ドキッ! もしかして不整脈?
不整脈の治療法は、原因・性質に応じて選ばれますが、大きく分けると薬理的・化学的に心臓へ働きかける方法と直接的・物理的に働きかける方法とがあります。
間接的に働きかけるのは、いわゆる抗不整脈薬を使う薬物療法です=表参照。
ただし進行を抑えることはできても根治はしませんので、気長に薬と付き合う必要があります。また、患者にどのタイプの薬が適しているか予測は難しく試行錯誤が必要なのと、かえって不整脈を悪化させたり命を縮めたりする可能性もある(コラム参照)ことから、薬の選択は経験豊富な医師が慎重に行わなければなりません。
直接的な方法は、患者への一時的な負担はあるものの、原因を完全に取り除ける可能性があります。
著明な徐脈が起きている場合、電気刺激の起き方が足りないか、心筋のどこかで電気伝達が滞っていると考えられるため、刺激の必要な心筋を直接電気刺激するペースメーカーの埋め込みが行われます。
現在、ペースメーカーは、五百円硬貨を一回り大きくした程度の本体を鎖骨の下に埋め込むのが一般的で、局所麻酔下1時間程度の手術で済みます。本人の心臓の動きを感知して、脈拍数を調整してくれます。定期的な調整と5~7年程度ごとの電池交換が必要です。
期外収縮では、本来刺激が起きる洞結節以外の心筋からも電気刺激が出てしまっていることが多いため、その原因となっている心筋を焼き切る「アブレーション」(高周波焼灼術)という治療が行われます。一般にはカテーテルを挿入して、まれに開胸して行います。所要時間は、焼き切る部位の多さや難しさによります。
また、重症の頻脈や細動の場合、心筋細胞がバラバラに動いてしまって心臓が止まっているも同然の状態なので、急いで直流通電を行います。全体の足並みをそろえるために電気ショックを与えて強制的にストップさせ、規則正しい再開を待つものです(コラム参照)。
ペースメーカーのように体内に埋め込み、頻脈や細動を感知すると自動的に電気刺激で頻脈を止めたり直流通電をしてくれる植え込み型除細動器(ICD)というものもあります。
このほか、冠動脈疾患が原因になっている場合、冠動脈のバイパス手術で血流改善をめざすことがあります。
また心臓を守る治療と別に、ある種の不整脈では血栓ができやすくなることから、脳卒中や肺塞栓を予防するため、血液の抗凝固剤を飲まねばならないこともあります。
強心剤は諸刃の剣 抗不整脈薬には、古くから心機能をバックアップするような強心剤として用いられてきたものも多いのですが、慢性心不全患者に強心剤を長期服用させると、死亡率が上がるという研究結果がいくつも出ています。 このため、軽い不整脈の場合は、血圧を下げるなどの間接的投薬が一般的になっています。
ご存じAEDは、電気ショックを与えます。 最近設置場所が増えている、皆さんよくご存じのAED(自動体外式除細動器)は、倒れている人に何が起きているか診断できない素人でも、必要に応じて電気ショックを与えられる機械です。 ただし、最初に必要なのは心臓マッサージなどの心肺蘇生です。まず心肺蘇生をしながら、周囲の人にAEDを探してくるよう頼みましょう。