曇りの日でも、紫外線量の半分以上は地表に届いているので、油断なく対策しましょう。
専任編集委員 堀米香奈子(米ミシガン大学環境学修士)
 皮膚に影響する紫外線は、害は大きいけれど割合としては少なくガラスを通れないUVB(中波長紫外線)と、全体の90%を占め曇りの日でも地表に達してガラスを通ってしまうUVA(長波長紫外線)とが、あります。  UVBによる悪影響はよく知られていますが、近年分かってきたのが、UVAでも皮膚は老化することです。  紫外線による皮膚の老化を「光老化」と言います。厚くごわごわ、浅黒くなってシミが増えます。シワも深くくっきりします。加齢だけで、こうした変化は起きません。それが証拠に、高齢者でも、ほとんど光に当たらないお腹やお尻は白く、深いくっきりとしたシワはないですよね。  というわけで、お肌の老化を遅らせたいなら、光老化を意識的に防ぐ必要があります。紫外線量の増える今頃から対策を始めるべきと言えます。 風通し良く遮る  現実的で効果的な紫外線対策は、「衣服や帽子、日傘などで、物理的に遮ること」と話すのは、東京工科大学光老化研究室の正木仁教授です。  「究極には、白くて透けない素材の服や帽子に、黒い日傘がお勧めです。黒はあらゆる光を吸収しますが、熱も吸収します。熱は体に負担となるだけでなく、肌へのダメージにも関わっていることが分かって来ていますから、直接身に着けるものは、黒よりも光を反射する白を選び、通気を良くするのも大事です」  近頃はUVカット加工の布で出来た製品も増えています。綿などの天然繊維では、生地の表面に紫外線を吸収・乱反射させる物質による加工が主流です。一方、化学繊維では、吸収剤を高濃度に練り込み、長く使っても効果の低下しにくいものが増えています。 日焼け止めを何度も  ただ、顔や首、手などを布で完全に覆うのも現実的でないですよね。そこで併せて活用したいのが日焼け止め(サンスクリーン)化粧品(コラム参照)です。  日焼け止めの主成分は、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤に分けられます。前者は紫外線を薬剤に吸収させて肌を守り、後者は皮膚の表面に膜を作って紫外線をはね返します。  「吸収剤は肌への負担が大きくトラブルを起こしやすいこともあって、日本では散乱剤が一般的です。特にベビー用や敏感肌用などは、散乱剤のみのはずです。一方で、散乱剤は性質上、紫外線防御力に限界があり、SPF(コラム参照)50以上の製品では吸収剤も配合されているのが普通です。日常生活での日焼け止めは、肌への負担を考えてもSPFは30くらいで十分。その分、こまめに塗り直す方が確実です」と正木教授はアドバイスします。  特に紫外線散乱剤は、顔を触ったり汗をかいたりといった様々なきっかけで粒子が皮膚からはがれ、効果も失われやすいとのこと。汗をかきやすい時期に入りますので、製品の表示以上に、もっと頻繁に塗り直すようにしましょう。 眼も守ろう  なお、「目から入った紫外線で肌が日焼けする、という噂があるようですが、あれはあくまでマウス実験の話」と正木教授。  ただ紫外線を眼に受けると、白内障などのリスクが高くなるのは確かなので、強い陽差しの中では、できればUVカットのサングラスも着用したいものです。UVカットでない単なる黒サングラスは、熱くなるだけで、かえって目に良くありませんので、ご注意を。
(コラム)SPFとPA  日焼け止め製品に表示されているSPFは、主にUVBに対する効果で、その製品を使わない場合と同じ程度まで翌日肌が赤くなるのに、何倍の時間日光に当たっても大丈夫かを示しています。例えば夏の海の炎天下では20分のところ、SPF30の製品を規定量付ければ30倍の10時間大丈夫、ということになります。50を超えると性能にあまり差がなくなるため、SPF50+と表示されます。  SPFの他に、UVAを防ぐ効果であるPAが「+」4つまで表示されていますが、「完全に防ぐわけではありません」と正木教授。  日焼け止めは、米国では医薬品扱いで定義も法律で定められていますが、日本では化粧品扱いで日本化粧品工業連合会の定めた自主基準に基づいてSPFやPAが表示されています。
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