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がん① きほんのき(上)

67-1-1.JPGがんは今日、とても身近な病気です。そんな相手に闘いを挑み、あるいは付き合っていくためには、何より相手を知ることが必要。これから1年間の、がんと正しく向き合うための特集、まずは「きほんのき」から入ります。
監修/中川健 癌研有明病院院長

 21世紀に入って早10年、これまで治療や予防に飛躍的な進歩があったにもかかわらず、がんは世界各国で死亡原因の第1位になりつつあります。なぜでしょうか。実はそこに、がんの治療や予防をしていく上での大事な心構えがあるのです。
 がんが日本人の死因トップに躍り出たのは1981年。それまでの脳卒中を抜いて以来、今も右肩上がりにその数は増え続けています。今や日本人の2人に1人ががんを発症し、3人に1人はがんで亡くなる時代です。
 そもそもがんとは、「体の細胞に異常が起き、自ら無秩序に増え続けるようになったもの」。どうしてそんなことになってしまうのでしょう。
 原因としてよく挙げられるのは、食生活の欧米化(高カロリー、高脂肪、高塩分、低食物繊維等)、運動不足、睡眠不足、肥満、そして精神的ストレスです。これらによって自律神経に大きな負担がかかり、ホルモンバランスが崩れたりして、体にダメージを与えていると言われています。
 のみならず、直接的に私たちの体の細胞や遺伝子を傷つける発がん性物質も、身の回りにあふれています。たばこや放射線、紫外線、農薬などの有害物質は、その代表例。ウイルスや細菌にもそのような働きをするものがいます。

長生きすれば、がんになる!?

 とはいえ、それらだけでは、冒頭にご紹介した世界的ながんによる死亡増加まで説明できそうにありません。もっと分かりやすく関連性がうかがわれる数字があります。平均寿命の延びです。
 20世紀、とくに第2次世界大戦以降、先進国では栄養と衛生状態が改善され、医療が進歩しました。そのため感染症による死亡率が大きく減少。その結果、簡単に言えば、長生きする人が増えたのです。
 ただ、年齢が高くなると、がんの発症率は確実に上がります。がん死亡率は60歳代から増加し、高齢になるほど高くなっています。
 これは考えてみれば分かりやすいこと。歳をとれば免疫の働きも低下し、遺伝子のコピーミスも増えてくるからです。もちろん他の生活習慣病の発症率も年齢とともに多かれ少なかれ上がりますが、がんは心臓病等に比べてまだまだ治癒が難しい病気なので、相対的にがんによる死亡がより多くなるのです。
 要するに、長生きするほどがんになる可能性は高くなり、国全体として高齢者が増えるほど、がん死亡率も高くなるということです。ですから高齢社会から超高齢社会へと突き進んでいる日本では、がんの患者数・死亡者数ともに、ますます増えると予想されています。歳をとれば誰でもかかる病気、それだけありふれたものと考えておく必要がある、ということです。

がんと癌のはなし  がんに関する文章を読んでいると、仮名で「がん」と書いてある場合と、「癌」という漢字が使われている場合、どちらも見かけますよね。また、「骨肉腫」なども、がんの一種です。これらの病名が厳密にはどう分類されているか、ご存じですか? ▽まず、「がん」が最も幅広い意味を持ち、本文でご説明しているような病変の一切合切を含み、「悪性腫瘍」とも呼ばれます。「腫瘍」は、もともと「腫れたできもの」という意味で、悪性でないものはがんではありません。 ▽他方、「癌」は上皮にできたがんを指します。上皮とは、皮膚や消化管などの粘膜、膀胱、肺胞といった器官の表面を覆っている組織です。実は臓器の多くも上皮由来なので、「癌」がよく使われます。 ▽上皮以外の組織、骨や筋肉、脂肪、神経などにできるがんが、「肉腫」です。「癌」と「肉腫」は腫瘤(かたまり)をつくる固形がんですが、一方、がんでも腫瘤をつくらないものもあります。代表例が「白血病」。血液のがんです。
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