全身老化のサイン? 歯周病
最近の研究で、歯周病と全身疾患の関係も明らかにされつつあります。心疾患や糖尿病、低体重児・早産などがその代表例。少しずつ見ていきましょう。
まずは心疾患。なかでも心内膜炎と虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞=vol.35参照)です。
心臓の弁や内側の壁にもとから障害がある場合には、血流に乗ってきた歯周病細菌がそこに定着し、細菌性心内膜炎を起こすことがあります。
心臓の筋肉に酸素を送り込んでいる冠状動脈が狭くなって起こる狭心症(血行不良)や心筋梗塞(筋肉の壊死)のリスクも高まります。歯周病細菌に対して免疫機能が働く際に炎症をひき起こすタンパク質がつくられ、それが心臓の血管に作用して傷をつけたり、また、ある種の歯周病細菌は血液を固める因子を持っていて、直接、冠状動脈に血栓をつくったり血管を狭めたりします。 そうして心臓の動脈硬化を助長し、虚血性心疾患の危険性を高めるのです。
糖尿病(vol.4参照)の悪化にも影響があります。健康な状態では、血中の糖が多くなるとインスリンが働き、エネルギーとして蓄えるよう体の細胞に取り込まれ、血糖値は一定に保たれます。ところが糖尿病では、炎症をひき起こすタンパク質が脂肪細胞でつくられ、インスリンの働きを弱めるように作用して血糖値がバランスを失います(インスリン抵抗性)。ここで歯周病が進行すると、その病巣からも同様のタンパク質がつくられ、インスリン抵抗性がさらに増し、糖尿病の症状を悪化させるのです。
低体重児出産や早産も歯周病と関係があることわかっています。ただしメカニズムはまだはっきりしていません。ただ、早産については、歯周組織が慢性的に炎症を起こしている時にそこでさらなる炎症誘発物質がつくられ、血流に運ばれて子宮の収縮と子宮頚部の拡張を促進させた結果と考えられています。とくに妊娠中は歯周近くにも女性ホルモンが増えていて、ある種の歯周病細菌はこれを栄養源とするため、歯周病になりやすく進行も早いとのこと。ですから口の中を清潔に保つよう、いつも以上に気をつけてください。
そのほか、歯周病の影響として、骨粗しょう症や腎炎、関節炎、発熱などへの関連も疑われているということです。歯周病を甘く見ていると、歯の周りにとどまらず、全身の健康を害しかねません。どうしたらいいのか、次頁で確認しておきましょう。
お年寄りでは肺炎や気管支炎の原因にも!? 肺や気管は嚥下や咳など体の生理的な反応によって守られています。しかし高齢になるとこれらの生理的機能が衰えるため、自らの唾液や食べ物を不本意に気道や肺に吸引しがち。この際、口の中の細菌も同時に吸引することとなり、肺炎(vol.31参照)を起こします。とくに歯周病細菌は肺炎の原因となるものが多いので、高齢に限らず、認知症、被介護、脳血管障害、手術後など身体の防御機能が低下した状態も要注意です。