不規則な生活 なぜ悪い
寝不足を招く
そもそも規則正しいとは、何がどういう状態になっていることでしょうか。こう書き起こしておいて何ですが、医学的に厳密な定義は、どうやらないようです。
一般に思い浮かべられるのは、日常の生活リズムが一定ということですよね。日常の中で区切りとなる行為は、睡眠(起床・就寝)、食事、主たる活動(通勤・就業・家事)、運動のあたりでしょうか。
この中で、今回は睡眠に着目してみます。脳が睡眠でしか疲労解消できないこと、体の補修に働く「成長ホルモン」も睡眠中にしか分泌されないことから、睡眠が健康に直結していることは間違いありません。
現代社会は刺激に満ち満ちています。やりたいことが多すぎて、1日が24時間では足りないと感じている方も多いことでしょう。あれもやりたいこれもやりたいと欲張れば、そのしわ寄せが睡眠時間に及ぶことは、火を見るよりも明らかです。ありがちなのは、平日は睡眠時間をギリギリまで削り、休日多めに寝て帳尻を合わせるというパターン。
せっかくの休日が勿体ないなどという話は置いておくとして、こういうパターンは1週単位では規則正しくとも、1日ごとに見た場合は明らかに睡眠時間が不規則になっています。何が問題でしょう。
考え方としては、たとえば飛行機を飛行ごとにコマメに点検整備するのか、1週間飛ばし続けてからまとめて点検整備するのかというものに近いかもしれません。1週間後には両方とも同じ状態かもしれませんが、週の間は随分と差がありますよね。
ましてや、もし週単位で帳尻を合わせきれなかった場合、脳の疲労や体のガタが、どんどん蓄積していくことになります。体のガタは言わずもがな、脳の疲労だって解消しきれなければ不都合が色々と起きてきます。
ここまでは言われなくても分かること。ただ、だったら睡眠時間さえ確保していれば、寝る時間や起きる時間が不規則だって別に構わないじゃないかという意見も出そうです。残念ながら、そうは問屋が卸しませんよというのが、今回の特集のお話になります。
前提として知っておく必要のあるのが、私たちの体には1日単位で動く時計のようなものが備わっているということです。腹時計のことではありません。ウソのような話ですが、植物・動物を問わずほぼすべて生物に、時を刻む「時計遺伝子」というものが備わっており、哺乳類でも20種類ほど見つかっています。
それから、睡眠の基礎知識も知っているに越したことはないので、06年9月号の特集を読み返していただくと、さらに理解が深まるでしょう。