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療養病床削減 何それ?

大丈夫なの?

 減らされる病床はどうなるかというと、廃業、介護施設への転換、一般病床(急性期、回復期)への転換の3通りが考えられます。
 中でも厚労省は、介護施設への転換を進めたいようで、ことし5月に新たに「介護療養型老人保健施設(新型老健)」という緩やかな施設基準を設けて転換しやすくしたり、転換への補助金を出したりしています。また、医療法人による老人ホーム経営の解禁なども行いました。
 ところが現在のところ、あまり転換は進んでいません。転換しても病院は経営が厳しくなるからです。最初の目的が費用削減で始まった以上、当たり前かもしれません。一方で医療型療養病床への診療報酬の兵糧攻めはジワジワ続いています(前項コラム参照)。
 では一般病床になるのはどうかと言えば、医師不足・看護師不足があるので、それだけのスタッフを集めるのが大変です。
 こんな状況に進むも引くもできず、ゆでガエルのようにギリギリまで現状維持で粘って、どうしようもなければ廃業という病院が少なくないと予想されています。
 となれば施設の収容能力が大幅に減ることになります。現在入院している方々は、いずれ在宅へ戻らざるを得ません。それまでに、果たして在宅医療の基盤整備が間に合うのか、注視が必要です。
 もし仮に介護施設へ転換できたとしても、医療施設に比べて人の配置が少なくなるので、患者の回復や状態維持が見込めなくなるとの主張や、リスクの高い人の入所を拒まざるを得なくなるとの主張もあります。
 リスクの高い人が現在どの程度入っているかについては、国の言い分と業界の言い分が異なります。国民が正しく判断するためにも、もし本当にリスクの高い人が大勢入っているのなら、そのことを医療機関や家族からも積極的に情報発信する必要があるでしょう。
 ここまでずっと高齢者の問題として扱ってきましたが、実はそれだけではありません。はじめの概念図を再度ご覧ください。療養病床には、急性期病院で治療を終えた人を受け入れる後方ベッドという役割もあります。受け入れ先がない人を放りだすわけにもいかないので、急性期病院のベッドが空かなくなり、極端なことを言えば入院の必要な重症患者の救急受け入れができなくなってしまう可能性もあるのです。
 療養病床削減によって浮くと考えられている費用は当初計画でも年3000億円、見直し後はわずか1200億円に過ぎません。削減額とこうむる被害とを天秤にかけてみる必要はあるのではないでしょうか。
 とはいえ、国が破産しそうであることも間違いなく、単に削減を中止しろというのも無責任です。税金を余計に払うか、道路など別の分野に使われている税金を社会保障へ回させる必要があります。
 そして、それは実は国民が選挙で意思表示することによって、初めて可能になるのです。


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