療養病床、06年度改定時から1万7340床減
2008年12月末現在の国内の療養病床数は34万496床と、療養病床削減を促す診療報酬改定が行われた06年4月からに比べ、1万7340床減っていたことが厚生労働省の調べで分かった。(熊田梨恵)
厚生労働省がまとめている「医療施設(動態)調査」によると、06年4月には35万7836床あった療養病床が、08年12月末には34万496床にまで減っていた。療養病床は05年が施設数・病床数ともに最多となったが、療養病床再編計画に伴う06年度以降の診療報酬改定などの影響で減少が続いている。
療養病床のある病院と診療所も減少を続けており、同年12月でそれぞれ4076病院(同時期との比較で278か所減)、1713か所(696か所減)だった。
■北海道の減少幅大きく
地域別にみると、特に北海道の減少幅が顕著で08年12月末時点で2万4765床と、同時期で比較して3797床減っており、全体の減少数の22%を占めていた。次いで福岡県が同時点で2万2318床(2202床減)となり、13%を占めた。このほか、熊本県 1万135床(834床減)、新潟県5161床(842床減)などと続く。
一方で療養病床が増加していたのは、滋賀県 2997床(405床増)、山形県2097床(224床増)、群馬県5095床(172床増)などだった。
医療機関数の推移をみると、 病床数と同様に北海道で最も減っており、286病院(39か所減)だった。ほかは大阪府249病院(24か所減)、広島県136病院(17か所減)などと続く。診療所は、熊本県100か所( 58か所減)北海道86か所(48か所減)福岡県178か所(45か所減)などの順。
■療養病床再編計画をめぐって
療養病床削減は、06年の小泉政権下で打ち出された医療制度改革が発端になる。年々増え続ける医療費を抑えるために決まった、社会的入院の温床とされている療養病床の再編計画だ。
療養病床には、医療保険適用の医療型療養病床と、介護保険適用の介護型療養病床の2種類がある。両者は報酬体系は異なるものの、慢性期医療を必要とする患者を受け入れており、実際に提供しているサービスに大きな違いはない。
12年度末までに、当時38万床あった療養病床(医療型25万床、介護型13万床)を、15万床にまで減らすとしており、介護型療養病床については、11年度末までに全廃する予定。療養病床の転換先としては、介護老人保健施設や、新しいタイプの転換型の老健、在宅移行などを提案している。
療養病床削減に関する詳しい経緯はこちらを参照
療養病床削減 何それ?
この方針を進めていくため、診療報酬改定でも病床削減を促している。06年度診療報酬改定の際にも療養病床に関連する診療報酬を引き下げた。医療依存度やADLで入院基本料に差をつける療養病棟入院基本料を創設。医療依存度の低い患者を介護保険施設などに移すため、中心静脈栄養(IVH)など最も重度の患者と軽度の患者とで、診療報酬に約1000点の差をつけた。さらに、08年度診療報酬改定では、特殊疾患病棟入院料と障害者施設等入院基本料を見直した。
厚労省は医療と介護を「適正に」提供していくためとして病床削減を進めているものの、医療と介護の両方が必要な人を受け入れている療養病床を減らすことには「急性期から慢性期への医療提供の流れを止める」として反対の声も多い。
自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」では昨年、介護型療養病床の機能を存続するよう求める提言や署名を舛添要一厚生労働相に提出した。同会では、療養病床削減により"医療介護難民"が11万人出るとの試算を示していた。保団連は、全国の382自治体が削減の中止を求める意見書を決議(趣旨採択を含む)していると発表。介護療養病床の廃止の撤回と共に診療報酬と介護報酬の引き上げを求める要望書を、昨年秋に舛添要一厚労相などに提出していた。
また、都道府県は昨年に療養病床再編計画を厚労省に提出していたが、総数としての削減幅が当初の見込みより少ないものとなった。このため、厚労省は昨年、削減幅を15万床から22万床までの減床に設定し直すなど、大幅な見直しを行った。
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熊田さま
>12年度末までに、当時38万床あった療養病床(医療型25万床、介護型13万床)を、15万床にまで減らすとしており、介護型療養病床については、11 年度末までに全廃する予定。療養病床の転換先としては、介護老人保健施設や、新しいタイプの転換型の老健、在宅移行などを提案している。
嘆かわしい限りです。毎月毎月病床数が減っているこの統計を見るたびに悲しさを覚えます。
医療と介護は違うなどと言う人がいますが、年寄りは簡単に具合が悪くなり、簡単に悪化します。すぐに手当てできる医療施設にいたいと思うのは自然なことです。それを支えてきた療養型病床をなぜもっと暖かい目で見ることができないのか。
「医療費亡国論」や「社会的入院」などという妄言に惑わされ、現実のニーズや現場の実態からかけ離れ、イデオロギーばかりが先行した結果、泣く人間が増えてしまった。こんなことを政策誘導だなどと信じて進めている愚か者は、影響力のある立場から去って欲しい。
追加で15兆円もドブに捨てるのなら、少しでも医療費を増やして人々を救えと私は言いたい。
KHPN様
>医療と介護は違うなどと言う人がいますが、年寄りは簡単>に具合が悪くなり、簡単に悪化します。すぐに手当てでき>る医療施設にいたいと思うのは自然なことです。それを支>えてきた療養型病床をなぜもっと暖かい目で見ることがで>きないのか。
療養病床を削減すべきではないという点で意見が食い違っているわけではないですが、それだけに反論の論旨が違うところが気になってしまって・・・。
年寄りは簡単に具合が悪くなる
そんなことはありません。元気な方は元気です。ただ、慢性疾患、あるいは慢性的な機能低下がいろいろな臓器に出ている人が多く、具合が悪くなったときに進行が早い、治療法を若い人と同じようにしたら余計に具合が悪くなるということです。例えば小児に対して成人と同じ量の薬を処方する医者はいないでしょうが、老人に対して処方薬や投薬量を工夫したり、飲み方のアドバイスをする医師はほとんどいません。
年寄りは医療機関にいたい
確かにそう考える人もいます。でもそのバックグラウンドを考えてください。良い生活環境にあれば医療機関で暮らしたいと思う人などいるはずがありません。温かく見守ってくれる家族がいなかったり、生きていくには厳しすぎる環境だったりして、結果として「医療機関で暮らす方が今の家で暮らすよりまし」と考えていることを忘れてはなりません。医療機関で暮らすことを望む人の数はある意味社会の貧困の尺度でもあります。
繰り返しますが、経済的観点から療養型病床を減らすことは間違っています。しかし療養型病床で暮らす人たちは、医療機関がすばらしいと思ってそこで暮らしているわけではなく、本来すばらしいはずの家庭生活が何らかの原因で損なわれて医療機関で暮らすことを選択しているのです。病気になりやすいから予防的に医療機関で暮らすのは間違っています。集団で暮らすことはそれだけで感染機会を増加させ、入院生活はどうしても活動力を低下させます。