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研修医が見た米国医療14

震災への支援活動 草の根で息長く

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。

 私の働いている病院では、研修中に別の病院や大学で興味がある分野を学ぶことが許されています。私もこの春、1カ月間ボルティモアにあるジョンズ・ホプキンス大学で学んできました。ジョンズ・ホプキンス大学は医療や公衆衛生の分野で米国トップの、とても有名な大学です。
 ボルティモアに着いた翌々日、東日本大震災が起こりました。速報ニュースで地震の発生を知ったのは米国時間で木曜日の深夜。ちょうど帰国中だった妻子や実家の安否・状況確認で、その日は朝まで眠ることができず、週末も続々と流れるニュースを追い、何も手につきませんでした。
 週が明けた月曜日、公衆衛生大学院の学生・職員を中心として、Action For Japan Hopkins(以下AFJH)が立ち上がりました。震災のニュースを見ても何もできないもどかしさは皆同じでした。被災者のために何かできないかと、普段はあまり交流することのなかった病院関係者、研究者、学生などが集まり、私もメンバーとして参加しました。
 「どこに寄付したらいいのか分からない。お勧めの寄付先はないか」
 震災発生直後から、多くの日本人が耳にしていた言葉です。震災のニュースは米国でも各メディアで大きく取り上げられ、私の周りにも寄付をしたいと言う人が多くいました。しかし米国人のほとんどは信頼できる日本のNGO/NPOについて知りません。結果として、一部の有名な団体に寄付が集中しています。日本で活躍している団体を調べ、有効な寄付先を提示することで、寄付活動を推進し、かつ配分の最適化につながるのではないか。プロジェクトの一つとして、私たちは推奨する寄付先団体の選定を開始しました。
 選定基準は、英語のウェブサイトがある、震災復興支援目的での寄付ができる、日本での活動経験や日本とのつながりがある、などです。地震発生から3週間後、AFJHの中心メンバーの親友である日本人プログラマーの協力を得て、選定した寄付先団体を紹介する英語のウェブサイト、donate-japan.comが出来ました。フェイスブックやツイッターで情報を広め、開設後3週間で約8000のアクセスがありました。日本でも日経新聞で紹介されるなど、各方面から大きな反響を得ています。
 私たちの活動以外でも、全米各地で日本支援の活動が立ち上がり、日本人の絆の深さと強さ、いざという時の行動力を実感します。普段は元気がないと思われがちな日本ですが、今回の震災を通じて、多くの米国人が日本の底力の強さ、忍耐力、協調性に感動しています。
 既にニューヨークに戻ってきている私ですが、継続してその活動に携わっています。米国では震災の報道も一段落し、大手メディアからは現地の情報があまり伝わってきません。だからこそ、長期的な被災地支援のため、私たちにできることは多いはずです。それを着実に、息長く続けていくつもりです。

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