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療養病床削減 何それ?

そんなに多いの?

 ちょっと視点を変えて、どうして厚生労働省がムダと判断するほどの数、療養病床が存在するのか考えてみましょう。病床の数は厚労省が都道府県に指示してコントロールさせていたはず(08年5月号「医療計画」特集参照)。高齢化がどんどん進行中ですから需要は右肩上がりで、逆に言うと以前の方が需要は少なかったことになります。厚労省は、どう対応していたのでしょう。どうも辻褄の合わないような気がします。
 この手のスッキリ割り切れない話には、たいてい歴史的経緯があります。
 療養病床に関しては、なんと35年前、1973年まで話が遡ります。この年に老人医療費が全国で無料化されました(1982年まで)。まだ介護という独立概念は存在しておらず、医療の一部という位置づけでした。また高齢者に対する医療費も出来高払いで、病院は医療行為をすればするだけ儲かりました。患者側からも医療側からも、高齢者を入院させることに歯止めの効かない状態でした。
 病院は今で言うところの介護が必要な老人であふれ返り、救急患者を受け入れるベッドすらない状態になりました。それが社会問題化し、また老人たちの入院環境も劣悪だったことから、こうした老人たちを一般病院から受け入れる「老人病院」が急激に数を増やし、それが名前を変えながら続いてきたのです。
 厚労省は、2000年の介護保険登場を契機に、このゆがんだ状態を是正しようと動きました。医療と介護を切り分け、療養病床で行っているようなことは介護だと定義して、それらをより安価な介護保険の対象にしようとしたのです。ところが医療界の抵抗もあって改革は中途半端に終わり、医療型と介護型の2種類が並立することになってしまいました。
 2種類の間で、入院する人に明確な差があるか、同じ状態なら同じ金額(患者の負担、病院の収入とも)であるかすれば混乱も少なかったと思われるのですが、現実には入院する人の状態に大して差がなく、でも金額は違うのです(コラム参照)。

介護型と医療型の金額 39-2.3.JPG 介護型は要介護度によって、施設へ支払われる金額が異なります。患者本人の負担は1割です。要介護度が少なくとも3以上ないと病院が損をするので、実質的には入れてもらえません。  一方の医療型は、医療がどの程度必要かによって表のように金額が異なります。この表の区分そのものがおかしい、とか診療報酬が安すぎるという指摘もあり、それはそれで一理あるのですが、話が煩雑になるので別の機会に特集します。本人負担は所得によって1~3割と異なります。また高額療養費制度によって戻し金もあります。  全体として介護型の方が高めになっています。これは、厚労省内の担当局が異なることに加え、つい最近までは介護型へ一本化すべく優遇していたからです。こうした経緯があるため、急に介護型全廃という方針が出てきて、業界は大騒ぎになりました。


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