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医師組織の構図

職業者としての団体

 前項では、主に専門職としての知識や技量を身につけ向上させる組織を紹介してきました。読みながら、「日本医師会(日医)が出てこないなあ」と思った方もいらっしゃることでしょう。医師の約6割が加入しているという日本最大の医師組織で、ニュースなどにもよく出てきますから気になりますよね。ここでは日医に焦点を当ててみましょう。
 日医に所属しているのは開業医が約8万5千人、勤務医が約8万人。開業医の大部分と勤務医の半分弱ということになります(コラム参照)。さて、所属すると、どういうメリットがあるのでしょう。
 日医は、学術専門団体と自称しています。「医道の高揚、医学教育の向上、医学と関連科学との総合進歩、生涯教育」などを行っているそうです。これを読んだだけだと、具体的なイメージが湧きません。
 実際の活動として目立つのは、診療報酬の配分を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)をはじめ厚生労働省の医療関係の審議会に必ずといってよいほど委員を出していて、医師の代表として意見を述べていること。それから、表裏一体の存在である日本医師連盟という政治団体を使って、自民党を強力に支援していることです。時々、新聞やテレビに広告を出したりもしていますね。
 職業としての医師の権利を守る、その領域である医療を守る、そんな組織と理解して間違いなさそうです。
 地域の健康づくり活動などもっと地道なことをしているのを知っているよ、という方もいることでしょう。でも、それはきっと、都道府県医師会か郡市区医師会の活動だと思います。実は、医師会は三階建てになっていて、それぞれが独立した法人組織なのです。そして三階建てになっているがゆえに、末端の会員たちの声が上層部まで届かないという批判も近年出ています。
 また、医療の中で病院の役割がどんどん大きくなっているのに、日医上層部が開業医が多いので、厚労省の政策に現場の医師の声が正しく反映されない原因になっているという批判もあります。勤務医の場合、日医に所属するメリットが見えにくいことは確かです。

医局「卒業」と日本医師会 医局には、教授より年次の古い人は出て行くという官僚社会のような不文律があります。そこまで残らずに、医局内での将来に見切りをつけた場合、開業したり市中病院の管理職に転出します。いわば医局からの卒業です。サラリーマンが独立したり、子会社へ管理職として出向するのに似ています。開業医の多くが、勤務医から見ると先輩ということになります。  こうした医師の行動原理は日医の形態にも影響を与えています。もともと勤務医は、医師会活動よりは医局や学会の活動をしたい人たちなので、医師会での発言力は大きくありません。さらに日医の意思決定をする代議員は都道府県医師会から選出され、都道府県医師会の選出作業に関与できるのは郡市医師会の幹部クラスという三層構造を取っているため、日医は勤務医の声がほとんど反映されない構造となっています。

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